彫刻家 片桐 宏典さん(再放送)第2回前編 ~彫刻でコミュニティーと関わってきました~  | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

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生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。

 

今日は素敵な作家をご紹介いたします。

彫刻家の片桐 宏典さんです。

 



片桐 宏典さん
ケイト・トムソンさん
お二人とも彫刻家であり、ご夫妻でもいらっしゃいます。

 

以下、2014年7月に掲載のインタビューを再放送でお届けします。

記事編集保存の都合にて、当時の第2回を前編・後編の2回に分けて、本日掲載いたします。


前回の日下育子からのリレーでご登場頂きます。
     
第1回  第2回  第3回  第4回  第5回  

 

片桐 宏典さん  第1回 ~三陸のリアス海岸が原風景にあります~ 

                  第1回続き 略歴のご紹介


第2回の今日は、片桐 宏典さんが石彫を始められたあと
彫刻でどんな風にコミュニティーと関わってきたかという実践的な体験談を
お聴かせ頂きました。

 

インタビューはお二人いっしょにさせて頂きましたので
ケイト・トムソンさんの言葉も含めて掲載させて頂きます。

どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。

 

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波打つ愛へのノスタルジア


 「波打つ愛へのノスタルジア」
宮城県産玄武岩
本体寸法 80x50x1800cmH
東京都飯田橋
千代田富士見ザタワー 一階ホール
千代田富士見ザタワー・アート計画

2014

 


 


七つの旅1

 


七つの旅2

 南郷プロジェクト
「七つの旅」
青森県八戸市南郷区図書館
(片桐宏典+ケイト・トムソン:共働製作)
 2004

メモ

この作品は、人間の知的好奇心と柔らかな精神が、
世界に広がる文化的多様性と叡智に触れる驚きと
喜びから生まれる「知的果実」を求めて、
理想と現実世界を駆け抜ける精神の旅を象徴しています。


 

 

 


岩手町国際彫刻シンポジウム2003

岩手町国際彫刻シンポジウム
(片桐宏典:共働製作)
2003




 

ウオーターマーク

「ウォーター・マーク ~北上川の四季」
スウェーデン黒、岩手産白花崗岩
本体寸法   700x700x800cmH
いわて沼宮内アートロード計画 「シンボル・モニュメント」
岩手県岩手町いわて沼宮内駅前
2003


 


シンフォニア

「シンフォニア(交響曲)」
岩手産白花崗岩、クリ
450x180x900cmH
岩手県二戸郡奥中山いわて子供の森
県営テーマパーク施設のシンボル・モニュメント
2002


 


 


向白神

「向白神(むかいしらがみ)」
青森県弘前市駅前通ダイエー向かい

弘前市駅前通りモニュメント計画
1998

メモ世界遺産「白神山地」のなかの向白神岳をイメージする。
JR弘前駅から商店街に伸びる約2kmの遊歩道に
全7基設置されたうちの2番目のモニュメント。
道路を隔てた向こう側にある3番目の作品「白神の箱」と共に
白神山地をテーマとし、白神岳と向白神岳という対になる
地域の中心的な主峰をシンボリックに表現し、
心理的に両側の空間の一体化を意図する。




 


リンダブルン1995

リンダブルン国際彫刻公園 エントランス周辺計画
オーストリア、ニーダーオーストリア州リンダブルン
国際彫刻シンポジウムとして、同彫刻公園内のエントランス部に
雨水調整池を壁面のレリーフと組み合わせて制作
1995


 



リンダブルン1982

リンダブルン国際彫刻シンポジウム、

コミュニケーションプレイス、

1982撮影



 


バーデン1988

バーデン国際彫刻シンポジウム、 

バーデン市立病院庭園、1988



 


ホワイト・リーフー白き岩礁ー1994

「ホワイト・リーフー白き岩礁ー」


ホワイト・リーフー白き岩礁ー1994
「ホワイト・リーフー白き岩礁ー」 ボール


ホワイト・リーフー白き岩礁ー1994
「ホワイト・リーフー白き岩礁ー」 ベンチ

「ホワイト・リーフー白き岩礁ー」

岩手産白御影石

本体寸法  50mx50mx2m

青森県階上町

青森県階上町道の駅ふるさとにぎわい広場広場彫刻

1994

メモ

階上町道の駅ふるさとにぎわい広場の噴水を中心とした石の環境空間的作品。

海をモチーフにした様々なオブジェ、ベンチが組み合わされている。

北三陸の穏やかな海岸と臥牛山の裾野に広がる丘陵地帯。泉から湧き出る水のリズムは生命の脈打つ

エネルギーであり、そのまわりの表情豊かな石の数々は、海の岩場/岩礁 (Reef) を象徴しています。
岩礁は、自然の生命を育むのに最適な棲み家で、したがって、大いなる自然の象徴とも言えます。

われわれはこの自然の恩恵を享受し、慈しみながら、人間社会の活動を営んでいるのです。
自由なかたちの石のまわりで、想像の翼に身を託し、さまざまな物語にひとときの想いを馳せて下さい。


 


「コスモス」

1.[ビックバン広場」 モノリス

岩手産白御影石、遠野産黒御影石
本体寸法  6.2mH x 30m x 25m

 


 


「コスモス」

2.「現在の時空広場」

岩手産白御影石、遠野産黒御影石
本体寸法  2mH x 30m x 25m

 

デザイン及び制作
片桐宏典、ケイト・トムソン、用澤修、吉田昇、ルボミア・ヤネチカ、、
アンディー・アルプ、岩村俊秀、清本真右、坪井常男

岩手産白御影石
宮城県仙台第一高等学校内
デザインから制作まで全て芸術家の共働制作によるプロジェクト
1993


 

 

「よみがえる港」
宮城県産玄武岩
幅90x厚15x高25cm
2004

 

 

日下
片桐 宏典さんが彫刻でどのように地域社会と関わって活動してこられたのか
実践的なお話をお聴かせ頂けますでしょうか。

 

片桐 宏典さん
僕の場合、80年代は彫刻シンポジウムに没頭し、
90年代はどちらかというと

パブリック・アートの大きなものや共働制作をやっていていました。

 

2000年代に入ってくると今度はイギリスでの制作発表活動を始めたことと、
東京のギャラリーから紹介の仕事、コミッションの中ぐらいのサイズのものが多くなったので
作品は大きくても2メートル位の、ホテルのロビーとかに置くような作品制作が今のところメインです。

あとは展覧会かな。

 

1990年に岩手町に来て今年で25年です。

彫刻シンポジウムの話から始めましょう。
まず、彫刻シンポジウムというのは必ずコミュニティーとの密接な関係の中でやる。
諏訪湖国際彫刻シンポジウム(※)とか萩国際彫刻シンポジウム(※)とか
彫刻家の横沢英一さんがそういうのを初めてやった時に僕も一緒に参加しました。
 

 ※諏訪湖国際彫刻シンポジウム ・萩国際彫刻シンポジウム(1981年)
  ⇒ Ukishima.Net    ⇒(僕の参加した時代(1978年~2000年まで)参照)                 

 ※ 諏訪市パノラマツアー 石彫公園    

 ※ 萩市観光協会ホームページ

 

僕が参加した彫刻シンポジウムは、日本でもヨーロッパでも、

単に自分の作品つくって彫刻公園作って、ハイ、おしまいではなくて、

アートによって社会の改革をするという、大きな夢をもってやるようなシンポジウムばかりだったから、

すごく大変でした。
それでも、どこかに突然行って一生懸命やっても、「お客さん」としての限界があるのです。

 

それで、僕らが岩手町に移り住んで、ここで始めたのは、

地域社会の一員として地域と密着すること。
岩手町はすでに彫刻シンポジウム(※)をやっていたので、

その運営を手伝いながら、美術館(※) の再生も行いました。

 

それまでここの美術館は企画から運営まで人任せにしていたのですが、

それを地域密着型の、地域の文化センターとして

学芸員と一緒に自分たちで運営していくものとして、組織の改編を行ったのです。

新しく芸術監督と二人の学芸員を入れて、自主的な、本来の運営体制を作り、

友の会を作り、募金してグランドピアノを入れたり、美術館グッズまでつくりました。


  ※岩手町国際彫刻シンポジウム⇒ 昭和48年から平成15年まで30年開催
            
片桐 宏典さんはこのシンポジウムの副実行委員長を務められていました。
    岩手町公式ホームページ 

 

日下

石神の丘美術館  ※ですね。
  ※ 美術館について 

 

片桐 宏典さん
はい、美術館の再建は道の駅  建設がきっかけでした。
そのためにイギリスから建築家を連れてきて、盛岡の建築家とコラボレーションしてもらって
それで、道の駅と美術館が一体型の建築を作ってもらったんです。


 そんなこんなで、岩手町みたいな小さな町で、

アートによるコミュニティーづくりみたいなことを10年位やったかな。

多少は以前よりよくなったでしょう、まあ、いろいろありましたし。

結局は、僕が役場を批判しすぎたせいで、けんか別れ。
僕らがもうちょっと上手くやれば良かったのかもしれないけど・・・。

 

石神の丘美術館の芸術監督も連れてきて、一緒に協力してやりましょうねという話だったんだけど
結構、田舎の政治的な問題があったり、僕らもまとめきれなくて、

ちゃんと関わり切れず終わりにしました。

 

僕としてはこれまでの経験上、世界のいろんな所の事例を知っているから、
一番上の一番面白いところをとにかく最短距離で目指したんです。


日下

そうだったんですか。

 

片桐 宏典さん

でも、たとえば、岩手町では彫刻シンポジウムが20年以上続いていたんですが、
彫刻家の新妻實さん  が発起人として立ち上げて、

しばらくは民間ベースで健全に進んでいたんですが、

彼が亡くなったあと、民間から町役場に運営が移行して以来、

ただ続けるだけのものとなって、理念が形骸化してしまっていたんです。

彼らが求めているのは、本来の彫刻シンポジウムが目指してきたレベルのものじゃ無いわけです。
 

それでも、なんとか彼らを啓蒙しながら、というとおこがましいのですが、
なんとか一緒に作り上げていこうとしましたが、

やっぱり目指すもののギャップが大き過ぎたようですね。

 

それでも、最近の日本では越後妻有アートトリエンナーレ  以降、アートによる街づくり、
街角アートなど、アートと地域社会の関係についてはいろいろなやり方が実践されています。
  

   ※越後妻有アートトリエンナーレ  ⇒ 大地の芸術祭の里 ホームページ 

 

瀕死状態の コミュニティーに、アートがどんと入っていく。
圧倒的な質と量のアートを使って、地域再生の原動力としてコミュニティを巻き込んでいく。

アートとエコのツーリズムとして観光客が押し寄せ、

ボランティアや生活者として東京から地方に若い人を呼び返し、廃屋を再生し、

見事なダイナミズムとして地域がアートを中心に活性化しています。

しかも、短期的じゃない、しっかりと大地に根付くようにして。

これは、アートに大きな役割を与えて、コミュニティーが後からついていくという形なんだけど。

 

岩手町の場合は、当然だけど普通の「アートのあるコミュニティー」なんですね。

でも、そこでずっと彫刻シンポジウムもやっていて、ある程度成功していて地元の理解もあるんだけど、
逆にそれがネックで、これでいいじゃないか、なんで変える必要があるんだとなって、
新しいことができないという状況になっている。
地方の小さなコミュニティは、危機感がないと新しい考えを取り入れない。

 

この時点で、いったん日本、岩手町での活動を打ち切りました。7年前です。
時期的に、ケイトのお母さんも亡くなって、イギリスの家族の面倒を見なくてはならなかったし、
子供たちをイギリスに連れていかなきゃいけなかったし、というタイミングもありました。

 

それからは、海外での活動が中心となります。
これまでも数年おきには海外でのシンポジウムや展覧会に参加していましたが、
エジンバラに家とスタジオを借りて拠点を作ったんです。


昔、80年代に、ヨーロッパで活動していたから、イギリスを中心にしたという感じかな。

いまではちょっと落ち着いていて、海外と日本と半々ぐらいの感じなんですよ。

大雑把にいうと、そういう背景があるわけですね。

 

日下
ここまででも、貴重なお話をありがとうございます。

 

(※ 続きは 彫刻家 片桐 宏典さん(再放送)第2回 ~彫刻でコミュニティーと

   関わってきました~(後編)をご覧ください。)

 

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◆片桐 宏典さん、ケイト・トムソンさんのホームページ
 浮島彫刻スタジオ 

 

スターリング大学(イギリス)での展示
 片桐 宏典さんの紹介ページ 

 スターリング大学 Corridor of Dreams 「夢の回廊」 インタビュー動画)

 (全23分中、お二人と作品が映るのは11:30~15:30頃です。)

 

◆現在開催中の展覧会です。

 

「詩的抽象」二人展 / ケイト・トムソン+片桐宏典
ケイト・トムソンの大理石彫刻、片桐宏典のスウェーデン黒御影石彫刻、伊達冠石彫刻、ドローイングなどを展示。

■会期:2016年9月23日(金)—10月23日(日)
■会館時間: 午前11時---午後5時
■休館日: なし
■会場Milton Gallery,  Milton of Crathes, Banchory, AB31 5QH, Scotland, UK
tel:Tel: UK (01330) 844 664,

■オープニング:9月23日 午後6時 -9時

※ ちょうどスコットランドにいる、という方はぜひご覧ください。

 

 

日本・石の野外彫刻―ストーンアート写真集
  藤田観龍 著(写真)  本の泉社

 

 

 片桐 宏典さんの作品写真と手記「石彫というジャンル」(318ページ)
 ケイト トムソンさんの作品写真が掲載されています。


 

彫刻家 片桐 宏典さん 第1回続き 略歴のご紹介

 

 

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