彫刻家 日下育子 セルフインタビュー 第4回  ~新しい作品で変化がありました~ | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。


今回、学び場美術館 54人目の作家として
彫刻家 日下育子の掲載をさせていただくこととなりました。


今回は、このブログを担当している本人について、彫刻作家・日下育子についてお伝えします。
読者の皆様に、お楽しみいただけましたら幸いです。



日下 育子      (Photo by 喜久里 周)



前回はガラス工芸作家の大槻洋介さんにご登場頂きました。

大槻洋介さん  第1回   第2回   第3回     第4回   第5回 



第4回目の今日は、今年新作で取り組んだ作品の

制作と素材についての想いを掲載させて頂きます。

制作そのものだけでなく、日下育子の結婚、出産など

女性としての人生についても触れさせて頂きます。

お楽しみ頂けましたら幸いです。


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「Prayer for blossoms」
H82×W65×D65(㎝)
トタン(亜鉛板) 麻糸 合板
2013






「Energy body」
H90×W50×D50(㎝)
トタン(亜鉛板) 麻糸 合板
2013





展覧会




『湧きでるいのち   人間のための芸術の復興 Vol.3
 3年目の春 ”We make up mind!"』

新宿プロムナードギャラリー 

日下のショーケース全景






展覧会

『湧きでるいのち   人間のための芸術の復興 Vol.3
 3年目の春 ”We make up mind!"』

新宿プロムナードギャラリー 

出品作家3名のショーケース全景

左   佐藤一枝氏 作品

中央  日下育子 作品

右   菊池咲氏 作品








彫刻工房くさか 
前回、素材と制作についてお聴きしました。
素材や制作ではこの頃、少し違う試みもあったと想います。
そのことをお話下さい。



日下育子
はい。この頃あった制作の変化と言えるものでは
ことに2月にアートNPO、グローバル・カルチャー・センターの企画で
『湧きでるいのち   人間のための芸術の復興 Vol.3
 3年目の春 ”We make up mind!"』という作品展示を行いました。


これまでもブログ記事で触れてきていますので、
既にご存知の方もいらっしゃるかも知れません。


 ※新宿プロムナードの新作 「 Prayer for blossoms」
   
新作 Energy body という作品

この展示のために、制作した2点はトタン(亜鉛板)を切って、
縫って立体化した彫刻作品でした。


縫って制作したきっかけは、およそ、10年ほど前に私は父との二人旅で訪れた、
鹿児島県の知覧にある、 知覧特攻平和会館千人針 を観たことでした。



その時に、私は綿布に赤い糸の結び目が
祈りで人を守る鎧のように見えて強く印象に残っていました。


それと、そんな風に祈りを込めて「縫う」という行為は
これまで私が行ってきた「彫り刻む」と同様に
彫刻の手法にはならないのだろうかとも想い、今回の作品を試みました。


その制作過程を簡単に言いますと、

3尺×3尺のトタン板にあらかじめ設計した線を墨入れして、

グラインダーで切り込みをいれます。

その切れ目を入れた一枚のトタン板を
底面の支持体となる、合板(コンパネ)に下方に縫いつけるものと
上方に縫いとめるもので「花開く」を表現しました。


一枚の平面を、縫うことでかたちを立ち上げる。
これが、今の私からの「再生」への祈りで、
また「縫う」ことが彫刻の手法たり得るか?の試みでした。



彫刻工房くさか
反応はいかがでしたか。



日下育子
はい。学び場美術館にご登場下さった作家さんの何名かの方は

直接ご覧下さって、感想をお聴かせ下さってとてもありがたかったです。


また、近頃になって、ある現代美術ディレクターの方が
「技術が優れているとか拙いとかそういうことよりも
 震災を体験して、その再生への祈りで
 あなたがその作品を創ったということが素晴らしい」
と言って下さって、私自身とっても励まされて、嬉しいことでした。



彫刻工房くさか 
そうですか。



日下育子
この制作は構想から新しく着手した、出産後初めての新作制作となりました。

ここからのお話は、特に若手女性アーティストで、
制作と女性としての人生を両立させることに悩んでいらっしゃる方に
向けてお伝えしてみたいことをなのですが。


私が3年前に出産した頃、まわりの方々から
「これからきっと作品変わるよ~」とよく言われましたが、

本当に変わるだろうかと自分自身では実は懐疑的だったんです。


ですが、この展覧会企画のお話しを頂いた2013年の2月頃から
ごく自然に自分の気持ちの中で、
トタンを虹色の糸で縫って彫刻を作りたいという想いが
沸々と沸き上がるようになりました。


結果的に感じるのは、このトタンの作品だったからこそ
2歳の娘のいる自分の生活の中で制作し得たようにも想うのです。

独身の頃は、妊娠中10か月制作を中断するのが怖いと
考えていた時期もありました。

私自身は告白してしまうと、実は結婚前と妊娠出産と生まれてからの子育ての期間、
概ね3年間はほぼ新作は制作していない状態でした。


けれども、その期間も出産後に学び場美術館で作家インタビューを開始したり、
小さな作品で展示会に出たり、その都度出来ることを精一杯する中で
御縁を頂き、このように制作再開することができました。


これは、自分が意識して制作再開の時期を計画していたからというよりは
本当に好きな事に専念したいと願って、出来ることを精一杯行動する中で
自然に道が開けたように感じています。


こういう私自身の体験から何かお伝えできるとしたら
抽象的な言い方にはなってしまうのですが
本当に心の底からやりたいと想うことに従って行動していくと
きっと、道は開けるのだと感じています。


この春からは、石彫の制作も本格的に再開しています。
のみで手彫りをする仕事が多いのですが、
若い時に体で覚えたことは忘れないものだなぁと
少し嬉しく、自信に感じたところはあります。 



彫刻工房くさか
そうですか。



日下育子
今回は個人的な人生のこともお話してしまいました。
女性の人生のイベントを体験した上で、
私が今感じていることをありのままに率直に申し上げてみます。


それは、制作をやらなければいけないこととしてするのではなく
おこがましい言い方にはなっていしまうのですが

どなたかの心の苦しみを開放して差し上げたいとか
本当に喜んで下さる方にお届けしたいという想いで創る方が

自分には合っていて、幸せなことだと分かったということです。



彫刻工房くさか 
そうですか。
ありがとうございました。





「 未来への種子 」
H325×W85×D65(cm)
インド産黒御影石、青葉御影石
万世福祉の里「松風園」に設置(山形県米沢市)





『杜の夢 Ⅰ』
H29.8×W19×D4.7cm  
台湾蛇紋石、大理石、糸
杜のホテル仙台 客室808号室への設置
2006





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今回は、まさかの本人登場となっておりまして、恐れ入ります。


これまで私は美術を通して育てて頂いたので、
何か美術の分野に自分でもできる恩返しがあれば、という想いもあり
出産後の里帰り中、2011年7月に
この学び場美術館の作家インタビュー掲載を始めました。


これまでに、登場して下さった作家さんにも
それぞれの今に至る貴重なプロセスがあり、それをお話して下さっています。


インタビューでは、素材や造形表現のことをお伺いしていますが、
それに向き合う作家さん達の真摯な姿勢は、もしかしたら美術分野以外の方々に
とっても生き方として参考になるところがあるかもしれません。

また美大生の方々や美術への進路をお考えの若い世代の方々にも
有益な情報になればと想っております。


いつものブログでは、なかなか自分の作家としてのヒストリーに触れる内容は
書けておりませんでしたので、読者の皆様にも、登場作家の皆様にも
これを機にありのままの私を知って頂けたら嬉しく存じます。



本日もここまでお読みくださいましてありがとうございました。


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   私の誕生日が11月14日なのにちなんで名づけました。
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