『下北沢ダイハード』(2017)テレビ東京系列 全11話
下北沢を舞台とし、11人の劇作家・西条みつとし、細川徹、松井周、上田誠、えのもとぐりむ、喜安浩平、柴幸男、根本宗子(ねもとしゅうこ)、福原充則、丸尾丸一郎、三浦直之がオムニバス形式で1話限りのお話を展開する。監督は関和亮(せきかずあき)、細川徹、スミス、山岸聖太(やまぎしさんた)、戸塚寛人。
オープニング曲 凛として時雨「DIE meets HARD」
エンディング曲 雨のパレード「Shoes」
古田新太、小池栄子、神保悟志、吉沢亮、桜井ユキ、村杉蝉之介、柳ゆり菜、高橋ひとみ、米千晴、濱崎ヒロキ、小築舞衣、畠山U輔、光石研、川栄李奈、ロバート・秋山、池田鉄洋、麻生久美子、野間口徹、西田尚美、植木夏十(うえきなっと)、緒川たまき、酒井若菜、志尊淳、山西惇(やまにしあつし)、夏菜、和田聰宏、柄本時生、佐藤二朗、松本穂香、加藤諒、片桐仁、池谷のぶえ、佐藤隆太、臼田あさ美、田中要次、三浦誠己、大澄賢也、六角慎司、山中崇、青柳翔、森川葵、馬場ふみか、渡辺真起子、田村健太郎、小松利昌、岸井ゆきの、金子大地、岩松了、夏帆、高橋努、山本浩司、岩尾望、森下能幸、松尾論、真山りか、成海璃子、大東駿介、大倉孝二、升毅、村井美和、他。
下北沢のとあるスナックでそこのママ(小池栄子)に常連客の劇作家ジョン幕練(古田新太)が下北沢で起こった面白話を語る形で物語が展開される。
①裸で誘拐された男(脚本:西条みつとし/演出:関和亮)
議員の渡部修(神保悟志)はSM好き。その日も女王様麗奈(柳ゆり菜)とのプレイに興じ、マッパでスーツケースに入り下北沢の街中へ出る。そこで取り違えが起こり、着いた先が尾本清(村杉蝉之介)千夏(桜井ユキ)夫婦の子供が誘拐された身代金1億円の受け渡し現場だった。犯人とのやりとりで警察が外にいることもわかる。しかし、その犯人の声、どこかで聞いたことある…なんと渡部の息子健人(吉沢亮)だった! 実は家庭を顧みない渡部は妻景子(高橋ひとみ)とうまくいっておらず、いつまでも職に就かず演劇に夢中になってる健人とも喧嘩ばかりだった。渡部は選挙も控える身、しかし間違った息子を救うために極力安全圏を保ちながら説得を試みることに…。
ドタバタコメディ。次の展開はこうかな、ああかな、と思い描き進められる作品で、面白かった。
吉沢亮はちょうどいろんな作品に出てノッてきた頃。そして一番きれいな顔の頃。もちろん演技も申し分ない。
②違法風俗店の男(監督・脚本:細川徹)
下北沢で今夜舞台を控える俳優光石研(本人)。さんざん真面目イメージを揶揄されていた光石は、2時間の空き時間に池田鉄洋(本人)が話していた風俗ビルに行ってみることに。身バレしないよう気を遣いながらも着席し、やがて風俗嬢ユイ(川栄李奈)がつき、いざ…という時に警察のガサ入れが入る。慌てた光石は身バレに気を遣いながらも脱出を画策する。すると前の席にロバート秋山(本人)が。芝居の開演時間も迫ってくるし池田鉄洋も探してる様子。一芝居うって脱出を協力しあうが、出られたのはロバート秋山だけで、光石研の運命やいかに…!?
俳優業を活かした話になってた。本人役で出ているのがなんともw ハラハラするのは脚本がうまく、役者もうまいから。
③夫が女装する女(脚本:松井周/監督:スミス)
杉田由紀子(麻生久美子)の夫勲(野間口徹)には女装癖がある。女装して外出する時は由紀子が間を開けて同行する。知人にバレないよう由紀子なりにガードしているつもりだった。が、その日、息子恵太(内川蓮生)のママ友(西田尚美、植木夏十)と出会し、お茶することになる。勲と別行動するのは不安があったが、仕方ない。しかし、そのお茶する喫茶店に勲も入店してきた。慌てる由紀子の所作がおかしいと怪しむママ友。そこへ勲が財布を忘れたというので届けに恵太がやってくるというハプニングが。中学受験を控える恵太にこそ一番バレて欲しくなかった夫の女装癖…。けれど、喫茶店に現れた恵太はすでに知っていたし、勲が由紀子とその喫茶店にいたかった理由もあった。いや、そればかりか…。
さもありなん。だが、面白かった。
④夜逃げする女(脚本:喜安浩平/監督:崎和亮)
下北沢で古着屋を営む須田類(緒川たまき)と椎名照美(酒井若菜)。二人はバイト先の縁で20年前に知り合い、店を出すまでに至ったが、資金は照美の婚約者の原田利夫(山西惇)から借りたものだったし、婚約者といってもどうもはっきりしない関係で、たまりかねた原田はある日、結婚詐欺だ金を返せと詰め寄る。結婚は下北沢から出ることを意味していた。ここ下北沢で何者かになろうとしていて演劇を断念した類は照美と運命共同体…いや、共依存の関係になっていた。照美も下北沢を出たくないのに連れ出そうとする原田を類が殺してしまう。これで二人は自ら下北沢を離れなければならなくなった。夜逃げだ。荷物運びに知り合いの深大寺(志尊淳)を呼び出し車に荷物を運び込む過程で原田の遺体がバレてしまう。逃げる二人だが、ハプニングが更に起こり…。
夢を追い、何か得ようともがくが、20年という月日は街並みをも変えてしまうほどの時間。それを実感させる作品だった。そしてその時間は二人の行く道を違えるのに充分で、人生には岐路があるということをも実感させる作品。
志尊淳、チャラさが良かった。
⑤最高のSEXをする女(脚本:福原充則/監督:スミス)
売れない頃から、自分のミュージシャンへの夢をも捨てて12年間支え続けた男時村孝治(和田聰宏)がようやく売れ出した。これで周囲に急かされてた結婚への道も見えてきた柴原麻子(夏菜)。ところがSNSで時村に彼女発覚!→でも自分じゃない!→浮気発覚!! このままおとなしく引き下がってはプライドが傷つく。そこで麻子は時村に一生忘れられないSEXを植え付けようと考えつく。隣室の大倉(柄本時生)に邪魔されながらも、今カノと寝る度に自分を思い出さずにはいられないほどのSEXをと、麻子の闘いが始まる…!
あまりにあっさり麻子を捨てるし、麻子も見限りがわりと早く、ドライだなぁと思ったけど、これは何事にも潮時ってあるってことだな。と感じる作品だった。
⑥未来から来た男(脚本:柴幸男/監督:山岸聖太)
スーパーコンピュータ「mamazon」(声:池谷のぶえ)によってあらゆる無駄が排除された近未来2037年のネオ下北沢。しかしサブカルゲリラたちが本来のサブカルの聖地下北沢を取り戻そうと活動していた。「mamazon」は根っこから絶やそうと、先導者コヤマ・サラ(松本穂香)のサブカルとの出会いを阻止すべく、秘密兵器シーモキーター(佐藤二朗)を2017年の下北沢ヴィレッジヴァンガードへ送り込む。数回の失敗のうえ、偶然にもサブカル女の特性を活かした根絶法を施し、無事ゲリラ団の誕生を抑える…。
ヴィレヴァンの店員に加藤諒、片桐仁が本人役で登場。シーモキーターはターミネーターのオマージュ。
下北沢がサブカルの聖地とは思ってなかった。高円寺かと思ってた。中野、阿佐ヶ谷とか。ただ、サブカルを盛り上げていたのはやはり地方出身者なのだなと答え合わせができた。昔から一旗あげる、立身出世、果てはアメリカンドリームとはよく言ったもんだ。
⑦手がビンになった男(脚本:上田誠/監督:戸塚寛人)
「劇団ひよこ豆スティング」の劇団員伊沢キヨシ(佐藤隆太)は、たまたま観劇に来た女優海老川アンナ(臼田あさ美)とバーで一杯やっている。芝居にいたく感激したアンナとどうやら一晩イケそうな雰囲気。舞い上がるキヨシだったが、ビール瓶に不意に突っ込んだ指が抜けなくなってしまう。せっかくいい雰囲気なのに…と、とりあえずトイレに駆け込み必死に対処するもやっぱり抜けない。そして割ることを思いつく。いざ…! しかし、確かに割れたけど、鋭利な武器にもなる様相でビンの口の部分はハマったまま残ってしまった。そしてトイレに入って来ようとしたヤクザ(三浦誠己)を制止するタイミングで刺してしまう。そこから次々に話は大きくなり立てこもり殺人犯に祭り上げられ意図せぬ窮地に追い込まれる。しまいには未来からやって来た謎のシモキタンナイト四人衆(アンナを筆頭に、バーマスター=田中要次、ヤクザの若頭=大澄賢也、警察官=六角慎二)が現れ…。
ドタバタコメディ。面白かった。もうこれはオチはアレだろうと予想は外さなかったけど、そこまでの過程が面白い。実際にそんな状況下に置かれたらどうするだろうと変な汗が出そうなくらい緊迫感もあった。
大澄賢也、久しぶりに見たけど、とても良かった。
⑧彼女が風俗嬢になった男(脚本:根本宗子/監督:山岸聖太)
テレ東のAD(田村健太郎)は番組用に人生のピンチについてインタビューをしていた。パチンコ屋開店に合わせて並ぶ常連客の田川のりお(青柳翔)に目をつける。最初は他の常連客(渡辺真起子、小松利昌)ともども足蹴にされていたが、田川にピンチがやってくる。友人(荒井敦史)から彼女のみわ(馬場ふみか)が風俗で働いてると連絡が入る。みわに問い正しに行くと、本当だったし、月100万ないと生きていけないと言い出す。実は田川はみわのヒモ…今日中に50万稼いだら風俗を辞める約束を取り付け、軍資金3万を借りて、ADを巻き込みパチンコ勝負に挑む。最初はうまくいってなかったが、パチンコ店員のドジっ子山田愛子(森川葵)の密かな願かけにより…。
ADがすごくいい味出してるし、青柳翔もいい。渡辺真起子もいう事なしで面白かった。小松利昌も。その他のモブも。ラストは田川と愛子がカップルになるのだけど、ADの撮ったものが番組で採用されてて二人の出演のオチもついてて、予定調和ではあるけど、脚本とキャストが素晴らしいので結果「良かった」で終われた感じ。
⑨幽体離脱した男(脚本:三浦直之/監督:スミス)
アイドルグループエイヤーズのタクヤ(金子大地)は、メンバーの中で一番売れてなかった。そこで事務所社長(井上肇)の意向で小劇場の舞台に立つことになる。ところが演出家(岩松了)のダメ出しに苛立ちが勝ってどうダメなのかもわからない。今夜の公演までに形にしなければと思うのに…。ちょうど劇団員と劇場霊の話をした後、濡れた床にすべって気を失ってしまう。気づくと幽体離脱していた。公演時間までに戻りたいのに戻れない、時間が迫り焦る中、一人の女性が現れる。紗奈(岸井ゆきの)と名乗るその女性は3年前に亡くなった女優の高倉紗奈だった。紗奈とあれこれ話すうちに、何が自分に足りないのか、どうしたら本体に戻れるのか、察しがついてくる…。
金子大地が若い。この頃はまだ20歳前か? 演技もイマイチで演出家のダメ出しがよく効いてる笑。役者の悩みでもあろうが、根源はその人間の性格にあって、それを乗り越える話で、なかなか奥深くて良かった。劇団員に水間ロンがいた。やっぱりいいな。
⑩悪魔にとり憑かれた女(脚本:丸尾丸一郎/監督:戸塚寛人)
20年もやってきて売れなかった崖っぷちロックバンドロノウェの初めてのワンマンライブがライブハウス「ろくでもない夜」で叶った。しかも多くのアイドルを排出した秋山キヨシも観にきてるという。伝説になるようなライブをと気合が入ってるリーダーでギターのカート小林(高橋努)始めベースのジミー逸見(山本浩司)、ドラムのブライアン錠(岩尾望)だが、肝腎要、このバンドの中で絶大な人気を誇るボーカルのジャニス(夏帆)が、たった今別れることになった彼氏サタン(松尾論)が観にきているという一点だけで、ステージに上がる事を拒否する。なだめすかし、その元カレサタンを楽屋に連れて来てなんとかしようと思うものの自体は悪い方へと流れていく。先にステージに出て場をあたためているジミーとブライアンも限界が来ていた。ライブハウスの店長(森下能幸)からは中止を勧告される始末。ようやくジャニスの本音が、カートの熱量の前に崩される…。
ごく普通の凡人の、夢を追う者の姿を描いてて切ない。バンド名は悪魔「ロノウェ」から取っていて、そのロノウェと契約した多くのミュージシャンは27歳で名をあげ伝説となり命を落としているといい、しかし実際カートたちは39歳…。まさに1周遅れのラストチャンス。カートは熱量は負けないのに技術感性が備わってないことにジレンマがあり、ジャニスは劣等感から進めない。年齢的にタイムリミットなのが冷ややかに響くの、良かった。
⑪父親になりすます男(脚本:えのもとぐりむ/監督:関和亮)
下北沢再開発により本多劇場が取り壊される話になっている。その開発を進めてる区議壱河源一(升毅)の娘悦子(成海璃子)と、その開発の反対派リーダー(村松利史)の息子で演劇人丹澤航平(大東駿介)とが結婚することになった。本多劇場取り壊し阻止に一筋の希望を見出したものの、結婚披露パーティーに航平の父親がボイコット。慌てたジョン(古田新太)の後輩で演劇に携わる村山(大倉孝二)がジョンに父親役を頼む。危うい場面をいくつか乗り越えつつ大役を果たすが、実は悦子とジョンにまつわるとんでもない真実が明らかになる。全ては仕組まれていた…!?
演劇にのめり込んだ人間と、犠牲になった家族、だけど家族はの絆は血だけにあらずというなかなかなヒューマンドラマで最終話が組み立てられてた。これまで出てきた下北沢を拠点として生きてきた人たちも一部出演するなど、下北沢の人情まで触れ描かれていた。
エンディングロールで笠松将どこにいた?と思わず確認したらパーティー会場のバーテンダー。いやいやいや、台詞はあるけど顔、ほぼ映ってない泣笑。
奈緒にも気づかなかった。パーティーを仕切る航平らの仲間の一人にいた。航平の友達役で前原滉もいた。
下北沢に最後に行ったのは再開発が始まってすぐの頃か。コロナ前だ。そういえばライブハウスの屋根裏の話もチラッと出るのだけど、いや、あれは渋谷だろ? と思って調べたら、両方にあった。正確には渋谷店が下北沢に移転、その後また渋谷にも出店し、結局両店とも終わったようだ。私が知ってるのは渋谷屋根裏単体時のみだったとわかった。ちなみに下北沢屋根裏の跡地に建ったのが「ろくでもない夜」のようだ。
とまあ、下北沢が舞台だけあって、全話フィーチャーされる、あるいはロケ地となる施設、店舗は実在するものをそのまま使用のようだ。話の中に出てくる人物も演劇、ミュージシャン、サブカルの文化系と、そういう街だと表している。
ラストはジョンの台詞「人生はクローズアップだと悲劇だがロングショットだと喜劇か」が響く。
チャーリー・チャップリンの名言「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇」。これが芝居をやる人たちの心を掴むのだなぁ、と感慨。
エンディングロールでは下北沢住みの柄本明が自転車で徘徊する映像がある。演劇の街という締めに説得力が増す。
ぜんぶ面白い。すごく面白い。役者がとにかく間違いなく出来る人ばかりで。
タイトルは『ダイハード』から。ジョンの名前もどんな困難からも逃げない同作主人公「ジョン・マクレーン」から。
★★★★(★)