『川っぺりムコリッタ』(2022)
原作・監督・脚本 荻上直子(『彼らが本気で編むときは、』他)
音楽 パスカルズ
松山ケンイチ、ムロツヨシ、満島ひかり、江口のりこ、黒田大輔、知久寿焼、柄本佑、田中美佐子、薬師丸ひろ子、笹野高史、緒方直人、吉岡秀隆、北村光授(きたむらこうすけ)、松島羽那(まつしまはな)、他。
詐欺で服役していた山田たけし(松山ケンイチ)は刑期を終え、富山県の海辺の町、沢田(緒方直人)の営む海産物の工場に就職となった。その社長の紹介で川の近くにあるアパート「ハイツムコリッタ」に暮らすことになる。大家は夫に先立たれ娘(松島羽那)と二人で暮らす南詩織(満島ひかり)。向かいにはまだ幼い息子(北村光授)と二人で墓石を売るシングルファーザーの溝口健一(吉岡秀隆)。隣りには少し頭の足りなそうな、社会性のない、そして図々しい男島田幸三(ムロツヨシ)が住んでいる。
ひっそりと、人間関係は最小限にと思っていた山田だが、遠慮のない島田に調子を狂わされ、いつしかその友人の寺の坊主岩本(黒田大輔)、どこか達観した溝口親子、更生を支える沢田社長、山田の身上を知りながらも普通に接する工場の世話役の中島(江口のりこ)、人に寄り添える南、孤独死した幽霊、幼い頃生き別れになった父親の死を知らせてきた役場の職員堤下(柄本佑)、に、川っぺりに住むホームレスの男(知久寿焼)、とささやかな関係性が生まれてくる。山田の心境の変化、現状を受け止め、生きる上での希望が見えてくる…。
それぞれの抱える過去と孤独を描きながら、人はどんなに生きにくい世の中でも生まれてきた以上、その環境を受け止め生きるしかない、人は一人では生きられない、実は常に人は人を求め生きているんだ、と言っているかのような作品だった。
良かった。
山田の父親の違反の中に携帯電話があり、そこにずらりと並んだ発信履歴が「いのちの電話」だった。それがきっかけでよく覚えてない父親のことを知りたくなる山田。その「いのちの電話」で聞いた話を溝口が人から聞いた話として山田に話す。これはきつかった。淡々と言葉をつむぐ溝口の背後には「無」しか見えないのが辛い。
山田の父親への思いが、風呂上りの牛乳飲みに帰結したのは、文字通り血の通った関係を感じ、切なくも暖かい気持ちになった。
人の都合も考えず我が家のように入ってきては風呂やご飯をもらう島田にも耐えられない悲しみがある。震える島田、大泣きする島田、懇願する島田、ごまかさない素直な島田に何とも言えない気持ちになった。
公務員である堤下が心ある職員で良かったと思った。
ムコリッタとは、仏教でいう時間の単位のひとつで、1日の1/30で、48分を表すとのこと。刹那だ。
松山ケンイチ、いい芝居するなぁ。というか、みんないい。
★★★★(★)
制作 RIKIプロジェクト
配給 KADOKAWA









