一枚のハガキ | これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『一枚のハガキ』(2011)

新藤兼人の遺作となったものとのこと。

 

監督・脚本 新藤兼人

 

豊川悦司、大竹しのぶ、六平直政、大杉漣、柄本明、倍賞美津子、木下ほうか、津川雅彦、大地康仁、川上麻衣子、江沢萌子、麿赤兒、渡辺大、他。

 

先の戦争で召集された者、遺族の戦後を描く。


戦争も終盤、集められた掃除部隊の中年兵士100名は、くじ引きによって赴任先を決められる。宿舎の2段ベッドの上下で親しかった松山啓太(豊川悦司)森川定造(六平直政)。松山は、定造がフィリピンへ行くことが決まった夜、妻友子(大竹しのぶ)からの「今日はお祭りですが、あなたがいらっしゃらないのでなんの風情もありません。」というハガキを見せられる。そしてもし自分が生きて帰れなかった場合、松山が生き残っていられたら、確かにハガキは受け取った、読んだと伝えて欲しいとそのハガキを託す。筆不精もあるが、検閲が厳しく返事も書けない事情もあった。

定造の実家には友子と、定造の父勇吉(柄本明)と母チヨ(倍賞美津子)が暮らしており、そこへ空っぽの遺灰箱が届く。定造が亡くなったため、貧乏百姓ではあるものの家を存続させるためにも、勇吉とチヨは次男の三平(大地康仁)との再婚を願い出る。もともといくあてもない身の友子は話を飲むが、その三平も兵役に取られ帰らぬ人となる。戦争が終わると勇吉が倒れ亡くなり、後を追うようにチヨは自ら命を断つ。一人暮らしとなった友子のもとへは、前から好意を抱いていた村の警防団長泉屋吉五郎(大杉漣)が妾になれと通い詰める。

一方、100人兵のうちくじ引きで6人、命が助かったものたちがいた。その中に松山もいた。松山が実家に帰ると、叔父利ヱ門(津川雅彦)から妻美江(川上麻衣子)と実父があらぬ仲になり二人で逃げたと聞かされる。キャバレーに勤めてる美江を訪ねれば、手紙の一枚もよこさずもう戦死したものと思って悲しみに耐えられなかったという。憤りを感じた松山は実家を利ヱ門に売り、その金でブラジルへ渡り新しい生活を始めようと決意。その前に定造から託されたハガキを友子に届けに行く…。

 

友子はやはり定造を今でも愛しており、戦争を恨み、松山からくじ引きで生死が別れたと知るや、くじを恨み、自分が生きてることさえ恨めしく思っていた。松山はそんな友子の心のうちを聞くにつれ、くじ引きの残酷さ、戦争の理不尽さに悩まされる。二人は本音で話をするうちに共鳴しあい、泉屋の奇襲も効果を奏し、新天地ブラジルへ行く決心をするが…。

 

手法が古く、その古さが逆に良く、コミカルでもあり(本当に思わず笑いが出る)、悲しく切なくもあり。カメラは主に台詞を言う人物を追っていて(カット数が多い)、その表情が重要になる。映像の醍醐味を感じた。ワンカットずつ撮るということは、それまでの気持ちを繋げつつ作り直すわけで、役者ってやっぱりすごいなと思った。

戦争が終わらない、戦争をどう個人の中で片付けていくのかが丁寧に描かれていた。

 

ラストは持たざる生活の有りようを見せられ、それは美しくも見え、人間は本来生きるために生活していることを痛感させられた。現代のミニマリストとはまたぜんぜん違う。

 

とても良かった。

 

★★★★★

 

 

 

 

配給 東京テアトル