あなたのお話を聴かせてください。

人にはなかなか話せない「いのちのこと」「死ぬこと」「生きること」など、胸の内をお聞かせください。

必要であれば、私の経験や想い、死生観も尋ねてください。

 

私にできることは、「いのち」を感じ、あなたの大切な方のいのちへ愛の光を当ててもらうこと。

自分や大切な方の「死」を乗り越えるのではなく、安らぎの源を見つけましょう。

 

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【「感謝だな」と言いながらこの世を去った父ちゃんの実話はこちら】

 

 

それから何度か危篤を乗り越えたものの、とうとう病院から「お父さんに残された時間はあとわずかです。今のうちに会っておいてください」と連絡が入った。

 

 

危篤の連絡なら「一刻も早く!!」と心が騒ぐけれど、「残された時間があとわずか」と聞くと、心が寂しい静けさに包まれた。

 

 

危篤の時は駆け込むように入った病室に、今度はゆっくりと足をすすめた。

 

 

久しぶりに会う父ちゃんはだいぶ痩せてはいたものの、父ちゃんの周りの空気は相変わらず穏やかで温かかった。

 

 

身体を動かすことも、目を開けることもない父親に「父ちゃん・・・」と声をかけると、布団の端がもぞもぞ動き、父ちゃんの右手が出てきた。

 

 

(あっ!聞こえてるんだ!!)

 

 

目の前に伸びてきた手を握ろうとすると、脇に立っている看護師が申し訳なさそうに息子の手を止めた。

 

 

「すみません・・・。今はコロナ禍ですので、患者さんに触れることはできません・・・」

 

 

「あ・・・。わかりました」

 

 

 

いつもだったらきっと、「こんな時まで、なんでだ!」とでも言いたくなるのだろうけれど、そんな気持ちも湧くことがなかったのは、父ちゃんのいつもの言葉が胸の中にあったからだ。

 

 

「感謝、感謝だなぁ」

 

 

これが父子の最後の面会となった。
 

 

【「感謝だな」と言いながらこの世を去ったおじいさん 最終回へ続く】

 

 

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