美らくる堂
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「自転車を後ろ向きに漕ぐ夢」の要約
放課後の教室で目を覚ました私は、クラスメイトたちに「授業をさぼってどこにいた」と言われる。私は夢の中で体験した、自転車の不思議な冒険を、現実のできごとのように語り出す。
夢の中で私は、ハンドルの付け根にサドルがある ピンクの自転車に、後ろ向きに座って乗っていた。自転車は 後輪が前になって、後ろ向きに進む。それでも不思議と安定していて、坂道も軽々と登っていける。
直感で向かった郊外の坂を登っていくと、道の右手に 赤い看板のカルティエの店が現れ、その前に 真っ赤な高級車が停まる。セレブな女優が乗りつけたと思い近づけば、そこには 褐色の肌に縮れ髪の若い女優が、清楚なレースのドレスで怯えて座っていた。
彼女を称えたくて「Beautiful」と声をかけるが、名前がどうしても思い出せない。
この話を聞いていたクラスメイトたちは、クライマックスで寸止め、オチがない上に、夢の話だったことにあきれて、立ち去ってしまう。
私は、放課後開かれる特別講座には興味がないので、もう帰るつもりだ。
さて前回は、『後ろ向きに自転車を漕ぐ夢』をChatGPTとどんなふうに夢ほどきを始めたか、会話の一部をお見せしました。
文脈を読むのと要約が得意なChatGPTからの質問に答えれば、ある程度的確で鋭い夢解釈をしてきます。
ただ、そのはじめの質問の焦点がずれていることもあるので、夢の記述と一緒に夢ほどきに必要そうな個人的情報や夢について知りたいことを、あらかじめ入力しておくとよいでしょう。
今回は、この夢から何を受けとったのか、そしてその後どうしたのかをお話します。

ピンク色のかわいい自転車で、後ろ向きに坂道を登る夢は、
「人と違うやり方でも、無理せず着実に進めばいい」というメッセージ。
前だけを見てがむしゃらに進むよりも、景色や出会いを味わいながら、
自分なりのバランスを保つ進み方が心地よいと感じさせる。
坂の途中に現れたカルティエの店舗は、かつては遠い憧れだったものが、
今は手の届くところにあることを示す。
そこへ現れた赤い車の若い女優は、華やかに見えながらも怯えていて、
これは「目立つ場所に立ちたい一方で、繊細さを守りたい」自分の一面。
彼女に声をかけるとき、ぴったりの言葉が出てこなかったことは、
「自分が表現したいものを、まだはっきりと言葉にできていない」状態の象徴。
最後に、放課後の特別講座に惹かれず帰ろうとしたのは、
「他人の価値観に流されず、自分の道を選べる力」がついた証。
わたしのユニークさって何?
「この夢は、わたしが当時心を注いできた歌のことや、今後本格的に再開しようと思っている、夢の仕事のことを言っているんだろう。人前に出ることを怖れず、表現を磨いていこう」
「ピンクの後ろ向きに進む自転車はユニークな形だから、わたしは独自の道をゆっくり歩んでいこう」
そうは思ったのだけれど、「ところでわたしのユニークさって何だろう?」と、あらためて思い、ChatGPTに、この夢と関係がありそうなわたしのユニークさを教えてもらいました。
「一般的には不思議な現象で済ます夢を、解釈したり、夢を現実の暮らしや選択に生かすこと、それを仕事にする人はごく一部です」
「上手に歌う、有名になる、ではなく『宇宙へ愛を響かせる』というビジョンで取り組む人は非常に珍しいです」(いちおう、そういうビジョンで歌っています)
「あなたのユニークさは、奇抜さや目立つ個性ではなく、深さや本質にふれる感性そのものにあるのかも」
というのが答えでした。わたしの周囲には、夢に関心がある人や、全宇宙的なまたはそれを超えた視野で何かをしている人が多いので、自分が特にユニークだとは思っていなかったけれど、日本全体でも全世界的にも珍しいことをしようとしているのだなと自覚しました。
とはいえ、つまり夢は、「自分の感性、自分にとってあたり前のことを堂々と表現して大丈夫」と言っているから、ひとまず、過去の夢日記をChatGPTと共に再解釈する作業をすすめていこうと思いました。
その後、その作業を進めていく過程で、夢からの延長で文章や詩や妄想のようなものをどんどん書いていきました。
夢の登場人物を元にした、音楽にまつわる物語なども書いていて、その中で歌詞も生まれたし、さまざまな音楽も聴き、歌い手として活動する時の名前も浮かんできました。
それらの創作は、自分の深層に入って汲み上げ個人的におもしろいだけのものなので、そのままでは人前に出せないけれど、編集して、追々noteに書いていこうと思っています。ペンネームはもう10年前から考えていて、その名前で活動しようと心が決まりました。
そのように、創作や思索を重ねるうちに、名前がついていなかったものに、名前がついたのです。
ChatGPTに話を書いてもらった
ところで、ちょっと遊び心が起こり、この夢を深いところに落とし込むために、ChatGPTにリクエストしました。
「実験なんだけど、この夢解釈をふまえて、私のために2000字ぐらいで、心に響く魅力的なストーリーを書いて」
そうして書いてもらったのが、以下の、ちょっとはずかしいストーリーです。
坂道の先に響く声
夕暮れの空が薄紅色に染まるころ、
彼女はピンク色の自転車にまたがり、
静かにペダルを踏み出した。
それは、どこかで見たことのある
自転車だった。
子供のころ、近所の女の子が
乗っていたような、
かわいらしい色と形。
「この自転車、変わってるな」
彼女は逆向きに座って進むことに気づいた。
けれど、意外なほど安定していて、
奇妙な心地よさがあった。
まるで背中にそっと押されるような
安心感だ。
どこへ行こうかと考えながら、
彼女は道を選んだ。
最初は平坦な道を進もうとしたが、
ふと気が変わり、
坂道を登る方へとペダルを向けた。
思ったよりも楽に登れる。
自転車はスピードこそ出ないが、
漕いだ分だけ確実に前へ進んでいた。
「やった分は、ちゃんと前に進むんだ」
それが、なんだか嬉しかった。
坂のてっぺんに近づいた時、
道の先に小さな建物が見えた。
「カルティエ…?」
高級ブランドのはずなのに、
店構えはこぢんまりとしていて、
親しみやすい雰囲気があった。
彼女は戸口まで行き、ふと立ち止まる。
「私なんかが入っていいのかな…」
けれど、迷う気持ちの中に、
どこかで「行ってみよう」と感じる
何かがあった。
店の中は意外に静かだった。
奥の壁に飾られた一枚の写真が目に入る。
そこには、褐色の肌と縮れた髪の
若い女優が写っていた。
「あの人…」
名前が思い出せない。
あの力強くも繊細な演技、
深みのある眼差し。
確かに知っているのに、名前が出てこない。
「……あなたは、Beautiful」
その言葉が口をついて出た瞬間、
自分の中に戸惑いと悔しさが湧いた。
「こんなありきたりの言葉じゃ、
伝えたいことの半分も言えてない…」
彼女は写真の前で、
しばらく立ち尽くしていた。
店を出ると、さっきのピンクの自転車が、
まるで「おかえり」と言うように、
そこに立っていた。
再び自転車にまたがり、坂道を下る。
風が顔を撫でていく。
そのとき、どこからか
歌声が聞こえてきた。
それは、どこまでも伸びやかで、
温かく包み込むような声。
彼女は音のする方へと進んで行った。
すると、広場の中央で
ひとりの女性が歌っていた。
それは、写真の中のあの女優だった。
彼女は思わず駆け寄り、
息を切らせながら言った。
「……あなたの歌、宇宙みたい」
「宇宙?」
「うん、あたたかくて、果てしなくて、
どこまでも響いていく感じ」
その言葉を聞いた女優は、
ふっと目を細めた。
「そう言ってくれたのは、あなたが初めてよ」
「本当に? でも、そんなふうに響いてたよ」
「…あなたも、きっと歌う人ね」
「私?」
「ええ。あなたの言葉が、そう感じさせるの」
翌日、彼女は再び
ピンクの自転車に乗っていた。
今日はどこへ行こうか?
坂道を登るのは、もう怖くなかった。
漕いだ分は、ちゃんと前へ進んでいるから。
いつか、自分の声が
宇宙に響く日が来るだろうか?
「いや、もう響いているのかもしれない」
彼女はそう思いながら、
坂の先へとペダルを踏み込んだ。
エピローグ
数年後、あるライブハウスで、
ひとりの女性が歌っていた。
その声は、会場の隅々まで柔らかく響き、
聴く人の心を震わせていた。
その中に、かつてカルティエの
写真の中にいた
女優の姿があった。
彼女はそっと目を閉じ、
心の中でつぶやいた。
「あなたの声は、宇宙みたい」
そして、その言葉は、
目に見えない光のように、
遠くどこまでも響いていった。
夢の中では、私はカルティエのお店の中に入ることができなかったけれど、 ストーリーの中では、思い切って店内に入って、 演技派女優のポートレートを見て、 その写真に話しかけ、さらに本人にも思いを伝えていました。エピローグで私がステージに立って歌っているのを、女優が観客として聞いてくれたことも、 心に刺さりましたね。
そして、ほんの思い付きで頼んだこのストーリーを、ほんとうに起こったことのようによく味わうことができました。いつもは、夢の題材を元にストーリーを書くというのは、夢を見た本人がするのですが、ChatGPTが書いたのを読むのも結構よかった。
さらに、調子に乗って、この夢の「恋の出会いバージョン」も書いてもらいましたが、それも名台詞ありの胸キュンでした
さて、連載シリーズは、いったんここで終わります。当初考えていたよりもスムーズにきれいに書けなくて、しかも、振り返っているうちに新発見があったり、いろんなことが書きたくなってきて、まとまらず時間がかかりました。
ここまでおつきあいくださり、ありがとうございました。
次の投稿では、この夢の夢ほどきの詳細をつれづれに書いていきます。もうお腹一杯だと思いますがご興味あれば、よろしかったら、ご覧ください。
