岡本 良雄(おかもと よしお) アンクル・トムさん | mitosyaのブログ

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個人誌「未踏」の紹介

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岡本 良雄(おかもと よしお、1916年 - 1963年)は、日本の児童文学作家。

 

 

 

アンクル・トムさん 岡本良雄

 

 

 

 

心をこめられたプレゼント----でも、もうトムは、それをうけとることができません。
 手紙は、まず、こんなことばで書きはじめられていた。としねえさんが、声をふるわせて、その意味を八郎たちに読んできかせた。
 トムが、家に帰れたのは、たった、半年のあいだだけでした。また、戦争にかりだされたのです。そして、こんどは天国にめされたのです。ええ、そう、弾丸で----。それは、ヨーロッパの戦線です。けれども、それいじょうくわしいことは、わたしにもしらされておりません。トムは、おそらく、じぶんのしらないところへ、あちらこちらと、ひきまわされて、その生命をうばわれたのです。----あなたがたの心をこめられたプレゼントは、トムの、あのシカとならんだ写真の前においてやり----。

 

 

「もう、やめて。」
 お母さんは、たまりかねて、前かけで顔をおおった。
 としねえさんもないていた。八郎もないていた。なきながら、八郎は、
 「----じぶんのしらないところへ----、あちらこちら----。」
と、その手紙のことばをくりかえした。----それはいつか、トムさんが、アンクル・トムのことを話したことばではなかったか。

 

 

 

 

経歴
大阪府に生まれる。早稲田大学国文科に在学中から「早大童話会」に参加する。1939年(昭和14年)には下畑卓などと同人誌『新児童文学』を創刊。1940年(昭和15年)に発表した『八号館』で、大阪童話教育研究会による第1回日本新人童話賞を受賞。

 

 

 

 

昭和10年代には当時の主流であった生活童話を執筆するが、戦後は社会批判の強い作品を発表した。

 

 

 

主な作品
八号館(1939年6月、『子供と語る』)、イツモシズカニ(1940年、児童雑誌『日本児童文学』)、三人の0点くん(1957年、『日本児童文学』)

 

 

 

トンネル路地、 ふくろうチーム敗戦記、朝顔作りの英作、八号館、 安治川っ子、仙吉じいさんの話、イツモシズカニ、ディオゲネスの家、あすもおかしいか、ラクダイ横丁、 アンクル・トムさん

 

 

 

 

参考文献
滑川道夫他編著 『作品による日本児童文学史 2 昭和前期』 牧書店、1968年。