まだ私が吹けていないケーナたち(その3) | ふぉるくろーれ夜話/mitaquenaのブログ 

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仕事をリタイアしてから始めたケーナの演奏をきっかけに、思い出したり思いついたりした、主にフォルクローレに関するよしなしごとを綴ります。

※※本稿は、前回及び前々回の続きです。なお末尾に「ご注意」(これからケーナを買う人へ)があります※※

 

引き続き、私が所有はしているものの、そして各個体が高いポテンシャルを有してはいるものの、現状は実態として、あまり出番が無いケーナたちに光を当てて、それぞれの①概要・特徴と、②なぜこれまで吹く機会が少なかったのか③久しぶりに吹いてみたらどうだったか)、④今後の活用の見通し――を、反省と懺悔と頭の整理とを兼ねて、一本ずつ、書き留めていく。

 

なお、私が所有するケーナの紹介は、いったん本記事をもって一区切りとなる、はずである。

よろしければ、順を追ってご笑覧頂けると幸いです。

 

~ふぉるくろーれ夜話「私のケーナ」シリーズ~

1.いま私が吹いているケーナたち

2.G管ケーナ「3オクターブのシが出ない!」問題

3.まだ私が吹けていないケーナたち(その1)

4.まだ私が吹けていないケーナたち(その2)

5.まだ私が吹けていないケーナたち(その3=最終話)←いまココ!!

 

なお、以上の5つの記事において、計19本(重複除く)のケーナを紹介していることになる。

 

さて、今回ご紹介するのは、

1.J. C. ママニ J.C. Mamani のG管黒檀ケーナ ←前々回紹介済

2.アンヘル・サンペドロ・デル・リオ Angel Sanpedro del Rio のG管寄木歌口ケーナ ←前回紹介済

3.アチャ Acha のG管リグナムバイタケーナ ←前回紹介済

4.イバン・アランドレス Ivan Alandres のG管バンブーケーナ ←前回紹介済

5.ワラータ工房 Walata のG管極太バンブーケーナ

6.ヤマハのG管カエデケーナ「QEN」

7.ホルヘ・"アハユ"・ロドリゲス Jorge "Ajayu" Rodriguez のF管バンブーケーナ

8.レイナルド・ベガ Reynald Vega のD管バンブーケーナ

 

――である。

それでは、さっそく本題へ移ろう。

 

 

5.ワラータ工房 Walata のG管極太バンブーケーナ

(外径29、内径20、指穴最大12.5、歌口幅11、歌口穴深さ8.5、全長376mm)

 

①概要・特徴

ボリビアはラパスの「魔女通り」に工房兼店舗を構える老舗。

同工房については「いま私が吹いているケーナたち」にてキルキ材のケーナを紹介した際に説明済なので、詳細はそちらを参照されたい。

なお、本個体には、焼き印が押されていないが、入手当時はWalataの小さな金色のシールが貼られていた。

 

②なぜこれまで吹く機会が少なかったのか

たしか大学生時代、私の大学のフォルクローレサークル立上げ準備のために、東京造形大学=タカオマンタの或るOBの方がボリビアに行かれる際に、D管ケナーチョ等の買い付けをお願いしたことがあり、その方がわざわざ持ち帰って下さったのが、Walata製だった(大学サークル立上げに失敗した後、失意のあまり処分してしまったらしく、もう手許に無い)。

そして数年前、この個体が(歌口近くの浅いが目立つキズのためか)フリマサイトに格安で出品されていて、懐かしさからポチったが、届いたら思っていた以上に極太だったので、「ああ、相変わらずの野趣あふれるWalataらしい笛だなあ」と感傷に浸った以外、試し吹きもロクにせず、放置していた。

 

③久しぶりに吹いてみたらどうだったか

確かに私の手持ちのケーナの中では極太の部類だが、異常な太さではない。いかにもボリビアらしい太さのケーナ

改めて見ると、歌口がV字状で、歌口の形状がU字状のキルキのケーナと異なる(もしかしたら先代時代の個体かもしれない)。また、指穴もそこまで大きくない。

実際に吹いてみたら、想像していたよりは息の消費が多くなく(それでも細身のケーナと比べてしまうと、息継ぎが多くなってしまうが)、音も比較的出し易かった。

 

④今後の活用の見通し

もしかしたら、意外とコレ、イケるかも、という前向きな気持ちがちょっとだけ芽生えてきている。

やはり、少人数コンフントで1人ビエントスを任された時用の「攻め」のケーナとして使えるかもしれない。

ただし当然、慣らし(と鳴らし)が必要だし、その前に、現在よく吹いている細身のケーナで自分自身をもう少しレベルアップさせてからだと思う。

コレと同じ歌口幅・深さで、これより外径・内径とも細い、1番のJC ママニの黒檀ケーナとセットで、少しずつ練習に投入してみたい。

 

 

6.ヤマハのG管カエデケーナ「QEN」

(外径27、内径18.5、指穴最大10.5、歌口幅12、歌口穴深さ8、全長370mm)

 

①概要・特徴

以前、別記事でチラッと紹介した。

風の噂では、何でもヤマハには、出せば絶対儲かると分かっていても、基本的に「民族楽器には手を出さない」という暗黙のポリシーがあるのだそうだ(だから、ギターであれだけ売れているのに、同じように大市場のウクレレには参入していない)。

その天下のヤマハが、何を血迷ったのか(田中健さんにあやかろうとしたのかw)、一時出していた木製ケーナ、その名も「QEN(ケン)」。

とても丁寧な造りをしており、口に当たる管の後方がやや低めになっていたり、音程調整できるように上下分離できるようになっていた。

 

今でもヤマハ公式サイトに掲載されているが、「生産完了品」となって久しく、店頭在庫も無い。ただ、ちょくちょく某フリマサイトや某ネットオークションに出品される(この数年間、3千円台から27,500円まで、様々な値付けで出されているのを私は見てきた)。

なお上記方針から、ヤマハ本体では「QEN」を製造しておらず、OEM生産品だったという。それでもYAMAHAブランドで出す以上、本体並みかそれ以上に厳格な外注管理・品質管理体制の下で製造したことだろう。

現に歌口下にハッキリと「YAMAHA」のロゴが入っているし、公式サイトに堂々と載っているし、少なくともヤマハにとって「黒歴史」扱いではなさそうだ。

 

②なぜこれまで吹く機会が少なかったのか

別記事で少し言及したが、設計思想がリコーダーの延長線上にある気がする。

リードこそ無いものの、いつでも誰でも同じ音が出せる再現性の高い楽器を目指したような印象。

その分のしわ寄せか、3オクターブの上の方の音を出す設計・仕様になっていない。付属の運指表には、3オクターブのラ#までしか掲載されていない。

よって、使える曲が限られてくる。

音色もどこかリコーダーっぽい。まあそれが唯一無二の個性にもなっていると言えなくもない。

 

③久しぶりに吹いてみたらどうだったか

3オクターブのミまで、通常のボリビア運指で、何とか出た。あれあれあれ~~っ!?

天下のヤマハなので、運指表に載せてしまうと、その音が出ることを保証しているように受け止められるから、敢えてラ#までしか載せていなかったのかもしれない。

ただし、やはり3オクターブのシは出ず、私には出し方も分からなかった。

よって「使える曲が限られてくる」という結論は変わらないが、それでも演奏可能な曲の数は増えたと思う。

 

④今後の活用の見通し

「ふるさと」や「赤とんぼ」のような日本の童謡・唱歌を合奏で吹く際には好適かも

あと、ボリビアへ旅行に行く時には、ぜひこちらを携行したい

現地で、天下の「ヤマハ」のケーナを演奏家や製作者に見せみて、どんな反応をするのかを観てみたいw

おお~!ぜひ俺のケーナと交換してくれ!!との申し出が殺到したり、一瞬でも現地で人気者になれるんじゃないか!?と、夢想している♪(←すんません、コイツちょっとアホなんですわ、許したってくださいm(__)m)。

 

 

7.ホルヘ・"アハユ"・ロドリゲス Jorge "Ajayu" Rodriguez のF管バンブーケーナ

(外径27、内径20、指穴最大12.5、歌口幅10、歌口穴深さ7.5、全長427mm)

 

①概要・特徴

演奏家・楽器製作者として息の長い活動を続けている通称「アハユ」さん作のF管ケーナである。

演奏者としては、弦も笛もお手の物というマルチプレイヤーとして、名コンフント「グルーポ・コカ」の音の屋台骨を支えてきたことを特筆すべきだろう。かつて率いていた(たった1枚しかアルバムを遺さなかったが、それが隠れた名盤だった)「ロス・アハユス Los Ajayus」のリーダーだったことも、ほぼ忘れ去られているが、もっと多くの愛好家に知られて欲しい。

グルーポ・アイマラの創設メンバーのギター奏者、ホセ・モンターニョらと制作した本アルバム。

マウロ・ヌニェスのビジャセラーノ系の音楽を独自進化させた音世界が唯一無二で、要所要所でカラティンヤが素朴にリズムを刻むのが聴いていて堪らない。このアルバムでしか得られない心地よさがあり、未だに3か月に一度くらいの頻度で、聴き返し続けている好アルバムだ。

 

ちなみに、ケーナ奏者としての近年の演奏はこちら↓。コロナ下での無観客コンサートで、向かって左でケーナを吹いているのがアハユさんだと思う(本曲「太陽の息子たち Hijos del Sol」は、ペルーの「太陽の乙女たち Virgenes del Sol」とちょうど対になるような曲(リズムもFox Incaicoで同じ)で、1986年10月にラパスで開催されたケーナ奏者の大会でも、ルーチョ・カブールやエディ・リマ、リカルド・メンドーサといった当時のケーナの名手に伍して、アハユさんは本曲を吹いていた。彼のオハコなんだろう)。

 

楽器製作者としては、まだ信頼できるボリビア・ケーナのブランドが数少なかった70年代から、品質と精度が高いケーナをコンスタントに世に送り出し続けている。日本では「アンデスの家ボリビア」が先代の時代から現在に至るまで、一手に供給を引き受けており、90年代くらいまでは日本のケーナ吹きにおけるアハユの占有率が非常に高かったと記憶している。

より正確で詳細な作者紹介とご本人のメッセージは、「アンデスの家ボリビア」のケーナのページをご覧頂きたい。

アハユは、ある時期から、銘に製作年を入れるようになったが(正確には分からないが、おそらくは90年代の前半頃からだと思う)、本作には製作年記載が無いので、かなり古い年代の作だと思われる。

 

②なぜこれまで吹く機会が少なかったのか

F管を持ってなかったので、手に入れてみたが、通常のG管より一音低いだけのF管(最低音:ファ)が適した曲が分からない

また、アハユのケーナの大きな特徴は、歌口裏の長細い掘り下げ。歌口表はぽっかり穴が開いているだけで殆ど削り込まない。

よって息を当てる角度が、他のケーナを吹くときと少し変える必要がある、ような気がして、あまり手に取る機会がなかった。

 

③久しぶりに吹いてみたらどうだったか

懐かしい。ただただ懐かしい、だけかと思ったら、そうではなかった。

(G管ケーナの運指で言えば4オクターブのソに相当する)3オクターブのファまで普通に出た。

おそらく80年代以前の個体と思われるが、その時代において、現代でも十分以上に通用するクオリティのケーナを出していたことに、改めて驚かされた。

 

④今後の活用の見通し

まずは、G管ではなく、F管で吹くのが適した曲を見つけるところから始めないと。

正直、まったく見当がつかん。

しかし演奏家において、意外にF管の需要はあるようなので、今後F管を使っている人を見かけたら、どんな曲を吹いているのか注目したい。

 

 

8.レイナルド・ベガ Reynald Vega のD管バンブーケーナ

(外径30、内径23、指穴最大11.5、歌口幅10.5、歌口穴深さ9.5、全長488mm)

①概要・特徴

レイナルド(ゼイナルド)・ベガは、ボリビアはラパスの人気グループ、ハッチャマルク Jacha Mallku 他のメンバーで、名ビエントス奏者、作詞作曲家にして、優秀なビエントスの製作者。

日本では、山梨のアンデス楽器のセレクトショップ「ファンタシア」さんの「サポートスタッフ」に名を連ねている。

私は、彼の作では、他に20年以上前に当時のTaller Serranoさんで買ったG管ケーナと7×8列のマルタも所有しているが、いずれも尖った個性が無い分、誰にでもオススメできそうな良質な楽器だ。

 

②なぜこれまで吹く機会が少なかったのか

ヘタっぴなので、主メロディーばかり吹かせてもらっているから(^^;)

 

③久しぶりに吹いてみたらどうだったか

音がまろやかで、ケナーチョらしい良い音がする。

この個体も極めて優秀で(G管ケーナの運指で言えば4オクターブのソに相当する)3オクターブのドまで出た。

ただ、ケナーチョあるあるで、指穴の間隔が広いうえに、直線的に指穴を開けているので、押さえにくい。

何とかギリギリ押さえられるが、早い指使いはムリだ。

 

④今後の活用の見通し

やはりこれからD管ケナーチョを使う曲を開拓するところから始めないとなあ。

いまパッと思い浮かぶのは「El Eco こだま」とか「Sonkoyman 心から」とかなら、使えそうな気がするが、どうなんだろう?

それからもう少し経験を積んで、ケーナの合奏において、下のパートを受け持てるようになることだろう。

 

 

ひとまず以上である。

いやー、個々のケーナそれぞれに、個性と背景とストーリーがあるから、一日がかりで書いた記事を3回に分けて載せたけれど、それでも滅茶苦茶長かったね。

ここまで読んで下さった皆さま、本当にお疲れ様ですm(__)m

 

この3回シリーズ全体の結論は、前々回の「その1」にて、先に書いてしまったので、ここでは繰り返さない。

よって、本稿はここでもって、唐突に終わりを迎える――とはならなかったw

最後の最後に蛇足ながら、念のため、以下に注意喚起のメッセージを附記して、結びに代えたい。

 

 

ご注意~! ¡ATTENCION!

これからケーナを買おうとしている、正常なバランス感覚と目的意識と経済合理性と良識を持ち合わせた皆さんへ。

お分かりだとは思いますが、これは本当に悪い例です。良い子は間違っても絶対にマネしてはいけません。

長々と綴ってきたように、ケーナを吹いて上達することよりも、ケーナを集めることにばかり力を注いで、正道を踏み外しまくった私から、何かアドバイスできることがあるとすれば、どうぞ私の事例を反面教師にして下さい、と言うことに尽きます。

 

お安いから、希少な出物だからと、安易にフリマサイトやネットオークションとかでポチってばかりいると、本来の目的である「吹くこと」ではなく、手段であるはずの「買って集めること」が目的へと主客転倒してしまい(玩物喪志)、ケーナの上達には、はっきりと遠回りです。40年ほど遠回りしてきた私が言うことですから、どうか信じてください。

そうならないようにするには、まず――、

 

①ケーナ吹きとしての現在の自分の実力・技量を正視したうえで、

②想定用途・期待役割(ソロ用か合奏用か、主に吹きたいのはボリビアの曲かペルーの曲か、今の実力で余裕をもって扱えるものにするか、自分の伸びしろに期待して少し背伸びするか、等々)をなるたけ具体的にイメージし、

③信頼のできる専門店に自分で足を運んで(できればあなたのケーナの先輩や先生にも同行してもらって)、

その道のプロであるお店の方の意見も参考にしつつ、

⑤実際に試奏をして、

用途・役割に照らした候補品の個性長所/短所、向き/不向き)をできるだけ把握して、重々納得し、

⑦本数を合理的に絞り込んで(ただし、別記事でも主張したように、1本だけにすべきだとは全く思いませんが)買い求め、

いったん買ったら、その相棒たちとは一蓮托生の仲、運命のパートナーとしてしばらく向き合って練習に専念し、

⑨当初の想定用途・期待役割を果たしてもらう(或いはその限界が見えてくる)までの間は、他のケーナには見向きもしないようにする――

 

――ことをオススメします!!

(まあ、そうは言うても上記は机上の理想論・べき論で、現実は「不純物混じりで純度低めの理想」あたりが、ちょうどいい湯加減なのかも💦)

 

昔、ロシアの文豪・トルストイは「光のあるうちに光の中を歩め」と言いました。

闇落ちしてケーナ・コレクション沼にどっぷりハマりこむことは、いつだってできます。

蛇の道も歩めば愉しいwものですが、ある種の「うしろめたさ」もつきまといます。

 

つまり、ひとたびコレクションを始めてしまうと、吹かないケーナを大量に生み出してしまいます。

吹かれないケーナは、生命の息吹を吹き込まれないケーナ。

けれど、やっぱり、吹いてこそのケーナではありませんか。

お前が言うな、というのは至極ごもっともではありますが、コレクターからケーナ吹きを目指す私だからこそ、皆さんにお伝えできることがあるのではないかと考えて、コレクション自慢とも取られかねない(実際にコレクション自慢と懺悔はコインの裏表だと思います)記事を書いています。

皆さまにおかれましては、まずは邪道ではなくて、どうか王道を歩んで下さい。 

 

末筆ながら、皆さんのケーナ・ライフに歓びと幸せがあらんことを!

Let's enjoy our musical life with QUENAs!  

Furthermore... Live long and prosper!!  (^ー^)V ■