いま私が吹いているケーナたち | ふぉるくろーれ夜話/mitaquenaのブログ 

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仕事をリタイアしてから始めたケーナの演奏をきっかけに、思い出したり思いついたりした、主にフォルクローレに関するよしなしごとを綴ります。

このところコレクター噺が続いてしまった(そして「ボリビア」5連投(^^;)ので、今日は、現在私が好んでよく吹いている5本のケーナをご紹介したい。

 

いちおう本稿のテーマは「ケーナの練習・演奏関連」に分類しておくが、それでも根がコレクターなので、結局はいつも通り、ウンチク過多のコレクション話になってしまうかもしれない。さきにお詫びしておく。ごめんなさいm(__)m

 

よく「弘法筆を選ばず」と言うが、それはその道を究めた人だからこそ。

初心者は筆を選ぶべきだと私は思う。モチベーション向上のためにも、ヘンな吹き癖を付けないためにも。

 

私はケーナを本格的に吹き始めたのは先月からで、まごうことなき初級者である(40数年前から、ケーナに口を付けてはいたが、マジメに練習はしていなかった)。

具体的には、現在、G管で3オクターブのミまではどうにか実用可能だが、単に音が出せているだけ。

音量調整やリズムに乗った演奏、ニュアンス・曲調の再現等の多くの面で、お客様に聴いて頂ける音楽表現はできておらず、まだまだ修行が足りないレベルだ。

だからこそ、吹くケーナを(同じG管でも)選んで使い分けている。

 

一言で「ボリビア運指のG管ケーナ」と括っても、素材や製作者、管の外径・内径、指穴の大きさ・配置、歌口(吹き込み穴)の形状のみならず、吹き手の当日の体調や周囲の環境(湿度等)によって、吹きやすさや音色が変わってくる。

曲やシチュエーションの向き・不向きもある。

 

上級者やプロは、ケーナ一本さらしにまいて、どんな場所・状況でも聴く人を魅了する演奏ができるかもしれないが、初中級者には無理だ。

ケーナを選んで使い分ける理由がそこにある。

 

現在、私は、グループ練習や個人練習で、主に5本のG管ケーナを使っている。

うーむ、素晴らしい。。完全に道具負けしているな、自分('◇')ゞ

以下、これら5本のウンチク話・ノロケ噺へ突入するが、私と同じケーナ練習中の皆さんにとって、何か参考になることが少しでも含まれていれば、幸いですm(__)m

 

結論を先出しすると、本稿を綴ってみての気づきだが、

細身(外径24~26mm、内径18~19mm)で、指穴小さ目(~12mm)、歌口幅狭め(~10mm)、歌口穴深さ浅め(~8mm)のケーナが、今の自分のレベルには合っている。

・結局自分は「攻め」のケーナと、「守り」のケーナ、プラス「遊び」のケーナで使い分けている。

――ということが、改めて分かって、自分の中では腑に落ちた。

 

それでは、一本ずつ、紹介させて頂く――

 

 

1.風工房さんのホウライチク製ケーナ

(外径24.5、内径18、指穴最大10、歌口幅9、歌口穴深さ7、全長376/単位:mm)

【概要】

いま私が同好会でも個人練習でも、メインで吹いているケーナ。

 

「風工房 EL VIENTO」(お店サイトブログ)さんは、名前の通り日本のケーナ製作工房。

ちなみに、Vientos(スペイン語で「風、吹奏楽器」の意)を作っているということで、日本のケーナ工房名には「風」が付くところが多く、しばしば間違えそうになるので要注意。

「風工房」さんは、山口県に工房を構えているので、多くの人にとってお店を直接訪問するのはちと遠いが、メールで親切に相談に乗ってくれ、希望すれば候補作を何本か送って選ばせて下さるのが、とても有難い。

オーダーメイド主体だが、お値段も大変リーズナブルだと思う。

 

あまり意識していなかったが、私の所属している同好会でも「風工房」さん製のケーナを愛用している人が多い。

 

実際に、吹いていて気持ちが良く、グループで吹いても音が突出しすぎず協調性がある。

その意味で、「遊び」と「守り」のケーナ。

現時点で自分の唇と指に最もしっくりときている。

このケーナに伴走を続けてもらって、少しずつ上達していきたい。

 

【長所】

ムリなく高音が出る(私でも4オクターブのソが出る)。

指穴が小さめなので、複雑な指運びの曲でもしっかり穴が押さえられ、音が不明瞭になりにくいのが、初級者には大変ありがたい。

日本の竹製としては音色も良好で、低音部の鳴りも良い。

また、重量が軽いので、長時間吹いても肩が凝りにくいところも、地味に嬉しい。

 

【短所】

ほぼ無い。

強いて言えば、ボリビア製と比べてしまうと、音量は相対的に小さく、音色にボリビア色が薄い(当たり前だ)。

 

 

2.CAMAC社の黒檀製ケーナ

(外径25.5、内径18、指穴最大9.5、歌口幅7、歌口穴深さ7、全長358mm)

【概要】

大昔(約40年前)にヤマハ楽器の銀座店等で最高級品として売られていたフランス製の黒檀ケーナ。

フランスも日本に先駆けて60年代くらいからフォルクローレ・ブームが沸き起こった国だから、ケーナの需要もあり、製作者もいたのだろう。

昔とても憧れていたが、当時高くて手が出せなかった。その高嶺の花が某フリマサイトに出たのでポチって入手した。吹いてみたら、ケーナ製作者が激増し、品質レベルも格段に底上げされた現代の基準に照らしても十分通じる品質で、固有の持ち味があった。

音色のイメージとしては、昔懐かしのロス・チャコス Los Chacos が如何にも使ってそうな感じ(と言って伝わるものだろうか? 伝わることにする)。

 

サブで使っている完全「守り」のケーナ。

例えば、どこか調子の悪いときや、グループ演奏で目立ちたくないとき(曲がうろ覚えだったり^^;、ノれない曲だったりしたとき)、および敢えてか細い音色で吹きたいとき(例えばペルーやエクアドルの曲を吹くとき)に活躍してくれる。

 

【長所】

私でも3オクターブのファ#まで出る。吹き手の調子が悪いときでも安定して音が出る。

細身・指穴小さ目なので、持ちやすく、押さえやすい。

歌口の幅が狭いので、音を出すのに少しの息で事足りる。

黒檀なので、吹いている自分がなんだかセレブになった気がする^^;

 

【短所】

音色がややリコーダーっぽいので、面白みは少ないかな。

音量は小さいので、ソロには不向き。

また、木製ケーナ一般にありがちだが、歌口への息の当て方が悪かったり指穴の押さえが甘いと、高音部がキンキンしたり、ハウリング音が出がちなので、その点はバンブー製のケーナよりも、吹く際に注意が必要だ。

 

 

3.Walata工房のキルキ製ケーナ

(外径26.5、内径19、指穴最大13、歌口幅12、歌口穴深さ7.5、全長385mm)

【概要】

通っているケーナ同好会を指導している先生から譲って頂いたもので、元は別稿で書いた「アンデスの家ボリビア」が、日本人の嗜好に合う細身で丁寧に加工したものを、と特に工房にオーダーして仕入れたもの(既に売り切れ)。

ラパスの通称「魔女通り」に工房兼店舗を構える楽器店「Walata ワラータ^o^」製。楽器職人の村Walata Grande出身の人が創業し、現在三代目だという老舗。

 

素材のキルキはバンブーの一種で、昔からアイマラ族が神聖な音を奏でる楽器作りに用いていたという。一度刈り取るとその後20年生えてこない。そのため近年は希少材となっている。外側は鮫皮のようにザラザラしていて、質感は柔らかめで、内径から独特の香りがする。

 

現在は主に、吹き慣れて少し自信がついてきたボリビアの曲を吹く際に、少し気合を入れて使用している。

その意味で私の中では「攻め」のケーナ。

 

【長所】

音色が良い。音色だけで言えば、ここに挙げた5本の中で、一番気に入っている。

そして何と言っても、ボリビアのケーナらしさがある。

このケーナを吹きこなせるようになったらカッコいいなあ、と練習意欲をかき立ててくれる。

 

【短所】

ボリビアのケーナとしては細身というだけで、いまの私にはまだ太く、指穴も少し大きく、歌口幅もそれなりに広いので、まだ息を効率的に音に変換できていない私としては、吹くと曲によっては息切れしてしまう。

 

 

4.Adrianのバンブー製ケーナ

(外径25.5、内径18、指穴最大12、歌口幅10、歌口穴深さ7.5、全長376mm)

【概要】

一世を風靡した名コンフント「ルミリャフタ Rumillajta」「カリャワラ Kallawaya」等のケーナ奏者として一時代を築いたアドリアン・ビジャヌエバ Adrian Villanueva の工房製のケーナ。

 

彼の工房から生み出されるケーナの品質の高さには定評があった。また同工房では、マウロヌニェス流の正調ビジャセラーノ系木ペグチャランゴも製作販売していた。

非常に残念なことに、アドリアンは2020年にコロナ感染症で急逝してしまった。

(そのため出演が決まっていたケーナ・サンポーニャ奏者の祭典「SIKU QUENA FEST2020」は、過去映像と事前収録のインタビューでの出演となってしまった)

 

工房が現在どうなっているか私には分からないが、今の流通在庫が無くなれば、もう入手困難になるかもしれない。

 

【長所】

まさに、オールラウンダー。もしかすると客観的には、今回の5本の中でボリビアのケーナとして、総合的に最も優秀なケーナのような気がする。「ドラえもん」の出木杉君のイメージ(笑)

ラストリゾート。最後にすがる一本。その意味で、お「守り」のケーナ。

 

【短所】

特になし。強いて難癖をつければ、ボリビアのケーナにしては、ソツが無さ過ぎ、優等生過ぎて、吹いていてあまり面白みが感じられないか(私がまだポテンシャルを引き出せていない可能性が高い)。

 

 

5.大木岩夫さんの竹製ケーナ

(外径24.5、内径18、指穴最大12、歌口幅10、歌口穴深さ6、全長372mm)

【概要】

日本の本格的な(不特定多数に有償販売する)ケーナ製作者の草分け的存在で、ご自身もケーナ奏者(ウニャ・ラモスに風貌が似ているw)である大木岩夫さん作のケーナ。

大木さんには、ケーナ制作法の著書「アンデスの笛 ケーナ ー作り方と吹き方―」(絶版)もある。ケーナ制作を巡る様々な逸話がユーモラスに描かれている。ケーナを作らない人私でも楽しく読めた。

ただ残念なことに、販売サイトを覗くと、病気療養中で現在ケーナ制作休止中となっている(大木さんの個人ブログも2014年5月を最後に途絶えている)。

私は最近、たまたま某フリマサイトで状態の良いものが安価で出品されているのを見て、即ポチして入手した(大木さんのケーナはプレミア付きの高額で出品されていることもある)。

 

実際に手に取って吹いてみると、不思議なケーナだった。

日本の竹製で細身なのに、ボリビアのケーナに劣らず結構な爆音なのだ。音色もあまり他に類を見ない(聞かない)独特の音がする。でもそれがどこか魅力的だ。

ただスイートスポットが狭く、外すとすぐハスキーボイスになるw

おそらくその秘密の一端は、歌口裏側の削り方にあるのかもしれない。

多くのケーナがV字型に先細りで削るところが、U字型に奥の方まで幅広で削ってある。

このように歌口裏側の削り込みが幅広でU字型をしている例は少ない。

私が手にした範囲では、ALANDRES(ボリビアはコチャバンバのIvan Alandres工房)のケーナで同様の個体があり、やはりスイートスポットが狭かった(ツボにハマると滅茶苦茶いい音を鳴らすが、外すとウンともスンとも言ってくれないツンデレ仕様w)。

 

私の中では「フシギちゃん」認定。RPGで言えば「遊び人」枠。

今は個人練習で行き詰ったときに自由に吹く「遊び」のケーナとして、重宝している。

 

 

――以上。

筆の赴くままに書いていたら、またも超絶に長くなった。もうこれが平常運転だなw

自分の生理にあってはいるが、読んで下さる方がいらっしゃるとすれば、しんどいでしょうね。。本当にいつもすみません。

 

これからの成長や嗜好の変化で、上のレギュラー陣にも今後入れ替えが起きるかもしれないし、少し進歩したら、サンポーニャ編もそのうち書くかもしれない(^^;)

その時はよろしくお願い致しますm(__)m■