人生たるもの
日ごと心が増える
産まれて
生きて
死ぬだけなのに
携わる時と共に
感情に触れる時と共に
心が増えて行く
何を目指そうとて
何も得られずとも
時と共に
心が増えて行く
人が生きる
その摂理か
儚く虚しく
可笑しく楽しい
人生たるものは
湧き出でる泉の様で
限りない宇宙の様で
乾ききった大地の様で
消えかけた星の様で
そんな全てを
秘めている
産まれ出でる前の
解放感を
全うした後に
取り戻すためか
日ごと増えた心を
最期に
味わう様に
噛み締めながら
蝉のよう
新緑が日に焼ける頃
蝉の鳴き声を聞いた
単音で
繰り返し奏でられる音が
耳に付く
友達も恋人もまだ
探せないのに
生涯は短いのに
こんなに早くも
暗い地中から
這い出して
闇の中で
孤独に
耐え切れなかったのか
憧れのその先を
早く見たかったのか
呼べど応える者もなく
鳴いている
いつに生まれたって
どこにいたって
擦り切れるまで
繰り返し鳴く事しか
できないから
仲間で溢れて
賑やかになった
夏の最中に
土へと帰る
晩夏
地を這う虫の
儚い声が色濃くなる頃
蝉の鳴き声を聞いた
単音で
繰り返し奏でられる音が
耳を突く
夏の叙情さえ嫌気に
代わるほど
待ちわびる秋の訪れに
狂ったように
鳴き続ける
仲間は次世代に命を繋げ
穏やかに旅だったのに
想い描く夏の景色は
遠く過ぎ去って
しまったのに
呼べど応える者もなく
いつに生まれたって
どこにいたって
擦り切れるまで
繰り返し鳴く事しか
できないから
遅すぎた憧れと
光の渦に
耐え切れない孤独と
焦りの中
諦め切れずに
鳴いている
仲間も探せず
深まる秋の最中に
土に帰る
それでも
そこに在るのなら
現実を受け止めて
鳴くしかない
蝉ではなく
人ならば
夏を感じ
秋を想う事も
できるのだから
悔いを心に刻んで
憂いをなして
誰かを
思い遣れるの
だから