闇に佇みて -20ページ目

人生たるもの



日ごと心が増える

産まれて
生きて
死ぬだけなのに

携わる時と共に

感情に触れる時と共に

心が増えて行く


何を目指そうとて
何も得られずとも

時と共に
心が増えて行く

人が生きる

その摂理か


儚く虚しく

可笑しく楽しい


人生たるものは

湧き出でる泉の様で

限りない宇宙の様で

乾ききった大地の様で

消えかけた星の様で

そんな全てを
秘めている


産まれ出でる前の
解放感を

全うした後に
取り戻すためか


日ごと増えた心を

最期に

味わう様に
噛み締めながら

蝉のよう


新緑が日に焼ける頃
蝉の鳴き声を聞いた

単音で
繰り返し奏でられる音が
耳に付く

友達も恋人もまだ
探せないのに

生涯は短いのに

こんなに早くも
暗い地中から
這い出して

闇の中で
孤独に
耐え切れなかったのか

憧れのその先を
早く見たかったのか

呼べど応える者もなく
鳴いている

いつに生まれたって

どこにいたって

擦り切れるまで
繰り返し鳴く事しか
できないから

仲間で溢れて

賑やかになった
夏の最中に

土へと帰る





晩夏

地を這う虫の
儚い声が色濃くなる頃

蝉の鳴き声を聞いた

単音で
繰り返し奏でられる音が
耳を突く

夏の叙情さえ嫌気に
代わるほど
待ちわびる秋の訪れに

狂ったように
鳴き続ける

仲間は次世代に命を繋げ
穏やかに旅だったのに

想い描く夏の景色は
遠く過ぎ去って
しまったのに

呼べど応える者もなく

いつに生まれたって

どこにいたって

擦り切れるまで
繰り返し鳴く事しか
できないから

遅すぎた憧れと

光の渦に
耐え切れない孤独と
焦りの中

諦め切れずに
鳴いている

仲間も探せず

深まる秋の最中に

土に帰る



それでも

そこに在るのなら

現実を受け止めて
鳴くしかない

蝉ではなく
人ならば

夏を感じ

秋を想う事も

できるのだから


悔いを心に刻んで

憂いをなして
誰かを

思い遣れるの
だから




年甲斐


年甲斐を見失う

老人が
マラソンランナーに
なるように


不勉強な青年が
一流に憧れるように


犬が仔猫を育てるように


年甲斐もなく


若い女性に
心を惹かれる


恋心を抱く


誰しも同じ


人として


それ故に