ビリーブ 未来への大逆転 | akaneの鑑賞記録

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とても素敵な映画でした!私は大好きです。


自由の国アメリカでさえ「女性はクレジットカードを作れない」「女性は仕事を選べない」「家庭に入ることを強要されていた」という時代がありました。
2017年に公開された映画「ドリーム」も、1960年代に差別を乗り越え、道を切り開いた女性たちの物語。

こういった先駆者のおかげで、私たちは今、自由に生きることができるんですね。

 

 

80歳を超えてなおアメリカの最高裁判事を務めるルース・ベイダー・ギンズバーグさんの半生を描くストーリー。
貧しいユダヤ人家庭出身のルース・ギンズバーグ(フェリシティ・ジョーンズ)は、必死に努力して名門ハーバード法科大学院に入学します。

1956年当時在学していた女性は500人中たったの9人で、女子トイレすら設置されていませんでした。

 


家事と育児に理解のある夫マーティン(アーミー・ハマー)は2年先輩。

 

 

二人は学生結婚をし、幼い娘を育てながらの学生生活でしたが、マーティンがガンで倒れてしまいます。

ルースは夫の看病をしながら彼の授業にも出席するなど、二人分の勉学と育児に奮闘。なんとか治療は成功してマーティンは持ち直し、一足先に卒業してニューヨークの法律事務所に就職したことをきっかけに、ルースはコロムビア大学に編入、首席で卒業します。

しかし女性というだけで法律事務所に就職することができず、大学の教授として働き始めます。

 

1970年代になると急に、大学にも女性が増え、人種も様々、服装も自由になり、時代が大きく動いていることがよくわかります。

弁護士になる夢は叶わず、悶々とするルースに、マーティンは1つの事案を持ってきます。
それは、年老いた母親を自宅介護するため、常勤の仕事を辞めた独身男性が、介護手当を受けられないことを訴える内容でした。女性に対してなら支払われるのに、男性だと認められない。
単に「女性蔑視」「女性だけが不当な扱いを受けている」という方向でなく、男性も不利益を被っているという切り口で、男女平等の訴えを起こそうというもの。

つまりこれが原題の「ON THE BASIS OF SEX」⇒「性差別訴訟」なんですね。

ルースは法律の知識は豊富にありますが、弁護士としての実績がありません。
友人や恩師を招いて模擬裁判をするのですが、裁判官からの質問を上手くかわして、自分に有利に進めていく弁論のノウハウがないのです。
そういうところは、夫のマーティンの助けも借りつつ、裁判に挑みます。

 


 

原告、被告、持ち時間はそれぞれ30分。
ルースは資料を元に懸命の弁論をしますが、うまく行きません。

持ち時間4分を残して終了してしまいます。
相手側の用意周到な弁論に押されそうになりながら、残り4分の弁論を促されルースは再度、証言台に立ちます。
そこで彼女は、借り物の言葉ではなく、自分の言葉で、「これは勝ち負けの訴訟ではなく、自分たちのそして自分たちの子供の未来を切り開くためなのだ」と語り、その言葉が裁判官たちの心を動かしました。

この裁判をきっかけに、ルースは次々に性差別による偏った法律を正し、1980年、カーター大統領によってコロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所判事に指名、1993年にはクリントン大統領によって連邦最高裁判事に指名され、現在に至るまで現役で活躍しています。

映画の最後にはご本人が登場!

   

ルース役のフェリシティ・ジョーンズは、「大学時代に知り合って恋愛結婚、病気の夫と小さい子供を抱えながら、自分も勉学に励む女性」という設定が、2015年公開の「博士と彼女のセオリー」と若干被りますね。
でも少し年齢を重ねて落ち着きが出てきたのもあり、今回は「サポートする妻」ではなく「自分が主役」というポジションがきちんと感じられました。


彼女の真っすぐな眼差し、滑舌のはっきりしたクリアな声が好きなんです。
見てる方もシャキッとしますもんね。

May the Force be with us!

って言いそうですけどね(笑)
ローグワン」のもジンも良かったな~


ご主人マーティン役のアーミー・ハマー。
今までは「なんかもう無駄にイケメン過ぎてもはや胡散臭い」という印象だったんですが(ひどい!)
今回はそういうオーラは出さず、イケメンなんだけど普通の人を柔らかく自然に演じていてとても好印象。

 


この時代からすると、家事や育児に抵抗がない男性というのは非常に稀有な存在だったかもしれませんが、彼自身も非常に有能な弁護士(税金、経理関係)であり、なおかつ単に「妻を手伝う」というのではなく「人として支え合い助け合って生きているだけだよ」というスタンスが本当にステキ。
 


あとはルースの娘ジェーン(ケイリー・スピーニー)がとても良かったです。
ミュージシャンだそうですが、彼女は「パシフィック・リム アップライジング」の時も非常に印象に残りました。
童顔のせいか15歳の設定も違和感がなく、出来の良いお母さんと比べられて何かと反発してしまうティーンエイジャーを好演。

ルースはともかく学生時代からずっと「男に負けない!」と思い詰めてずっと頑張ってきた人ですから、柔らかさやしなやかさに欠ける部分もあるんです。だからどうしてもジェーンにも自分と同じような生き方を求めてしまうし、ジェーンは「私自身を認めてよ」となります。
それをご主人のマーティンはさりげなく双方をフォローするんですよね。

ほんとイイ人。理想のダンナ様です。


彼女はあることをきっかけにお母さんと行動を共にするのですが、泣き寝入りをせず、不当だと思ったことには男性に対してでもしっかり声を上げて反論する彼女の力強さをみて、ルースは「そうだ!もう時代は変わっているんだ!」と気付き、前述の性差別訴訟の法廷に立つことを決意するのです。

 


最後の4分間の弁論は、それほど強烈な逆転劇というほどではなくて…
「え?そんなんで、このおっさんたちの考え方変わった?」って思っちゃいましたけど……(苦笑)

 



 

ともかく、ルースとマーティンの夫婦の在り方が素晴らしかったです。
ルースがどんなに頑張っても、マーティンの協力なしにその偉業は成し遂げられませんでした。
二人の姿を通して、男と女、どちらが強い偉い、なんてマウントを取り合うのではなく、人として必要なことは平等に享受できるようにしようという流れが、とても自然に伝わってきます。
この世に男と女が存在するのは、それぞれ違う存在だからです。

全く同等なら雌雄同体の物体が存在していればいいだけ。

考え方も姿かたちも能力も違う。それは当然のこと。
だからこそ、お互いを補い合い、支え合ったら、2倍にも3倍にも可能性が広がるよ!
そういう世の中になれば最強なのにね。

 

 

それにしても「ドリーム」といい「ビリーブ」といい、日本語タイトルは陳腐ですねぇ…