ドリーム | akaneの鑑賞記録

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1960年代の初め、ソ連との宇宙開発競争で遅れを取っていたアメリカは、国家の威信をかけて有人宇宙飛行計画に乗り出す。NASAのキャサリン・G・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)、ドロシー・ヴォーン(オクタヴィア・スペンサー)、メアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)は、差別や偏見と闘いながら、宇宙飛行士ジョン・グレンの地球周回軌道飛行を成功させるため奔走する。


今から約60年前、アメリカでこれほどあからさまな差別があったとは驚きでした。
トイレも、街の水飲み場も、図書館も、白人用と有色人種用ははっきりと分けられているのです。
西計算チームは黒人女性職員の職場。

部署をまとめるドロシーの元、キャサリン、メアリー他30数名のスタッフが働いています。
ソ連の後塵を拝すことになり、政府から圧力のかかったNASAは、ともかく優秀なスタッフを探すこととなり、キャサリンは宇宙船の打上げ、着水地点など、飛行に関する計算部署に、メアリーは宇宙船そのものの設計部署に異動となります。

キャサリンの移動先ももちろん男ばかりの職場で、あからさまな嫌がらせを受けます。
計算のチェックをと言われても「機密事項」と称して重要ポイントがほとんど黒く塗りつぶされた資料を渡されたり。
有色人種用のトイレもなく、いちいち800mも先の西棟まで行かなければならない。
義務付けられているヒールで走っても往復40分ぐらいはかかってしまう距離です。
職場のコーヒーを飲んだら、翌日には「黒人用」のポットが置かれているといった具合です。
気難しいといわれているハリソン本部長ですが、仕事ができると認めたら、偏見などには全くとらわれない人物でした。

ある日、ハリソン本部長がキャサリンに対して「君はいつも席を外しているな!」と咎めたところ、キャサリンはとうとう涙を流して怒りを爆発させました。

ここには私が使えるトイレがありません。
800メートルも離れたトイレに行かなくてはなりません。
私が飲むコーヒーポットには誰も手を触れません。
アクセサリーはパールだけ?そんな高価なものが買えるわけない。
日に数回のこと、トイレぐらい自由に行かせて!

それを聞いた本部長は、そっとコーヒーポットの「黒人用」と書かれたシールを剥がし、バールをもって西棟にやってきて「有色人種用トイレ」の看板をぶち壊して外してしまいます

「NASAでは小便の色はみんな同じだ。どこでも近いところにあるトイレに行け」

ここ、本当にしびれます。
ケビン・コスナーカッコよすぎ。
最近はあまりメインでの登場がありませんでしたが、「ボディガード」の頃と全然変わらないカッコよさ。
決して感情的にならず、仕事に忠実で、リベラルで懐の深い理想の上司!!
声がねー、素敵なんですよー。大好きな声なんですー。あう。
その後も、女性が絶対参加できない会議に参加させて、キャサリンが着水地点をその場で計算して出席者全員が納得、そのおかげで会議が迅速に進んで懸案事項が一瞬で解決したり。
会議室のおじさんたちは、なんとなく微妙な雰囲気になってしまうのですが、同席していた宇宙飛行士は空気を読んで場を和ませてフォローしてくれるんですよね。

その後、導入したIBMのコンピューターが稼働し、計算はそれに任せることになったため、キャサリンは部署から外されてしまうのですが、打上げギリギリになって計算機が出したデータが合わないことが判明します。、
その飛行士は「会議に出ていたキャサリンに計算してもらってくれ。彼女がOKを出したら僕は飛ぶ」って言うの!
キャサリンは急遽計算をし直し、正しいデータを持って管制塔に届けるのですが、もちろん入室できるのは男性職員のみ。
キャサリンは入れず締め出されてしまうのですが、ちゃんとハリソン本部長はパスを渡して中に入れてくれるんです。
それも「おいでおいで!」って感じで軽く、可愛く誘ってくれるんですよ!
だからキャサリンは打上げの瞬間、着水の瞬間を、管制塔でずっと飛行を見守ることができたんです。


エンジニア志望であるメアリーの上司はユダヤ人で、最初から彼女に対して協力的でした。
ただ会社の規約は、黒人女性が絶対キャリアアップできない不当な内容になっているため、州知事に掛け合って州法を改正して新たな前例を作ってくれと直訴し、彼女は必要な資格を取るために白人の学校に通うことを勝ち取り、道を切り開いていきます。

 

二人がどんどん先に行ってしまうことに焦っていたドロシー。
しかもIBMというコンピューターが入ってきたら、もう計算チームは必要なくなってしまうかもしれない。
その危機感をいち早く察知して、独学でコンピューターの操作方法を学び、それを自分のチームの女性にも教えていきます。
男性職員が誰も使いこなせずお手上げとなったとき、ドロシーはさっそうと自分のチームを率いてコンピューターの責任者に、そして黒人初の管理職に登用されたのでした。
東棟の白人計算チームのチーフのキャサリンも最初は対立しているのですが、次第にドロシーの能力を認め、最後には「私たちのチームにも、コンピューターの使い方を教えてくれる?」と言ってきます。


もちろん、実際はもっと陰湿な差別があったでしょう。
理解を示した上司も、マーキュリー計画を成功させるためにはなりふり構わず、使えるものはなんでも利用するぐらいの考えであって、本当に彼女たちの存在意義を認めていたかどうかはわかりません。

でもこれは映画ですからね。

キャサリンにはハリソン本部長、メアリーには技術部長、ドロシーにはミッチェル、ちゃんと理解者が存在し、彼女たちの才能とものすごい努力とガッツを認め、手を差し伸べてくれるのが本当にうれしい。
何度も泣きそうになりました。
今、当たり前のように女性も仕事をしていますが、

 

こうやって道を切り開いてくれた先駆者がいたこと
常に先を読んで、いざという時に対応できるよう準備しておくこと

 

学ぶべきことがたくさんありました。
でも全然お説教臭くなくて、3人の主人公は本当にキュートでポジティブで、家庭も仕事も子育ても全力で、とても前向きな気持ちになれます。

この映画、絶対にお勧めです!

 

それにしても、たかだか60年前、コンピューターは大きな部屋一杯の計算機だったのに、今や小学生でも扱える手のひらサイズの機器になったことに驚愕しますね。