今盛んにネットでは消費税の問題をめぐって衆議院選挙が行われるかに注目が集まっています。

私は安部総理に是非選挙に打って出て欲しいとおもっています。

なぜそのように考えるに至ったのかを簡単に書いておきます。

私は現在フランシス・フクヤマのPolitical Order And Political Decayという新刊を読み終わりかけています。

フクヤマによれば現代の自由民主主義体制がうまく機能するためには3つの事柄が重要だと書いています。

最初は官僚制度を含む国家(State)がしっかりしているかどうか。

次にその国家が暴走しないための「法による支配」(Rule Of Law)が根付いているか。

そして最後に民主的な選挙を含む「説明責任」(Accountability)がうまくいっているか。

フクヤマは上記の3つがうまくバランスされていることが重要で、彼はその代表に北欧のデンマークを挙げています。

国家、法による支配、説明責任の3つの柱がどのように世界各国で達成されたかは各自がバラバラでその歴史をたどることでその国にどのような問題があるかが認識できます。

日本の場合は明治維新で最初に強い国家を作り、のちに徐々に民主的な制度が発達してきました。

それと全く逆なのがアメリカとギリシャの場合で、強い国家ができる以前に男子普通選挙を実施しました。

その結果、選挙は「腐敗」し、投票してもらう代わりに公務員などの職を与えることが盛大に行われるようになったのです。

アメリカではどうにか後に改革できましたが、ギリシャではその改革が行われず、やたらと公務員の数が多いのに関わらず徴税もろくにできないという深刻な問題に発展しているのです。

私はこの本を読んで意外に感じたのですが、フクヤマは日本のような強力な官僚制度を決して否定していないのです。

いかにちゃんと機能する国家を作ることが難しいかを認識していて、台湾の総督府を賞賛している場面もありました。

もちろん日本には日本なりの問題があります。

フクヤマは官僚の自律性(Autonomy)は尊重していますが、官僚が勝手に国家目標を作って実施することは容認していません。

彼は国家官僚の自律性の行き過ぎた例として満州事変を挙げています。

私は消費税の問題も満州事変と同じで、国家目標を官僚が勝手に決めているというアカウンタビィリティーが過度に不足していると考えています。

昨日のNHKの世論調査でもナンバー ワンは景気の回復でした。

国家目標は選挙の付託を受けた政治家が決めるべきなのです。

このような観点からも是非安倍総理には選挙をして欲しいと思っています。
中野さんは『世界を戦争に導くグローバリズム』の中で、E.H.カーの古典だけでなく、アメリカで発達した構造的リアリズム(structural realism)という学問も取り上げています。

この学問を簡単に紹介してみましょう。

国内の場合政府が存在し、法に違反した場合に強制的に罰が執行されますが、国際社会にはそのような執行機関がありません。これをanarchy(無政府状態)と表現しています。

各国はこのような国際社会で生き残る(survive)することを目標にします。

そこでは誰もが相対的な国力(relative-power)の向上に務め、地域的な覇権(hegemony)を獲得しようと努力します。

学者によっていろいろですが、共通するところを注目すればこのような論理の組み立てになっています。

私もリアリズムはけっこう好みで、現在でもワルト教授の議論などを追っかけています。

ただ、残念ながらこの理論も完璧ではありません。

なぜならリアリズムを専門とする学者誰一人ソビエト連邦が崩壊することを予測できなかったからです。

ゴルバチョフは行き詰まったソビエト共産党を立て直すためにペレストロイカ(改革)を行おうとしましたが、逆にソビエト連邦を転覆させてしまったのです。

このようなことはリアリズムの条件に全く入っていませんでした。

中国に関しても同じような問題を抱えています。

習近平が何よりも大切に考えているのは「中国共産党を維持する」ことであって、地域の覇権を握ることは副次的なことにすぎません。

確かに尖閣を巡って日本に勝利することは、共産党政権を維持する上で好都合ですが、負けてしまえば中国共産党を崩壊させる原因にもなりかねません。

かなりのハイリスクなのです。

中国の国民党がなぜ大陸から追放されたのかを最もよく知るのが共産党です。

その中国共産党が本当に日本に対して戦争を仕掛けるでしょうか。

中国にとっても日本と戦争することはコストが高いのです。

そこで私は日本がある程度の防衛力を高めていけば中国との戦争はそれ程気にしなくて良いと思っています。
中野さんはオバマ大統領をリアリストと見ています。中野さんだけでなくハーバード大学のスティーブン・ワルト教授も同じようなことをブログで書いていました。

本当にオバマ大統領がリアリストであれば不必要な戦争はしないでしょうし、そうすれば集団的自衛権を認めた日本が巻き込まれることはないでしょう。

しかし、本当にオバマ大統領はリアリストなのでしょうか。私はその点においてオバマ大統領がぶれまくっている印象があります。

中野さんの本を読んでも、オバマ大統領が現実主義と理想主義でぶれている様子が書かれています。

「オバマは、『アメリカの中核的利益が直接に脅威にさらされていない場合であっても、我々は、大量虐殺を防ぎ人権を保護するために行動する用意があると私は明言する』と理想主義を宣言しながら、続けて『しかし、その重荷をアメリカだけで追うことはできないし、すべきでもない』と現実主義的な留保をつけるのを忘れない」

このような部分がオバマ大統領の言説のあちらこちらに表れて、私にとって本当にオバマ大統領がリアリストであるかどうか確信が持てませんでした。

この本には書かれていませんでしたが、最初にオバマ大統領が言い出した「核無き世界」、あれは何だったのでしょうか。

というわけで、オバマ大統領がリアリストであるかどうか私にはわかりません。

さらにアメリカ議会の問題があります。

議会ではいまだ圧倒的にネオコン(neocon)やリベラル・インターベンショニスト(liberal interventionist)という理想主義的な思想を抱える人が多数で、この人達がオバマ大統領の言うことをすんなりと聞くとは思えないのです。

というわけでこれからのアメリカがすんなりとリアリズムの道を歩むかは私にとってかなりの疑問があります。