ニール・ハウのThe Fourth Turning Is Hereを読んだので気づいたことを書いてみたいと思います。

 

ハウは以前の著作であるThe Fourth Turningでもう一人の共著者と歴史は周期的に動いていくものでじっさい春夏秋冬と季節が変わっていくように歴史は推移しこれからのアメリカの歴史は冬の時代になるだろうと予測をしていました。

 

そしてこの予想はかなりの程度現実化して2008年のリーマンショックでアメリカの冬の時代が到来し、トランプ大統領の1期目を経て現在の激しく2極化したアメリカが立ち現れてきました。

 

今度の著作でハウはこの冬の時代を迎えたアメリカがどのようにして次の春の時代を迎えていくのかを詳細に分析しています。

 

ハウの主張の核心は「(歴史の)1周期はおよそ80年から100年ぐらい(人間の一生の長さにあたる)の期間で、それは自然に4つの期間に分割できる。」というものです。

 

20年ごとに異なる4つの世代が子供、青年、壮年、老年と変化していくことで歴史が動いていくと仮定しているのです。

 

「真珠湾攻撃と(南北戦争の始まりである)サムター要塞の攻撃の間はちょうど80年で、サムター要塞とアメリカの独立宣言の間は85年が経過していた。」

 

これはジョージ・フリードマンの『静けさの前の嵐』にも書いてあったことで、日本がアメリカの真珠湾攻撃を行ったのが昭和16年(1941年)で南北戦争が始まった年が1861年。アメリカが独立宣言を行ったのは1776年でした。

 

「87年というのはまたアメリカの独立宣言とイギリスでの名誉革命がクライマックスを迎えた時のあいだでもあった。」

 

1689年にイギリスで起こった名誉革命は国家権力が国王から議会に移行したという画期的な出来事ですが、このことは英国の植民地であったアメリカにも多大な影響をもたらしたそうです。

 

「イギリスの名誉革命のちょうど100年前はエリザベス女王がスペインの無敵艦隊に勝利をおさめた年であり、その103年前は薔薇戦争でテューダー王朝が始まった年にあたる。」

 

イギリスのエリザベス女王がスペインの無敵艦隊を破った1588年のアルマダの海戦は大航海時代におけるスペインの覇権を終わらせる契機となった出来事でした。そして1485年に始まったチューダー朝ですが、それ以前はイギリスの封建貴族が戦い合うという日本の戦国時代と様相が似ていましたが、テューダー朝によってイギリスの一応の統一が完成します。

 

1485年 チューダー朝により封建時代から絶対主義の時代へ。

 

1588年 スペインの無敵艦隊に勝利することでスペインの覇権を阻止し海

    上でのイギリスの優位を作る。

 

1689年 国家の権力を議会が握るイギリスでの名誉革命。

 

1776年 アメリカがイギリスに対する「独立宣言」を発布する。

 

1861年 奴隷制度をめぐりアメリカでの南北戦争が始まる。

 

1941年 日本がハワイの真珠湾を攻撃して太平洋戦争が始まる。

 

そしてハウはこれらに匹敵する次の重大事件が2030年近辺に起こることを予測するのです。

 

続く

 

 

 

現在のイランが第一次大戦時のドイツや第二次大戦時の日本のようにビスマルク憲法を持っていることとそのイランがアメリカと対立している危険性についてこれまで書いてきたわけですが、ここで少し整理してみたいと思います。

第一次世界大戦はビスマルク憲法下のドイツと民主主義国であるイギリスおよびフランスが戦い、後に民主主義の国であるアメリカが参戦してきました。

またビスマルク憲法を持つドイツは民主主義国と戦う一方で専制主義のロシアとも戦っていました。

この戦争の結果は民主主義国が勝利し、ビスマルク憲法のドイツは敗れ、専制主義のロシアでは革命が起きました。

第二次大戦での東アジアでもこれと似たようなことが起こります。ビスマルク憲法を持った日本は米、英の民主主義国と戦いましたが、それ以前に蒋介石による専制主義の中国と戦っていました。

この戦争の結果はやはり第一次世界大戦と同じようになります。

アメリカやイギリスの民主主義国が勝利し、ビスマルク憲法をもった日本は敗れ、専制主義の中国では革命が起きました。

そして仮に将来、ビスマルク憲法を持つイランと民主主義国であるアメリカおよびイスラエルが戦うようになったときにこれらの国々だけで戦争になることはなく、必ずアメリカの準同盟国でありイランのライバルである専制主義のサウジアラビアも巻き込まれることになるはずです。

そうなればビスマルク憲法を持つイランは民主主義国と専制主義の国両方と戦う第一次大戦と第二次大戦のアジアでの出来事と同じことが繰り返される可能性があります。

ここで少し話はそれますが、ロシアのプーチン大統領が2022年1月にウクライナを侵略した後にいくつかの本を読み返したのですが、そのうちの一冊がマリン・カツサの『コールダー・ウォー』という本で、日本語でも渡辺惣樹さんの翻訳ででています。

この本でのウクライナに関する分析はとても鋭く、この戦争が始まった時にウクライナがナチスに関与していたかどうかが問題になりましたが、この本ではそのことにもふれられていました。

実はこの本の終わりの方でイランとサウジアラビアが戦った場合の予想が書かれていたのですが、それがとても参考になるので一部引用してみます。

・サウジアラビアには政党は存在しないし、組合も無い。サウジ王家の一員が行なっている支援団体以外に社会的な団体も存在しない。もしサウジ王家が崩壊したら、その真空を埋めるのはイスラム主義者だけだ。

・サウジのイスラム主義者は最も厳格で反動的なワッハーブ派に属するものであり、ビン・ラディンの仲間でもある。

・サウジとイランが戦うことになればサウジでイスラム主義者が勝利する確率は非常に高くなるだろう。

わたしもこのようになる確率が高いように感じています。

すなわちビスマルク憲法を持つイランが民主主義国であるアメリカ(およびイスラエル)と専制主義のサウジアラビアと戦ったら、おそらく民主主義国が勝利しビスマルク憲法を持った国は敗れ専制主義の国では革命が起きるでしょう。

つまり第一次大戦と第二次大戦のアジアで起こったことと同じことが中東で起こる可能性があるのです。

ロシアと中国で起こったのは共産革命でしたが、将来のサウジで起こるのは共産革命ではなく過激なイスラム革命という違いはありますが、こんな結果になる戦争は世界にとって本当に必要なのでしょうか。

 

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近年どのようなことが明治憲法についてわかっているのか知りたくて小林道彦氏の『近代日本の軍部』という本を読んでみました。

 

この本は明治維新以降の政軍関係を明治憲法を中心に事細かく調べていますが、結論部分が大変よくまとまっていたので少し引用したいと思います。明治憲法に酷似したイランの体制の行方を考えるのにも参考になると思います。

 

小林氏は伊藤博文が「明治天皇のカリスマ的権威と元老の存在に依拠した明治憲法体制に一抹の危うさを感じていた」と書いています。

 

そして実際に元老という調整機能を失った日本は統一した国策を作れなくなっていったのはビスマルクを失った後の帝政ドイツと一緒でした。

 

明治天皇にあったカリスマも明治、大正、昭和と時代が変遷するにつれて薄れていき、「昭和天皇の政治的権威は揺らいでおり、元老西園寺公望は天皇が政治の第一線に出ることが、かえって天皇の権威に傷を付けることになるのではないかと考え、大権の発動による危機の収拾にはきわめて消極的であった」と書かれています。

 

ここの部分は現在のイランとは違いますが、イランの場合は元首が政治の前面に出てしまったために暴走する軍部に寄り添わなくてはならなくなり、パトリカラコスがいうように「体制の信頼性が欠如したために宗教指導者は強気を見せなければならない」ような状態になっているようです。

 

そして結論部分として小林氏は次のように書いています。

 

「明治憲法体制は昭和期に入ると、一種の機能不全に陥り始めていた。その分権的性格を克服し、統一的な国家意思を形成するためには、天皇による親政を行うか、総理大臣に体制統合能力を付与するかのいずれかであった。」

 

この提案は文字通りに現在のイランに対してのアドバイスにもなるわけですが、私にはそれを実現させる方法が全くわからないのです。

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