近年どのようなことが明治憲法についてわかっているのか知りたくて小林道彦氏の『近代日本の軍部』という本を読んでみました。

 

この本は明治維新以降の政軍関係を明治憲法を中心に事細かく調べていますが、結論部分が大変よくまとまっていたので少し引用したいと思います。明治憲法に酷似したイランの体制の行方を考えるのにも参考になると思います。

 

小林氏は伊藤博文が「明治天皇のカリスマ的権威と元老の存在に依拠した明治憲法体制に一抹の危うさを感じていた」と書いています。

 

そして実際に元老という調整機能を失った日本は統一した国策を作れなくなっていったのはビスマルクを失った後の帝政ドイツと一緒でした。

 

明治天皇にあったカリスマも明治、大正、昭和と時代が変遷するにつれて薄れていき、「昭和天皇の政治的権威は揺らいでおり、元老西園寺公望は天皇が政治の第一線に出ることが、かえって天皇の権威に傷を付けることになるのではないかと考え、大権の発動による危機の収拾にはきわめて消極的であった」と書かれています。

 

ここの部分は現在のイランとは違いますが、イランの場合は元首が政治の前面に出てしまったために暴走する軍部に寄り添わなくてはならなくなり、パトリカラコスがいうように「体制の信頼性が欠如したために宗教指導者は強気を見せなければならない」ような状態になっているようです。

 

そして結論部分として小林氏は次のように書いています。

 

「明治憲法体制は昭和期に入ると、一種の機能不全に陥り始めていた。その分権的性格を克服し、統一的な国家意思を形成するためには、天皇による親政を行うか、総理大臣に体制統合能力を付与するかのいずれかであった。」

 

この提案は文字通りに現在のイランに対してのアドバイスにもなるわけですが、私にはそれを実現させる方法が全くわからないのです。

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