中野さんは『世界を戦争に導くグローバリズム』の中で、E.H.カーの古典だけでなく、アメリカで発達した構造的リアリズム(structural realism)という学問も取り上げています。

この学問を簡単に紹介してみましょう。

国内の場合政府が存在し、法に違反した場合に強制的に罰が執行されますが、国際社会にはそのような執行機関がありません。これをanarchy(無政府状態)と表現しています。

各国はこのような国際社会で生き残る(survive)することを目標にします。

そこでは誰もが相対的な国力(relative-power)の向上に務め、地域的な覇権(hegemony)を獲得しようと努力します。

学者によっていろいろですが、共通するところを注目すればこのような論理の組み立てになっています。

私もリアリズムはけっこう好みで、現在でもワルト教授の議論などを追っかけています。

ただ、残念ながらこの理論も完璧ではありません。

なぜならリアリズムを専門とする学者誰一人ソビエト連邦が崩壊することを予測できなかったからです。

ゴルバチョフは行き詰まったソビエト共産党を立て直すためにペレストロイカ(改革)を行おうとしましたが、逆にソビエト連邦を転覆させてしまったのです。

このようなことはリアリズムの条件に全く入っていませんでした。

中国に関しても同じような問題を抱えています。

習近平が何よりも大切に考えているのは「中国共産党を維持する」ことであって、地域の覇権を握ることは副次的なことにすぎません。

確かに尖閣を巡って日本に勝利することは、共産党政権を維持する上で好都合ですが、負けてしまえば中国共産党を崩壊させる原因にもなりかねません。

かなりのハイリスクなのです。

中国の国民党がなぜ大陸から追放されたのかを最もよく知るのが共産党です。

その中国共産党が本当に日本に対して戦争を仕掛けるでしょうか。

中国にとっても日本と戦争することはコストが高いのです。

そこで私は日本がある程度の防衛力を高めていけば中国との戦争はそれ程気にしなくて良いと思っています。