日経ビジネスオンラインで鈴置高史さんが韓国で起こったアメリカ大使に対するテロリズムについて分析されています。

この中で、今回のテロを1964年に日本で起きたライシャワー大使に対するテロと比較している部分があります。

私は、今回のテロとライシャワー大使の件についての最も重要な差は、その事件の起きた「タイミング」にあると考えます。

ライシャワー大使の事件が起きた時は、米ソ冷戦の真っ只中でした。

おまけにこの事件が起きた1964年は、時のジョンソン政権がベトナム戦争を拡大させている最中でした。

当時まだ沖縄の返還はなされてませんでしたが、在日米軍基地はベトナム戦争のためにフル活動していました。

このような時に日本でアメリカ大使を襲撃するという事件が起こったわけですが、今回の韓国で起こったテロとの国際環境を比べれば、なんという絶妙な時期だったかとの感慨を禁じ得ません。

いくらアメリカが日本でのテロに怒っていたとしても、冷戦とベトナム戦争を遂行していくうえで、どうしても日本は必要でした。

「ジョンソン(Lyndon Johnson)大統領も『両国間の深い友好と理解には全く関係ない』との返書を、時差があるとはいえ何と事件当日の24日に送っています。」と鈴置さんは記しています。

ところが今回の韓国でのテロがあった時期は、当然冷戦は終わっています。その上、韓国はアメリカの同盟国であったはずですが、現在のパク・クネ政権が米中を外交的に天秤にかけている最中に起こったのです。

さらにこのテロが起こる数日前には例のシャーマン国務次官の「民族感情は悪用されかねず、政治指導者が過去の敵を非難し、安っぽい拍手を受けることは容易なことだ。しかし、そんな挑発は発展ではなくマヒをもたらす」という発言があったばかりでした。

このタイミングの悪さという観点からみた場合、同じことは伊藤博文を暗殺した安重根にもいえることです。

安重根は日本が日露戦争に勝利し、アジアでナンバー・ワンの地位を軍事的に築いた後に明治の元勲の一人である伊藤を殺してしまったのです。

大韓帝国にとって最悪のタイミングのテロであったことは確かでしょう。

といことで、今回の韓国でのテロも異常なタイミングの悪さという点では共通しているのです。
前回予告した通り、峯村健司さんの『13億分の1の男』を読んだ感想です。

今回は主に2013年6月にアメリカで開かれた米中首脳会談で何が話し合われたのかを検討してみたいと思います。

私は以前からオバマ大統領の対中観に一抹の不安を抱いてきました。

具体的にいえば同じ民主党出身の大統領であるフランクリン・ルーズベルトと似たようなものになるのではないかという危惧です。

ルーズベルト大統領は「4人の警察官」という概念を提唱しました。その中身はハミルトン・フィッシュの『ルーズベルトの開戦責任』によれば次のようなものでした。

「中国は極東地域を、アメリカが太平洋地域をとり、イギリスとロシアがヨーロッパとアフリカを分割する。英国が世界に植民地を確保していることに鑑みると、ロシアがヨーロッパのほとんどを勢力下におくだろう。」

もちろん現実には、大英帝国が崩壊し、中国の国民党も大陸から放逐されてこのようなことは起こらなかったのですが、日本からみるとこのような構想はぞっとするものがあります。

オバマが大統領になった時もアメリカの一部では「チャイメリカ」だの「G2」などの言葉が囁かれ、ルーズベルト大統領のように「中国は極東地域を、アメリカが太平洋地域をとる」という状況が再現される可能性があったのです。

そこで峯村さんの本に戻ってみます。2013年の米中首脳会談で習近平中国国家主席はオバマ大統領にむかって、「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は我が国の固有の領土で『核心的利益』だ。いかなる第3者の介入も許さない」と語り始めたのです。

また「日本の一部勢力は歴史の流れを逆行させようとたくらんでいるが、我々は戦後の国際秩序を守り抜く覚悟だ」などと70分間も習近平は一方的にしゃべったためにさしものオバマ大統領も「日本は同盟国で、友人で、民主主義国だ」と返答せざるをえなかったそうです。

オバマ大統領が日本との首脳会談の時間などと比較してはるかに中国に対して気を使っていることは確かですが、習近平は「核心的利益」を前面に出して決してアメリカに対して妥協することを拒否したのでした。

峯村さんの本であるアメリカの高官が「中国は自分達の『核心的利益』ばかりにこだわり過ぎだ。もっと共通の利益にも目を向けるべきだ」と批判したことは納得できます。

ただ日本としては習近平が「核心的利益」にこだわったために米中共同体やG2とかが出現しない状態になったのは本当にラッキーでした。
峯村健司さんが書いた『13億分の1の男』という本を読みました。

習近平国家主席がどのようにして胡錦濤や江沢民などとの権力闘争うに打ち勝ってきたかを内部情報を用いてヴィヴィッドに描いています。

一番の収穫は薄熙来や周永康の逮捕の裏に「クーデター」騒ぎがあったことをこの本を読んで初めて知りました。

自分が普段疑問に思っていたことについてもその疑問がだいぶ溶けてきた部分もあるので次回からは少しこの本を用いてブログに書いていきたいと思っています。

久し振りに買ってよかったと思える中国本でした。