https://m.youtube.com/watch?v=OHVPz4dY3zE

奥山さんの番組でアメリカにおいて中国共産党を潰すというコンセンサスがエリートの中で左右を問わずできたことをルトワックが語っていたそうです。

 

なぜそのようなコンセンサスができた理由ですが、それについては私が以前にこのブログで書いたようにこれまでさんざん中国を甘やかしてきたアメリカの中国に対する「理想主義」が破綻して、それが絶望に変わってしまったからだと思います。

 

以前のアメリカが蒋介石の国民党を応援し、ルーズベルト大統領は中国をアジアの大国にするとまで考えていたのに、それが最後には幻滅に変わり、アメリカはトルーマン政権になって国民党を見捨ててしまいました。

 

中国で共産党政権が誕生した後もアメリカはなかなか政権を認めようとはしませんでした。そのことを表すエピソードにアメリカの国務長官のダレスが国際会議で周恩来と出会ったのですが、ダレスは握手をせずに全く無視をしていたことがあります。

 

ここでダレスを持ち出した理由ですが、この人は敬虔なキリスト教徒であり、その外交的考えが現在のアメリカの対中外交をハドソン研究所で行ったペンス副大統領と似ていると思ったからです。

 

https://m.youtube.com/watch?v=mYAHPPXmcts

ペンス副大統領の対中演説

 

ではアメリカがかける激しい対中圧力によって習近平政権はどのように出てくるのでしょうか?

 

以前から石平さんなどは尖閣諸島などの対外的な強硬政策を用いてくるだろうと予想されていましたが、私の現在の感じでは、国内の権力闘争が激化する文化大革命的なものになるのではないかと考えています。

 

ミアシャイマーやワルトなどの欧米のリアリストはこれから10年や20年かけてアメリカと中国との大国間の競争が続くと予想していますが、中国で共産党が崩壊するのはそんなに時間はかからないでしょう。

ネオコンのロバート・ケーガンがトランプ大統領になってせっかくアメリカが作ったリベラルな世界秩序を破壊してしまうのではないかと憂える文章をポリティコに書いています。

 

https://www.politico.com/magazine/story/2018/09/28/donald-trump-unga-liberal-world-order-220738

 

ケーガンの主張するアメリカが作ったリベラルな世界秩序とはどういうものなのでしょうか。

 

この記事の中から私が最も重要だと感じた文章がこれです。

 

The central element was the transformation of the two great originators of conflict, the autocracies of Germany and Japan, into peaceful, democratic nations. Through force and coercion, but also with financial support and political encouragement, they were led to abandon the geopolitical ambitions that had produced two world wars and adopt instead ambitions for peace, greater prosperity and social welfare.

 

「中心の要素は紛争を起こす原因となった独裁のドイツと日本の平和的な民主主義への転換だった。アメリカの力と強制で、しかし財政的な援助と政治的な勇気づけでこの2カ国は2つの戦争を産む原因となった地政学的な野望を捨て去り、代わりに平和と繁栄と社会福祉の野望を採用することになった。」

 

私は以前にネオコンの重要人物であるポール・ウォルホヴィッツのインタビューを読んだことがあるのですが、ケーガンと同じように第2次世界大戦後の日本とドイツのあり方を評価していました。

 

つまり、ネオコン外交の思想の根幹に、アメリカの軍事力と理念で日本とドイツを民主化し平和的な勢力に置き換えることができたというものが確固としてあるわけです。

 

ところがこの記事の中でケーガンは自分たちが引き起こしたイラク戦争について一切の言及を避けています。

 

これは非常に奇妙なことです。イラク戦争の失敗が果てしない中東の無秩序を生む契機となり、アメリカ国民がトランプ大統領の行動を支持する一要素になっていることは確実なのですから。

 

ケーガンがこの記事でまったくイラク戦争について語らないことでますます私は確信しました。ネオコンの本音としてはイラク戦争で本当にイラクを日本やドイツのようにしたかったのです。

 

ブッシュ(息子)もイラク戦争を始める前に盛んに日本やドイツのことを取り上げていたのです。

 

イラクを民主化させ親米国家にできれば、駐留米軍を置いて隣の敵対するイランに対して睨みを効かせることができるし、さらに民主化したイラクがアメリカと同盟を組めば、アメリカと近いイスラエルを安心させることもできます。

 

おまけにサウジアラビアというイランよりも民主主義に程遠い国との同盟関係を薄めることもできます。

 

つまり日本やドイツのように民主化された親米国家を通じてヨーロッパとアジアをコントロールしたように民主化して親米国家となったイラクを通じて中東をコントロールできるとネオコンは考えたのでしょう。

 

ところが国際法に違反したイラク戦争は見事に失敗し、挙句の果てにトランプ大統領までも生み出してしまい、そのトランプ大統領が内心ではNATOや日米安保が本当にアメリカにとって必要ではないと思っているのではないかとの疑念を抱かれているのです。

 

結局、ケーガンの愛するリベラルな世界秩序を破壊しようとしているものは自分たちが始めたイラク戦争に多大な責任があるので、全くの自業自得なのでした。

 

エドワード・ルトワック氏が書いた『日本 4.0』という本を読んだので、その感想を書いてみます。

 

ルトワックは日本は高度な戦略文化を持っていると記しています。

 

「これは この国の四百年の歴史を眺めてみればわかる 。日本人は つねにひとつの完全な戦略的システムを作り上げてきた 。しかも 、そのシステムが危機に直面するたびに 、新たに包括的なシステムに更新してきたのである 。これは世界でもあまり例を見ないことだ 。」

 

徳川家康が江戸幕府を作り、国内の内戦を徹底的に封じ込めたのが日本1.0。

 

黒船の到来で危機を感じ、日本国家の総合的な近代化を果たした日本2.0。

 

アメリカとの戦争に負けて、豊かさを求めた日本3.0。

 

しかし彼によれば現在の戦後体制は賞味期限が切れており、全く新しいシステムが必要になっているのではないかとの疑問を呈しています。

 

「それは 『同盟 』を有効に使いつつ 、目の前の危機にすばやく 、実践的に対応しうる自前のシステムである 。」

 

現在の日本の平和憲法体制においては、北朝鮮の核問題や中国との尖閣諸島の問題に有効な処方箋を書くことができないことが日本の問題点だとルトワックは感じているのです。

 

私は以前にこのブログでジョージ・フリードマンが書いた『日本の例外主義』という論文を翻訳してみました。

 

https://ameblo.jp/mintelligence/entry-12291124118.html

 

フリードマンも日本は対外的な環境が変化するにつれて国内の政治体制をガラリと変えてきたと書いており、黒船が来航した後の明治維新やアメリカとの戦争に負けた後の平和憲法体制などへの変化を指摘しています。

 

ルトワックとフリードマンの一番の違いは、ルトワックが日米同盟を組んだままで日本が新しいシステムに返還できると思っているみたいですが、フリードマンの方は、これまでの日本の変化はアメリカの行動がもたらしたもので、次のシステム変更もアメリカの行動によるものではないかと書いている点です。

 

「アメリカの利益が変化したり、日和ったり、また敵対的になれば日本は後悔しながらもその進路を変えるだろう。それは工業化以来の国家の統一性を保ったままの変化になるであろう。」

 

つまりルトワックの観点からすると現在の安倍総理が進める、日米同盟を維持したままで憲法の改正が成功するというイメージにつながるでしょうし、フリードマンの見方からすると、日本のシステム変更はアメリカの態度変化によるもので、彼は具体的にそれを書いていませんが、私はアメリカによる日米安保破棄ではないかと思っています。

 

私がルトワックの『日本4.0』でもっとも納得がいかないことは、この点で現在のアメリカとの同盟を組んでいる状態で本当に日本のシステムを根本的に変えれるのだろうかという疑問なのです。