ネオコンのロバート・ケーガンがトランプ大統領になってせっかくアメリカが作ったリベラルな世界秩序を破壊してしまうのではないかと憂える文章をポリティコに書いています。

 

https://www.politico.com/magazine/story/2018/09/28/donald-trump-unga-liberal-world-order-220738

 

ケーガンの主張するアメリカが作ったリベラルな世界秩序とはどういうものなのでしょうか。

 

この記事の中から私が最も重要だと感じた文章がこれです。

 

The central element was the transformation of the two great originators of conflict, the autocracies of Germany and Japan, into peaceful, democratic nations. Through force and coercion, but also with financial support and political encouragement, they were led to abandon the geopolitical ambitions that had produced two world wars and adopt instead ambitions for peace, greater prosperity and social welfare.

 

「中心の要素は紛争を起こす原因となった独裁のドイツと日本の平和的な民主主義への転換だった。アメリカの力と強制で、しかし財政的な援助と政治的な勇気づけでこの2カ国は2つの戦争を産む原因となった地政学的な野望を捨て去り、代わりに平和と繁栄と社会福祉の野望を採用することになった。」

 

私は以前にネオコンの重要人物であるポール・ウォルホヴィッツのインタビューを読んだことがあるのですが、ケーガンと同じように第2次世界大戦後の日本とドイツのあり方を評価していました。

 

つまり、ネオコン外交の思想の根幹に、アメリカの軍事力と理念で日本とドイツを民主化し平和的な勢力に置き換えることができたというものが確固としてあるわけです。

 

ところがこの記事の中でケーガンは自分たちが引き起こしたイラク戦争について一切の言及を避けています。

 

これは非常に奇妙なことです。イラク戦争の失敗が果てしない中東の無秩序を生む契機となり、アメリカ国民がトランプ大統領の行動を支持する一要素になっていることは確実なのですから。

 

ケーガンがこの記事でまったくイラク戦争について語らないことでますます私は確信しました。ネオコンの本音としてはイラク戦争で本当にイラクを日本やドイツのようにしたかったのです。

 

ブッシュ(息子)もイラク戦争を始める前に盛んに日本やドイツのことを取り上げていたのです。

 

イラクを民主化させ親米国家にできれば、駐留米軍を置いて隣の敵対するイランに対して睨みを効かせることができるし、さらに民主化したイラクがアメリカと同盟を組めば、アメリカと近いイスラエルを安心させることもできます。

 

おまけにサウジアラビアというイランよりも民主主義に程遠い国との同盟関係を薄めることもできます。

 

つまり日本やドイツのように民主化された親米国家を通じてヨーロッパとアジアをコントロールしたように民主化して親米国家となったイラクを通じて中東をコントロールできるとネオコンは考えたのでしょう。

 

ところが国際法に違反したイラク戦争は見事に失敗し、挙句の果てにトランプ大統領までも生み出してしまい、そのトランプ大統領が内心ではNATOや日米安保が本当にアメリカにとって必要ではないと思っているのではないかとの疑念を抱かれているのです。

 

結局、ケーガンの愛するリベラルな世界秩序を破壊しようとしているものは自分たちが始めたイラク戦争に多大な責任があるので、全くの自業自得なのでした。