ブルブル鳥の仲間たち
Bulbul(アラビア鵯、アラビア鶯)3
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ブルブルの仲間たち Bulbulと名の付く鳥5種
Common bulbul アフリカブルブルal-Bulbul al-Afriiqii、
Bulbul Ahmar al-Sharj (尻赤ブルブル) Red-vented Bulbul
アカヒゲブルブル Bulbul Ahmar al-Shaarib
赤ブルブルBulbul Ahmar Rufous Bush Robin アカヒタキ(赤鶲)
俗称シャウラ=サソリの尾 シャウラ(サソリの尾)旅立つを見れば、冬来たる印
麦ブルブル ブルブル・シャイールBulbul al-Sha”iir
ブルブルの仲間たち
現在ではブルブル属は、32種が含まれている。そのうちアラビア半島を生息地としてポピュラーなのは以下の7種である。
• Common bulbul (Pycnonotus barbatus)
• Yellow-vented bulbul (Pycnonotus xanthopygos )
• White-spectacled bulbul (Pycnonotus )
• Red-whiskered bulbul (Pycnonotus jocosus)
• Red-vented bulbul (Pycnonotus cafer)
• Somali bulbul (Pycnonotus somaliensis)S
• Cape bulbul (Pycnonotus capensis
• African red-eyed bulbul (Pycnonotus nigricans)
上記7種の内、前々回のブログではアラブ世界でブルブルの代表格二種を紹介しておいた。
一つは上の表の2番目のYellow-vented bulbul であり、本稿では頭黒ブルブル、アラビアヒヨドリ(アラビア鵯)、アラビアウグイス(アラビア鶯)として記した。英名Black-headed bulbul、アラビア名Bulbul al-aswad al-ra’s、またシリアブルブルBulbul al- Shaamiiでもあった。
二つは上の表の三番目に当たるWhite-spectacled bulbul (Pycnonotus xanthopygos)であり、本稿では頬白ブルブル、英名White-cheeked Bulbul、アラビア名Bulbul Abyad al-wajnataynまたは Bulbul Abyad al-Khadd、いずれも「頬白ブルブル」の義。またイラクブルブルBulbul ”Iraaqiiとの名称でもあった。
今回は上記ブルブル属の内3種を紹介する。j上記の1,4,5 である。
1普通ブルブルal-bulbul、アラブ世界では「アフリカブルブル」al-Bulbul al-Afriiqii、
2はアカヒゲ(赤髭)ブルブルBulbul Ahmar al-Shaaribであり、
3はシリアカ(尻赤)ブルブルRed-vented bulbul である。
そしてブルブル属ではないのに、ブルブルの名称を与えられている鳥類2種を紹介しておく。ブルブルの存在自体が他の鳥類に与えている影響、民俗概念を表してもいよう。
他にブルブルの名称を持つ2種も紹介しておいた。
4は「赤ブルブル」Bulbul Ahmarとの名称であり、アカヒタキ(赤鶲)とされる。
5は「麦ブルブル」Bulbul al-Sha”iirとの名称であり、ホオジロ属とされている。
1普通ブルブルCommon bulbul アフリカブルブル
上の表の最初に記してあるCommon bulbul である。
Common bulbul 、和訳してしまうと「普通ブルブル」となってしまう。和訳の「普通ブルブル」では違和感があるので、この亜種については、アフリカ地域に多いことから「アフリカブルブル」al-Bulbul al-Afriiqii、の名称として、論を進めることにする。
そもそもブルブルbulbulとはアラビア語であり、すでに前ブログで観たように、古来から知られた鳥でもあるし、西欧のナイチンゲールやわが国の鶯同様アラブ世界でもいろいろな文化事象としても馴染みである。アラブ世界では普通のブルブルbulbulとして「頭黒ブルブル・シリアブルブル」と「頬白ブルブル・イラクブルブル」とを念頭に置いて論じてきた。これらを総称してCommon bulbulである、と理解して論じてきた。
ところが西欧中心の鳥類学ではアフリカ中心に生息するものを主座に据え、少し異なったブルブル達の分類がなされている。それが上の分類表に現れている。北アフリカに多く生息するブルブルbulbulたちを中心においてしまったわけである。アラブ世界の文化に疎く、植民地的視点、丸出しの結果となった。それをCommon bulbul 普通ブルブルとしている。学名もPycnonotus barbatusとしており、バルバリアすなわち北アフリカから南部に渡って生息するブルブル、こちらの方を主流、普通と捉えてしまっている。Common bulbulと名付けている限りにおいては、この種についてここで述べておかねばなるまい。
Common bulbulはアラブ世界にもアラビア半島の西岸、紅海に面した地域やエジプトからマグリブ諸国にも生息している。恐らくアフリカ西岸やマグリブ諸国が西欧の植民地化された時期に、西欧の鳥類学者も探査に入り、鳥の新種を見つけては、様々に鳥名をつけたのであろう。植民地行政の庇護のもと、マグリブ地方の探査に当たった鳥類学者は鳴鳥ブルブルを見るのは初めてであったろうし、現地ではきわめて普通に庭園や樹林に見られたので、現地人の呼び名ブルブルbulbulを採り入れて種名として、他にもブルブル類が散見できたので、「普通ブルブル」Common Bulbul としたのであろう。
実際、植民地化されたマグレブの、鳥好きで知られるチュニジアやアルジェリア、モロッコにはこの種が多い。
アラビア半島を中心としたマシュリク(東アラブ世界)ではあくまで普通のブルブルは、「頭黒ブルブル・シリアブルブル」と「頬白ブルブル・イラクブルブル」であることを断わっておく。
アラブ世界全域に視野を広げてみれば、ここでいう「普通ブルブル」Common Bulbul は「頭黒ブルブル」が「シリアブルブル」と、そして「頬白ブルブル」が「イラクブルブル」と地域名がかかわっているように、その生息地から「アフリカブルブル」al-Bulbul al-Afriiqiiとして通っていた。決してアラブ世界のCommon bulbulであったわけではない。マグリブ地域はアフリカの地中海岸およびサハラ地域を開拓した大きな地域名としてイフリーキッヤal-Ifriiwiyyah と呼ばれ、南に開拓するほどその地域名の範囲が広がった。マグリブだけでなくもっと南のサーヘル地帯にいるボルボルも「アフリカブルブル」との名称を共有していた。
「アフリカブルブル」Common Bulbulにも亜種が多い。サハラ砂漠の南辺、サーヘル地帯から地中海南岸、紅海にかけて、北東、北部、西部、中央アフリカの、アフリカを主舞台とするボルボルである。
左図、Common bulbul (Pycnonotus barbatus)、アラビア語ではBulbul。その下に顔を出している色彩豊かな鳥はBluethroatの雄(中央)と雌(左) Egypt p.35、右図はインターネット画像より。
「普通ブルブル」Common Bulbul は、これから「アフリカブルブル」al-Bulbul al-Afriiqiiと呼ぶとして、学名はをPycnonotus barbatusとされる。種小名barbatusからも「アフリカブルブル」の方が正統性を持とう。
barnatusは地名で北アフリカを広くバルバリアと呼ばれたところからの命名である。この亜種には五種あり、「普通ブルブル」Common Bulbulとの名称のごとく、この種を基準として他の4種が存在するため、亜種としての学名がPycnonotus barbatus barbatusとされ、他の亜種は学名を三つ目の種小亜種barbatusに代わって記される。
ソマリアに住む「普通ブルブル」Common Bulbulは学名をPycnonotus barbatus、またはPycnonotus barbatus somaliensisとされている。
なお英名はCommon bulbul のほかに、地域の名を付したBarbary bulbul とか North-west African garden bulbulとかとの名称もある。
アラブ世界ではただ単にBulbulブルブルとだけの名称としている場合もあるが、それは西欧のCommon Bulbulに準じて名付けたものであろう。古来からはその生息地からの名称al-Bulbul al-Afriiqii「アフリカブルブル」との名称であった。
「アフリカブルブル」al-Bulbul al-Afriiqiiは全長約18cm。エジプトの種は平均19cmとされるから少し大きいか。頭部が「頭黒ブルブル」や「頬白ブルブル」と異なり、茶色の頭をしており、「頭茶ブルブル」と称してもよい。しかし茶色でも変異はあり、黄色に近いものから、黒に近いものまである。エジプトの種はズグロブルブルに近い。顔面はより濃い暗い色になっている。目には暗いアイリングがあるが、顔全体が暗いので目立たず容易に見えない。嘴はかなり短くて薄く、上嘴を覆うように少し下がっている。
上面・背面は薄茶色で、尾に近づくほど色は濃くなる。翼も濃い色である。
下面・腹部は首や胸の上部に薄茶色のものもあるが、多くは淡い白色であり、尻にはボルボルの種に多い有彩色にはなっていない。
嘴、脚、趾は黒褐色であり、長い尾は綺麗に筒状の尾筒となっている。
雌は雄とほとんど同じで、淡い色となっている。
「アフリカブルブル」al-Bulbul al-Afriiqiiは森林、海岸の茂み、川の茂み、畑地、ワジ間などで生息する。庭園、公園などでも散見される。
「アフリカブルブル」の生態については、通常、ペアまたは小グループで生活する。小枝の上、藪の樹上などに止っているのがよく見かけられる。他のブルブル同様良く鳴き声を立て活発で、きれいな声で囀る時もあれば、耳障りになるほど騒がしく鳴くときもある。
「アフリカブルブル」は乾燥地だけでなく多少湿った地でも生活域を確保している。繁殖もまた巣作りから始まるが、特別な繁殖期は持たず、年間を通して巣を作る。地中海式気候が及ぶところでは冬に雨が降り、その時期が繁殖期となる。
巣は高さ数メートルの低木の枝の分岐するところを利用する。湿気対策もあり、かなり細い枝を多く組み合わせ、羽毛や綿毛なども用いて堅く、厚い壁をカップ状に作る。
産卵期には雌が2個か3個の卵が産む。2週間くらいの抱卵期のあと、孵卵して雛となるが、よくカッコウによって托卵されることがある。
ソマリアの亜種はアラビア海に面した南部にも、また紅海に面した北部にもごく普通に見られる。適応力があり、海岸線に沿った地域から高度1800mの山岳地帯まで生息域を持つ。個々には「頭黒ブルブル」もおり共生しており、特に北部に多く見られるソマリア種は繁殖期が2回あり、春季から夏季にかけて2-3か月かけて行われる。
Somalia p.232、Egypt 34-35、”Azziy 52,241,
2 シリアカ(尻赤)ブルブルBulbul Ahmar al-Sharj
シリアカ(尻赤)ブルブルの図2点。尻毛が目立った赤い色をして、尻赤となっている。ズグロブルブルに似たもの、ホウジョロブルブルに似たものも混在する。あるいは混血種かもしれない。いずれもインターネット画像より。
シリアカ(尻赤)ブルブルは分類学上はスズメ目ヒヨドリ科シロガシラ属に分類される鳥とされる。
ズグロブルブルがYellow-ventedとの名称で「尻黄」であったのに対して、同じブルブル属ながらこの種はシリアカ(尻赤)Red-ventedなのである。
我が国ではシリアカヒヨドリ(尻赤鵯)と訳され紹介されている。世界的にはヒヨドリよりブルブルの鳥名で知られており、本ブログでもシリアカブルブルで通す。
シリアカブルブルは学名はPyenonotus cafer、種小名caferは新ラテン語で「アフリカの南、南アフリカ」の意味。またはインドにある地域名、地名とされる説もある。
英名 Red-vented Bulbulとの名称で名が通っている。別に「スス頭ブルブル」Sooty-headed Bulbulとの名称もある。
アラブ世界ではブルブル・アフマル・シャルジュ Bulbul Ahmar al-Sharj (尻赤ブルブル)との名称である。
分布はインド、東南アジア中心で、温帯や熱帯の、乾燥地では適応力がある。パキスタン、インド、中国南部、東南アジアが原産地とされる。インド人の移住や印僑として熱帯や温暖な世界各地に運ばれ、広がっていった。
アラブ世界のシリアカブルブルはインドから渡って来たものと、インド人がペットとして持ち込んだものがある。湾岸諸国には外来種として定着している。UAEなどでは外来種の留鳥として年間を通してみられる。アラビア湾・インド洋の外海に面する地域より、ドバイやアブダビなどのあるペルシャ湾岸の方に多い。ホウジロブルブルと競合している。また両者の混合種も見られるようになった。オマーンの方ではペルシャ湾に突き出たムサンダム半島から沿岸に沿った樹林や庭園で散見される。
また東地中海、マグリブ諸国にも生息が確認されている繁殖力旺盛なブルブル属である。また世界の多くの地域で導入され、アメリカ大陸、南部アフリカにも生息している。農作物の食害と有毒植物の拡散、病原菌の媒介などで世界最悪の外来種100種に含まれている不名誉も持っている。
シリアカブルブルには8亜種がおり、インドや東南アジアに多い。
全長19-20cm。
全体的に煤色から暗茶色で、頭部とくちばしは黒色、虹彩は茶色。尻と下尾筒が赤色になるのが特徴。黒い目立つ冠羽がある。
シリアカブルブルは頭部に角ばった冠を戴いていることによって容易に識別される。またその頭部の色が煤色から暗褐色、黒褐色である。またホウジロブルブルと似た頬が白い亜種もいる。上面・背面はうろこ状のパターンを持つ煤色から暗褐色である。尻は白色で先端に特色ある赤毛red-ventを持つ。尾は長く黒い、内側は白色をなす。
雌雄の色や体形にはほとんど違いがないが、雌の方が淡い色をしている。幼鳥も雌に似て淡い色をしている。
生態であるが乾燥地の藪類や開けた森林、平野、畑を好んで生息する。鬱蒼とした森林では適地とせずめったに見られない。二次林、果樹園、都市部の公園に生息し、比較的よく観察できる。またその鳴き声でそれと分かる。乾燥低地領域を好む。穀物や果実を荒らし、また無用な、有毒な種を糞としてまき散らす外来種の害鳥として駆除される傾向にある。
シリアカブルブルは、雑食性で、果物、花びら、昆虫、時折カエルなどの両生類やヤモリなどの爬虫類なども捕食する。
営巣においては、2-3mの高さで茂みの中にお椀状の巣をつくるが、市街地では建物の安全な空洞に巣を作るも注目されている。空き家や廃屋、廃車、小屋の荷物棚といった人工物までも利用する。
巣は小さな乾燥した小枝と羽毛、綿毛などで作られた小さな平らな椀状をしている。人家近くだとカラスと同じように、時にはハンガーなどの切れ端の金属線を利用する。
繁殖活動は多くの場合、6月から9月までである。UAEでは5月から7月とされる。産卵はおよそ2個または3個が普通。卵は淡いピンク色で、より濃い赤の斑点がある。1年で複数の産卵期を持つ個体もいる。低木などに繁殖は多い時には年4回行われる。
卵は約14日後に孵化する。雄も抱卵、孵化、雛の世話に協力する。
シリアカブルブルの巣はホトトギスやカッコーの托卵に狙われる種でもある。そういえばシリアカブルブルの鳴き声は、聞きなしでホーケキョ系が主であるが、トッキョキョカキョク系もある。
鳴き声はジンジャービールとして聞きなしがなされているが、ピックとの短音連続も数多く聞かれる。その警戒音は他の鳥とも呼応して、互恵的に共同警戒に当たる。
囀り鳴きは通常いくつかの定型を持つ。年間を通して同じ鳴き声であるが、しかし子細な結果から、巣の中、物乞いの時、単に挨拶、飛行時、そして2種類の警戒音を出していることが明らかになっている。
19世紀のインドでは、一般人たちがシリアカブルブルを鳥籠に飼育しており、好事家たちは雄を選別して闘争的に仕立て上げ、闘鶏=闘鳥の習慣をもつ。特にアッサム州でのシリアカブルブルの闘鶏はよく知られている。
UAE169、Watching213、
3 アカヒゲ(赤髭)ボルボル Bulbul Ahmar al-Shaarib
アカヒゲブルブル Pycnonotus jocosus、 Red-whiskered bulbul、Bulbul Ahmar al-Shaaribの図2点。尖った冠羽に黒頭巾、目尻のわきにひげのように伸びた赤い剛毛が目立つ。いづれもWikipedia 画像より
Pyenonotus jocosus BulbulAhmar al-Shaarib Red-whiskered bulbul
アカヒゲブルブルの学名は、Pycnonotus jocosusであり、種名Pycnonotusとは繰り返すが合成語で、ギリシャ語の puknos "thick、compact"と -nōtos "-backed"であり、「背が厚い、羽毛が膨れたもの」の意味である。また種小名 jocosus はラテン語の iocus で英語の "joke"ジョークの語源である。ジョークは冗談、その鳴き声の冗舌、けたたましさ、流暢性、多様性から由来したものか。
英名はRed-whiskered bulbul(赤いひげをしたブルブル)、
アラブ世界ではBulbul Ahmar al-Shaarib(ひげの赤いブルブル)。
赤ヒゲブルブルは、広い空き地を持つ森林地帯、茂みや低木、農地などに生息する。新大陸のアメリカやオーストラリアには19世紀に移入され、広く生息している。
赤ひげブルブルの生息地はアラビア半島から東、インドや東南アジア、中国南部にまで及ぶ。
それ故、東方に行けば行くほど亜種は多くなる。上のCommon bulbul とは生息域がアラビア半島をはさんで東西に分かれる種ということになる。
オマーンでは冬季によく見られる。UAEや湾岸諸国ではインドからの渡りも見られる。また営巣も確認されている。
赤ひげブルブルの全長は約20cm。頭部は特徴的で、ホウジロブルブルと似た頭黒で頬が白いが、ヒバリのように高い尖った黒い冠をかぶっている。また「赤髭」と言われるように、眼の横下にはヒゲまたはそれに類するような赤いひげ状のパッチがある。この特徴をとらえて赤ヒゲブルブルRed-whiskered bulbulと名付けられたのであろう。
上面・背面は灰褐色をしており、各翼羽の端には灰色の縁取りがある。
下面・腹部は顎から下は白く、尻には顕著な赤羽が集まる。
尾は長く上面は灰褐色であるが、下面は黒褐色であるが、先端には白羽がある。
幼児期には目の後ろに赤いパッチ(アカヒゲ)を欠き、尻のあたりは淡いオレンジ色。
赤ひげブルブルは、果物、時には人類に有毒な植物の果実をも食べる。花の蜜も吸い、また
昆虫類を捕食する。
鳴き方は大きな声で喚起的な囀りであり、刺激的で呼び出すように聞こえ、さまざまな聞きなしがなされている。興奮するとその鳴き声はもっとはげしく鋭くなる。特に朝に囀りが多く見られる。
繁殖期は長期に及び南部亜熱帯では12月から5月、北部温暖地では3月から10月にピークを迎える。産卵が2回に及ぶ場合もある。雄の求愛行動は、頭を下げ、尾を広げ、翼を垂らす。巣はカップ状で、茂みや茅葺きの壁や小さな木の上に作られる。細かい小枝、根、草を織り、樹皮や羽毛などで作られる。産卵は通常2~3個の卵からなる。
成鳥は、特に雌は擬態を行う。近づく捕食者を巣から遠ざけるために怪我をしているような動作をして相手を巣から遠ざける。卵は薄紫の地に、斑点は広く広がる。卵は長さ21mm、幅16mmくらいである。卵は孵化するのに12日かかる。雄も雛の養育に加わる。
若い鳥は、成熟するにつれて果物や果実に置き換えられる毛虫や昆虫に餌を与えられます。雛は産毛・綿毛無しで生まれる(翼にはある)。
雄のテリトリーは広く、繁殖期に約3,000平方メートルの領土を守ると言われる。彼らは100羽以上の鳥の緩い群れを作り、共同でねぐらとすることもある。
インドの一部ではかつて人気の飼育の鳥であった。これらの鳥は原地人の間で大きな要求にかかっており、恐れ知らずの性質を持ち、簡単に埋め立てられています。彼らは手に座るように教えられ、インドのバザーでも鳥市が立つほどであった。
UAE169,Watching226、
4 赤ブルブル=アカヒタキ(赤鶲) Bulbul Ahmar
赤ブルブルBulbul Ahmarの図2点
左図は枝に止まって、これから鳴き声を立てようかとして辺りを警戒して長い尾を上下に振る。バハレーンp.99より。右図は地面に降りてまず様子を見て採食にかかろうとする。UAEPlate13より。
赤ブルブルBulbul Ahmarは名称はブルブルの名を借りているが、上図の通り姿形はブルブルとは一見して異なる。分類学上ヒタキ科の「アカヒタキ(赤鶲)」である。
学名もPycnonotusではなく、Cercotrischas galactotesとされている。学名の Cercotrischas はギリシャ語から由来して「蝋がかった、蝋の多いもの」の意味で、ヒタキ類、ツグミ類に多い羽翼のつやの良さの意味。種小名galactotesはがラクターゼと同語根のギリシャ語galactoであり、薄茶色に「ミルク、乳」色がかったものの意味である。ここではこの種特有の外見植である「乳灰色」を言ったもの。
英名はRufous Bush Robin(アカヒタキ(赤鶲))
亜名はBulbul Ahmar(赤ブルブル)とされている。
馴染みのブルブルとは大分形態もかけ離れ、むしろわが国のウグイスを少しスリムにした格好である。なぜブルブルよいう名が冠せられたのか。
別名Abuu Hinnaa’ al-Ahraash(藪のヘンナの父)少し赤みがかった色は染料ヘンナを思わせる。ahraashはhurshの複数で「森、林、藪」ここでは鳥名の多い「藪」が当たろう。
バハレーンを含む湾岸地方にはこの赤ブルブルには方名がある。図に載せた如く、尾を良く立て反らせるほどにする仕草からシャウラShawlah(サソリの尾)と呼ばれている。
全長15cm、翼開長27cm。上面・背面は赤みがかった薄褐色である。翼は長くはなく、翼羽はその先端に行くほど黒くなり先端の周囲には薄褐色の白線が回る。
下面・腹面は少し赤味がかった白色。
顔には太く白い眉線があり、その下にはしっかりした黒褐色の眼過線が通る。
尾は長くよく立て、上下に振る習性がある。特に、雌に求愛する時や危険が感じられると、その動きが激しい。尾筒は根元が明るい赤褐色で、尾端は濃い褐色で白羽も混じる。
雌もほとんど同形態で同色、わずかに淡い色である。
赤ブルブルは分布が広く地中海岸からインド、中央アジア西側まで生息する。アフリカ大陸東岸やアラブ世界にも半島の両側、イラクなどに見られる。
渡りを行い、アラビア半島の湾岸諸国には春秋に滞在する。オマーンでは3月中旬から5月中旬までアラビア半島に滞在する、また秋季は8月初旬から11月中旬ごろまで滞在する。
農耕地周辺でよく目にできる。
3-4月ごろ繁殖活動を行い、木の茂みの枝への巣作りには雄も手伝う。雌は巣の中に3-5個の卵を産む。抱卵はおよそ2週間。雛がかえって巣立ちして、やや飛力が増した10月には親と一緒にアフリカに渡ってゆく。成長しきるのは丸一年かかる。
「シャウラ(サソリの尾)旅立つを見れば、冬来たる印」 al-Shawlah taruddu al-Shataa’u “alaa awwali-hi という格言が湾岸地方には言い伝えられている。これは暦の指標にもなっており、実際天体の夏空にあったさそり座が姿を消し、サソリの尾であるシャウラが宵の頃西に消えるのが10月下旬から11月上旬であった。その頃鳥のシャウラ(サソリの尾)と綽名される赤ブルブルBulbul Ahmarもこの地方を旅立つのである。
食は果実や小型の昆虫やバッタ類、イモムシ類を常食とする。
UAE135Plate13, “Azzii.78, Bah.99、Watching213
5 ムギブルブル Bulbul Al-Sha”iir ホオジロ属オルトラ-ン
「麦ブルブル」ブルブル・シャイールBulbul al-Sha”iir 、Emberiza hortulana、Urtulaan の図2点。ホウジロ属であるため、ブルブルとはだいぶ姿形などは異なる。左図はUAE Plate20より。右図は右上が雄の成鳥、左下が最初の冬を迎えた幼鳥。Oman p.277より
「麦ブルブル」ブルブル・シャイールBulbul al-Sha”iirは、西欧ではオルトランOrtolanとして名が知られているボルボルは、図を見てわかる如く実はホオジロ属である。
学名はEmberiza hortulanaといい、Emberizaの方は命名者のドイツ人 A.G. Embritzから採られたもの。また種小名 hortulanaもまた同じくこの鳥を新たに新種としたイタリア人Ortolanから採られたもの。英語のortolan (庭師)は中世フランス語のhortolanに由来する。Emberizaは和名ではホウジロ属との名称となっている。
アラビア語ではブルブル・シャイールBulbul al-Sha”iir。sha”iirは「麦」の意味であり、「麦ブルブル」の意味となる。畑地、麦畑、大麦や小麦ほかの野生の麦類の最育する地域でよくみかけられるから「麦ブルブル」ブルブル・シャイールBulbul al-Sha”iirと称されたのであろう。
または西欧語Ortolanそのままにウルトゥラーンal-Urtulaanとの名称でも通っている。、
棲息域はほとんどのヨーロッパ諸国と西アジア地域であるが、スカンジナビアまで北に達している。また東ではインド辺りまで最近進出している。
渡り鳥であり、湾岸諸国には春秋にその生息が観察される。UAEでは春は3月中旬に飛来し、5月中旬まで滞在する。そして北に渡ってゆく。秋は9月初旬には北方から飛来して10月末、時には11月初旬まで滞在し、その後アフリカの方へ旅立つ。
オルトランホオジロは長さが16~17cmで、翼開長は23~29cm。外見や習性では、それはキアオジ(yellowhammer)に似ているが、ずっと淡い色である。
オルトランの頭部は明るい黄色ではなく、緑がかった灰色になっている。
頬の白色ホウジロの様は嘴の下から明瞭で、顔の下部を通り、頬の先に八の字状になって消えてゆく。
眼の周りの白いアイリングと、小さな嘴と脚は濃い桃色で、この部分も目立つ。
喉元から首にかけては白で、その下の胸一帯は薄茶色になっている。
麦やトウモロコシを好み、畑とその周辺の地面に降りて、回り歩くのを見られることが多い。
種子や果実の植物食が主体であるが、小虫や昆虫も捕食する。
オルトランの巣は地面の上または近くに置かれている。
記録された最大年齢は、スイスで死んでいるのを発見された鳥の6歳10ヶ月とされる。
オスのオルトランの囀りはキアオジイエローハンマーのそれに似ている。
ヨーロッパでは、特にフランスではオルトランホウジロは、鶏肉としての食味、風味が美味であって、我が国のツグミ(鶫)と同様、鳥の珍味として食利用されてきた。しかしオルトランホウジロは生態環境の悪化に伴って、その数を減少して、今では狩猟も禁止されている。わが国の鶫も同様である。ツグミの鳥肉にしては独特のあの甘味を味わったのは遠い昔になってしまった。オルトランホウジロに対してもかつては文学作品や絵画に描かれていたが、同様であろう。
UAE165plate20、Watching224
ブルブル、ホウジロ属2種の図
右ホウジョロ属Bulbul al-Sha”iirオルトラーン、左図はBulbul al-Sha”iir al-Sawrii、Emberiza cineracea 両図共にUAE165。
なお同じホウジロ属Emberizaの仲間で、上図のごとくアラブ世界ではブルブルの名称を持つ鳥がいる。
ブルブル・シャイール・サウリー Bulbul al-Sha”iir al-Sawrii と言って学名はEmberiza cineracea とされている。名称のつながりからして上の亜種であろう。和名はキノドアオジとされている。
UAE165、Watching224
文献一覧
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Sa”iid “Abdullaah Muhammad著『バハレーン及び湾岸の鳥類』Tuyuur al-Bahrayn wa-al-
Khaliij al-“Arabii,al-Maktabah al-“Aammah(Manaamah, al-Bahrayn)1993
Robertson&A.Chapman著『イエメンの鳥類』Tuyuur al-Yaman,イエメン環境省出版n.d..
Nabiil “Abdullatiif著al-Tuyuur al-Yamaniyyah 『イエメンの鳥類』1989、Aden(Yemen)
Birds of Socotra『ソコトラ島の鳥類』 OSME( Majlis Himaayah al-Biyi’ahイエメン共和国環境保護局)2001
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