7月30日、東京代々木公園にて、コロナ禍の影響で暫く休止となっていた台湾フェスティバルに行ってみた。3年ぶりの開催だという。
2016年の同フェスタに行った時は、あまりの混雑に呑まず食わずで帰ってきてしまったのだが、今年はその様な混雑はなく、また模擬店出店もさほど多くはなかったのでゆっくりと回れることができた。

そんななかで、なんとなく足を止めたのがライブ会場。なんやらハイトーンのよく通る歌声が聞こえてくる。台湾ビール缶を片手に何の予備知識もなしでステージ会場へ行って見始めると、聞き始めるや否や、瞬く間にその類い稀な透明感のある声にロックオンされてしまった。
台湾人と日本人とのハーフ、「洸美」(ひろみ)という、バイリンギャルの女性アーティストである。

ステージは30分ほどだったのだが、聞き始めから、これまで聞いたことがない癒し系の歌声に圧倒されてしまった。
とかく不安定な音程をビブラートでごまかすような歌い方をする歌手が蔓延る中、例えて言うならば「歌のおねえさん」的な正統派の歌唱法と言ったらいいのかもしれないが、とにかく巷にいる歌手とは異なる新鮮な歌声であり、唯一無二ともいうべきその歌声は、まさにアーティストのそれである。
ステージ終了の時、「後方でCD販売も行う」と話していたので、早速売り場の方まで行ってみたものの、どこで売っているのはよくわからず、ウロウロと探し回ってしまったがよくわからない。
仕方がないので、どこで買えるのか聞こうとフェスタ管理本部まで行ってみると、なんとその中にくだんの洸美が自らCDを手売りしていた。
手売りCD。アイドルヲタな自分には、身近な響きである。コロナ禍にあってさすがに握手は出来ないが、CDを買いながら会話できるという、売り手と買い手の間で、最も血の通う売買方式だ。
CDを買いながら、ステージで見た時よりも更にキラキラしている彼女の大きな瞳を見ながら、これまでの活動について色々と話を聞くことができた。それによると、もうかなり前から活動をしており、歌を通じて日台の親善大使の様に両国間でのインターフェースを行い、今回の様な親善フェスティバルなどでは積極的、そして精力的に活動しているとのことであった。
一方、こちらは仕事で出張で台湾へは何度か訪問したことがあることや、家内が友人と台湾旅行に行ったときに、小生の仕事仲間だった台湾人が終日観光案内してくれたこと、そしてその友人が数年前に癌で他界してしまったこと、その彼に対して「自分もまたそっちへ行くからね」と伝えてある約束が、まだ実行できていないことなどを話した。
なにかもう、殆ど以前からの友人と話している様に話をしてしまったのだが、そんな小生の話をきちんとフォローしてくれる会話のテンポの良さが、彼女の人柄なのだろう。確かに親善大使的な素養は十分あると思った。

その後、そこを離れて暫く会場を歩いているうちに、もう一枚のCDも欲しくなり、再度売り場へ戻ったところ、彼女の方から「あ、お帰りなさい」と声かけられた。これは感激ものである。まさか、覚えているとは思わなかった!
帰宅してCDを聴きながら色々調べてみると、洸美は台湾系J-POPシンガーソングライターと言うジャンルで、18歳の時に来日し、以前から日台間のインターフェースとして活動していることが分かった。要は小生が知らなかっただけだ。
それから少し経って、今度は越谷レイクタウンアウトレットの会場でミニライブがあることを知り、早速行ってみた。台風の影響で一日延期となったのだが、そのため、元々1回のステージ予定が2回のステージとなって合計1時間のステージとなった。参加するに先立ち、先にCDを聞いて「勉強」してあったので、ステージ毎に異なるセトリもほぼ分かった。曲を知っていればなお楽しいものだ。

終了後、今回もCD販売を行うとのことなので、今度はもう一枚別のCDを買いに並んだのだが、なんと「この前は、これとこれを買ってくれましたよね」と!
そんなことまで覚えていてくれていたとは!
歌も優秀だが、記憶力も優秀なのだろう。さすがは日台の掛橋である。

日本と台湾。
自分の思い込みかもしれないが、台湾ほど日本とのわだかまりがない国は世界中にないと思っている。そんな台湾との接点として、小生、これまでは仕事を通じて半導体関連のプロジェクトをコラボしてきただけだったが、今回、洸美というアーティストを通じて生活や文化に密接な分野で交流できるようになったのは本当に嬉しい。
洸美は、日本で音楽系の学校で勉強やレッスンを積んできたという。ただのシンガーソングライターだけじゃなく、基礎が出来ているということだ。なるほどと思う。
また、歌詞も自作だから言葉の選び方に自分の感情や気持ちを託すことが可能だろう。作曲もしているとのことなので、そういった歌詞と、その歌詞を存分に表現する旋律とのコラボレーションが、聞き手にとって心地良く聞こえるということなのだろう。台湾調のゆったりとした、或いはコミカルな旋律への編曲にも、二胡の奏でるサウンドがうまく織り込まれており、ゆったりとした仕上がりとなっていることも大変素晴らしい。


富山でのステージ(本人の投稿から転記
嗜好には個人差があるが、ここ数年、聞く曲と言えばアイドル系が殆どで、もともと好きだったジャズもあまり聞かなかった上、昨今のK-Popに代表される様な飛んだり跳ねたり系のリズムポップにはいささか飽食気味だったので、癒し系な洸美のサウンドには本当に安らぐ。
今夏、自分史に残る久しぶりによい出会いがあった。今後も推していこうと思う。YouTubeにも多数アップロードされているので、機会あれば是非お聴き頂きたい。台湾にいる昔の仕事仲間にも紹介してみよう。尤も、知っているかもしれないが...。