社会の移り変わりは非常に早く、5年前には普通に当たり前だったことが今や当たり前でない…、そんなことも決して珍しいことではなくなりました。
労働現場のコンサルタントをやっている身として、近年の経営環境の厳しさやハラスメントに代表されるように昔は大して問題にも取り上げられなかったことがすぐに問題化すること、そして働く側にも価値観や考え方の多様化がしたことなど、この環境ひとつとっても、色々なことが変化して、もはや一筋縄ではいかなくなったように感じます。
しかし、そんな中でも変わらない相変わらずの価値観、それは「正社員神話」です。
経営環境の厳しさが増す中、もはや会社側も労働者の生活の保障が難しくなってきているが故に、近年では当たり前のように、アルバイト・パート・派遣…といった雇用形態の労働者を抱えているところが少なくありません。正社員同様の勤務体系や仕事内容であるにも関わらず…です。同じことをしながら雇用形態が違うだけで賃金やその他待遇の格差をなくすために、ひとところ政府内でも「同一労働同一賃金」なんてことが叫ばれましたが、現場への浸透はなかなか進んでいないようです。
自分は個人的に、昨今この時代に「正社員って何?」と疑問に思うことがあります。
人間誰しも楽をしたい生き物ですから、進んで苦しいことをする人などそうはいません。昔ながらの「正社員」こそが雇用も安定するし、いかんせん問題さえ起こさなければ差し当たっての生活の面倒は見て貰える…と思える雰囲気が蔓延しているのでしょうか?
30年、40年前の社会でしたら、このような考え方もマッチしていたでしょう。
しかし、その頃には考えられなかった急速な国際化、IT技術の進歩でネットやPCだけで成り立つビジネスの確立といった社会環境の変化が、さらなる労働現場のあり方を考える一石を投じたことは否めない事実です。
今回の3年以上に及ぶ社会騒動で、良くも悪くも日本人の保守的思考が露呈しました。
もともと安定性を求める国民性であるがために、これまで長く「正社員」という考え方がベストだったのかもしれません。
だが、今の厳しい社会、のほほん…としているだけでは、諸外国からどんどん取り残され、日本は空洞化するかもしれません。
常に自分を磨く努力をしていかなくては、これから先の時代を生き抜いていくことは出来ません。
この期に及んで「非正社員」というと、就職もしないでふらふらして遊んでいる…と穿った目で見る、また正社員でなければ一人前とは言わない…みたいな風潮がこの国にはいまだ根強いですが、いつまでも過去の栄光にすがった時代に合わない考え方をするのではなく、社会環境の変化に応じた柔軟な考え方をしなければ、時代に対応できない国ならびに国民になってしまいます。
ひとつ勘違いして頂きたくないのは「非正社員がいい」と言ってるのではなく、国民全体が正社員神話にすがる時代はとっくに終わっていますよ…ということです。
こういう時代に合わせた考え方に対応するためには、我々国民が個人レベルで出来る問題ではありません。
政治やマスコミなど、社会的影響力を持つ人たちが率先して国民の意識を変える情報発信が必要だと思います。