今日は、銀座の画廊「SASAI FINE ARTS」で開催中の美人画を描く3人の画家、石川幸奈さん、福田季生さん、宮崎優さんの3人展「花のうてなに座る」について書こうと思います。(会期:5月12日(金)~5月27日(土))

 

この「花のうてなに座る」について、画廊のHPでは、このように紹介しています。

 

『上村松園は「私にとって画室は花のうてなであり…」という言葉を残しました。現代を生きる女性を描く、この三人の日本画家たちも画布に向かう時は同じ心持ではないかと思うのです。芯の通った強さを持つ美しさと清らかさ。真摯に制作に向き合う三様の表現をご覧ください。』

 

このことについて、少し付け加えると、上村松園がこの言葉を残したのは、随想集「青眉抄」に納められた「棲霞軒(さいかけん)雑記」であり、そこでは、次の通り書かれています。

『画室に在るということは一日中で一番たのしい心から嬉しい時間である。お茶人が松風の音を聞きながらせまい茶室に座しているのも、禅を行なう人がうす暗い僧堂で無念無想の境に静座しているのも、画家が画室で端座しているのも、その到達する境地はひとつである。墨をすり紙をひろげて視線を一点に集めて姿勢を正せば、無念無想、そこにはなんらの雑念も入り込む余地はない。私にとっては画室は花のうてなであり、この上もない花の極楽浄土である。

 

「うてな」とは、極楽浄土した者が座る蓮の形をした台を意味する言葉であり、上村松園にとって画室で制作活動することは、花に囲まれた極楽浄土の”うてな”に座して、「無念無想、そこにはなんらの雑念も入り込む余地はなく」、「一日中で一番たのしい心から嬉しい時間」を過ごすという意味合いがあるということだと思います。

 

それでは、今回の作品を何点か紹介しようと思います。

まず、福田季生さんの作品です。

「空と花と水と」福田季生 25F 綿布彩色

黒地に、華やかな花模様で彩られた着物を羽織る女性がうつむく姿が描かれています。

そして、女性の眼差しには穏やかながら静かに内に秘めたものを感じます。

 

福田季生さんは、こうした和装の美人画を、日展や新日春展に作品を出展されており、こちらの「SASAI FINE ARTS」で個展を行うほか、京都を中心として作品を発表されており、これまで、私のブログでも紹介させていただきました。

 

 

 

今回は、この作品を併せて3点の作品が出展されており、3点とも和装の美人画です。

その中から、もう一点紹介させていただきます。

 

「夕暮れ」福田季生 6F 綿布彩色

こちらは、紫の浴衣姿が清々しく、桔梗の内輪も涼しげです。

素朴さの中に、懐かしい夏の風物と美を感じる作品ではないでしょうか。

 

また、「花のうてなに座る」という今回の3人展のコンセプトをより具現化するために、画廊の若手スタッフがそれぞれの作家の制作風景とコメントを紹介するタペストリーを作成し、展示しています。

この日は、福田季生さんが在廊されており、久し振りにお目にかかり、お話しすることができました。

 

次は、宮崎優さんの作品です。

「小さな恋人」宮崎優 6F天竺綿着彩

目元が涼やかな和装の女性が、赤いサクランボを左手で持ち、慈しむように眺めています。

着物の柄などは、驚くように精緻に描かれており、女性の表情の可愛らしさ、奥ゆかしさは、宮崎優さんならではの作品です。

 

これまで、宮崎優さんについて、私のブログでも度々紹介してきましたが、宮崎優さんの活躍と、肌で感じる人気は素晴らしく、目を見張るものがあります。

 

 

 

今回は、この作品ともう1点、洋装の女性の作品が出展されています。

そして、宮崎優さんの制作風景とコメントのタペストリーも展示されていますが、こちらについては、まだ会期中ですので、紹介は控えさせていただきます。(写真は撮っていますので、機会があれば紹介させていただきたいと思います。)

 

最後に石川幸奈さんの作品です。

「芳」石川幸奈 8P 麻紙、胡紛、岩絵具、水干、墨

白地に、大きく藤の花を配した着物を、凛と着こなした女性。

やや切れ長の目線に、女性の奥ゆかしさと美しさを感じます。

 

石川幸奈さんは、以前からグループ展等で作品を拝見してきましたが、昨年はこちらの画廊で個展も開催しており、人気が急上昇している作家さんです。

私のブログでは、少し前ですが、月刊美術の2019年11月号の「女性画家が描く和装の美」で石川幸奈さんが紹介されていましたので、その際、作品を紹介させていただきました。

 

 

今回は、この作品以外にも洋装の女性の素晴らしい作品1点と、制作風景等のタペストリーが展示されていました。

 

 

以上、「花のうてなに座る」…3人の美人画を描く日本画作家の制作風景を含め、作品の心に触れることができる作品展でした。

最後に、画廊「SASAI FINE ARTS」のHPアドレスを掲載します。

SASAI FINE ARTS