モノログ
「モノログ」
舞台「シザーズハンズ」で僕が演じる発明家は、独特の古い言い回しの台詞なので
思っていたより大変そうだ。
6月2日から全員参加(ダブルキャストも含む)ノンストップ、通しリハーサルが始まる。
それまでに「昔の言い回しの長い台詞」を覚え、完璧に自分のものにしなくては
いけない。
昨日のリハーサル段階では、まだ台詞に気を取られてしまい、動きと噛み合って
いないような気がする。もっと言葉が立つように目的意識を持たせないと・・・・・・・。
自分の場合、そうする事で必然的な動きが自然に出てくる。
この週末で、完全に覚えきろう!
モノログの経験は、必ず自分を大きく成長させるはずだ。
数日後に始まる通しリハーサルでは、全員がステージの下から見上げている中、
完璧に演じるのだ。
気になる場面は、自分と頷くエドワードのふたりだけの「回想シーン」
このシーンでは、誰よりも長い台詞を貰っている。
芝居を観る者にしっかりと自分の存在感をアピールする絶好の機会だ。
全体の出番は少なくても、発明家は重要な役どころなので最高の演技をしたい!
舞果-K
初めてのリハーサル
初リハーサル
舞台「シザーズハンズ」のリハーサル場所は、NYで数年前から21世紀のソーホーと言われ、話題になっているウィリアムスバーグエリアにある映画スタジオである。
いよいよ明日から舞台の照明、大道具等、初日に向けての準備が始まる。
舞台初日までの僕のスケジュールは月曜・火曜日がOFF。(舞台設営の為)
本来は映画スタジオとして使用されているので細かい規制が少なく、立体的な舞台が可能になるというから、出来上がりがとても楽しみだ。
毎週、水曜~日曜の昼間はウィリアムスバーグで終日リハーサルとなり、6月25日に舞台の初日を迎えるまで、このスケジュールの日々が続く。
監督は直ぐにリハーサルに入らず20分程リラックスの為、エキササイズから始めた。まるでワークショップに参加しているような感じだ。
背の高いエドワードと小柄なエドワード(Wキャスト)同じシーンでも当然ながらリアクションが全く違う。人の解釈とそれに伴う表現方法の違いは実に面白いものだ。
僕の場合「監督が何を求めているのか?」を理解しながらも表現者としての拘りの部分もある。しかし今日のところは互いに初顔合わせのリハーサルということで、ざっくりと確認し合い「明日から本格的に細かい部分を詰めて行こう!」と云う事になった。
しかし自分以外は全員ネイティブスピーカーのという環境、しかもリハーサル参加初日という事で、静寂な雰囲気の中、皆が僕に注目しているが伝わってくる・・・・・そんな独特な空気の中でリハーサルが始まった。
言葉に対する不安というものは監督を始め誰にも与えなかったようだ。
自分にとって英語は完全に大人になってから学んだ言語であり、日本語(母国語)とは違いネイティブスピーカーの俳優さん達の前、英語で発する台詞の第一声は流石に緊張した!!!が、
ここ数年、英語という言語、特にEnunciation・Intonation・Elocution・Articulationに拘り続け勉強して来て本当に良かった!このことは自分を信じる要となり、自信に繋がって行くと思う。
PS:最近の気になる事として「沖縄基地移設問題」があるが、日本では連日、大きく報道されているのにアメリカ、ここNYですら知らない人が大多数だ。大国に日本の政治が飲みこまれている感じが否めない。
アメリカの一般メディアは、沖縄基地問題の進展や日本の総理大臣より、日本の野球選手の活躍にスポットライトを当てている。
自分の挑戦は「己との戦い!」と決意を新たにしている。
舞果-K
初顔合わせ
今日はキャスト俳優達と初顔合わせだった。僕に大きなチャンスをくれた英国人プロデューサーのリチャードに最初に挨拶をしたが、何故か僕のことをミカと呼ぶ。
何度も「Maichですよ!」と言ってもミカと呼ぶが、取り敢えずそのままにした。
その後、二人のエドワード(シザーズハンズ)の主役を紹介された。今回の公演は僕以外はダブルキャストになっている。二人の俳優を交互に使うのだろうか?それともプロデューサーのイメージにより近い俳優を優先的に使うのだろうか?詳しいことは、まだ何も知らされていない。
エドワード役の一人は身長2メートルはあった。どうみても9頭身以上だ。日本では絶対見かける事はない程、異常に顔が小さい!東洋人の場合、長身の人はだいたい骸骨も大きいが、西洋人は頭が小さく身長だけが特別に大きいので呆れてしまう。
「お前はスカイツリーか!」と心の中で突込みながら彼の頭のてっぺんまで一気に見上げてしまった。シザーハンズ役のメイクをしなくても充分人間とは思えない風貌だ。
ダブルキャストのもう一人は前者の俳優とは対照的に170センチ位で、僕より小さくアメリカ人にしては小柄だ。二人に共通しているのは、若い頃のジョニー・デップの顔立ちにとても良く似ているということだ。
その他の俳優人は男女皆、笑顔の素敵な人達ばかりという印象で僕の緊張は少しほぐれた。この舞台の出演者、関係者全員が一同に集められ、約一ヶ月遅れでリハーサルに参加した自分が紹介された。
そしてシザーハンズを創作した発明家、云わば父親の自分と息子として創作されたシザーハンドの主役2人が前に出るように言われ並んだのだが、その時、何故か自然に拍手が起こった。
「良いキャスティングだわ!」と一人の女優が言い、別の人が「20年後には、2人共、ミカのようになるね。容易に想像つく!」等、発明家の父と創作されて生を受けた息子について、色々なコメントが飛び交い和やかな雰囲気になった。日本人の僕は、何故か若干妙な気持ちになったが、僕を日本から呼んだプロデューサーのリチャードはイメージしていたものと実際に並んだ絵が一致したのか、終始笑顔でとても機嫌が良かった。
コスモポリタンのNY俳優陣の中にあって、自分は日本人であることを忘れる事は無い。心地よい緊張感を味わいながらも帰り道「I am a Nipponjin. 」と言いながら顔合わせ場所を後にした。
舞果ーK