「ニーズは特定の数だけある」という根拠は、

まったくないわけではありません。

私の勝手な解釈や思い込みではない

ということです。

 

そう言っているのは、日本のケアマネジメントの

権威の一人でもある竹内孝仁先生です。

ご存じの方も多いと思います。

 

この考え方を先生が示されていなければ

日本の高齢者のケアマネジメントは

もっと感情的で情緒的なものだったろうと

私は思っています。

 

竹内先生のケアマネジメント論の

一番の肝は、この「ニーズの考え方」だと

私は思います。どんな考えかというと、

前回から私が言っていた

「ニーズは特定の数があるだけである」

「ニーズは『(生活上の)課題』であり、

単なる要望(ディマンズ)ではない」

ということの他、

①「利用者はニーズを知らない

→生活上の課題の必要性を知らない」

②「ニーズを特定できれば

ケアマネジメントの大半は

済んでいる」等といったことです。

 

①について、やや乱暴に言えば

そもそも利用者が自分のニーズを分かっていたら、

要介護状態になるわけがない、ということです。

要介護状態になる前にニーズの解決に向かうはずです。

誰もが進んで要介護状態になりたいと

思っているはずが無いですからね。

 

「ニーズを知らない」の中には、

「頭では分かっていても…」というのも

含まれます。

例えば糖尿病の問題。

カロリー制限や運動をしたほうが良い、

と分かっていてもできない。

こういう例も「ニーズを知らない」ものの

ひとつになります。

 

人間は常に正しいことばかり

できるわけではないのですね。

欲望の固まりなんです。

…欲望を満たすことが

「生への潤い」にも

つながるわけですけどね。

 

話はずれてしまいましたが、

だから、ケアマネジャーなどの

第3者の支援を受けるなどして

正しい方向に向かうエネルギー、

モチベーションを作っていかなければ

いけないわけですね。 

 

②については、ニーズを特定することができれば

それを解決するケアプランはおのずと出てきます。

あとは、「ニーズを知らない」という利用者に

どう理解してもらうか(つまり自己決定)、ということと

提供されるサービス(プラン)の質の問題

(質が悪ければニーズはいつまでも解決しない)

に移行するのです。

 

「ニーズ」とは、「生活上の解決すべき課題」

と言われるわけですが、ケアマネジメントの世界で

このニーズに関して、以前にこんな議論がありました。

「ニーズは特定の数があるだけである」というのと

「ニーズはその人によって違い、無数にある」というのです。

 

皆さんはどういうふうに思っていますか?

 

一人として同じ身体の人はいないし

一人ひとり、生きてきた歴史も違うから

ニーズは無数にある、それがまさしく個別性だ

という意見にもうなづきそうになりそうですが、

私のブログを読んでいただいている人には

わかると思いますが、私は

「ニーズは特定の数があるだけである」

という立場です。

 

だいたい一人ひとり違い、無数にある

ということになれば、

一定の法則はない、ということになり、

ケアマネジメントの普遍性には

たどり着くことはできないでしょう。

だからj科学的なものにはならない、

ということです。

 

でも、それをというだけでは、理解が

得られにくいだろうと思いますので

もう少し説明します。

 

人の身体は多少の個人差はありますが、

だいたい同じもので構成されています。

 

体幹があり、四肢がついていて、

上に頭が乗っています。

頭の中には脳があり

脳の指令で身体を動かしたり

考えたりしています。

目や口や鼻や耳は、だいたい

所定の場所に収まっています。

骨や内蔵の数や場所も同じです。

それらは約60兆個の細胞で構成されています。

 

姿形や働きの強さ(弱さ)には

多少の個人差はあるものの、

まさしくそれが個人差であります。

 

人の生活も文化的な違いはあるもの、

住まいがあり、衣類をまとって

雑食であることが人間の食であります。

これを衣食住といいます。

どなたにも必要なもので

どれかひとつでも欠けていると

それは問題視されますよね?

 

それらを満たすために経済活動を行い、

いっぽうでは家族という共同体を構成し、

さらに、それを安定化させるために、

地域に広げる働きが生まれます。

 

家族もひとり暮らしとか、

2人以上の家族ではない場合もありますし

地域との絆が薄い場所もあり、

経済活動を行っていない人もありますが

やっぱりそれも個人差の範囲内であり、

人が生活する構成要素に

大きな違いはないわけです。

 

例えば、生活するのにお金は絶対必要で

働いていない人にだって年金や生活保護などの

制度を作って守られてますよね。

ひとり暮らしだって、食べるために調理したり、

清潔な衣類を身につけるために洗濯もします。

同居家族がいる家も、ひとり暮らしでも

やること、必要なことは一緒です。

 

このように、人間の身体や生活は

あなたのとなりにいる人と

そうかけ離れているわけではありません。

 

したがって、人間の生活上の課題って

星の数ほどある、無数だ、無限だ

ということはない、と私は考えるのです。

今日からサービス計画書について

お話ししていきましょう。

このサービス計画書が元になって

サービスの提供がおこなわれていきます。

 

今回はサービス計画書の第2表について、です。

第2表というのは、アセスメントをした結果、

明らかになった「ニーズ(課題)」を

解決するための目標やサービス内容を

A4 1枚で集約されている紙です。

 

介護のお仕事をしている人なら

ご存じかと思います。

 

前回お話ししたように

「ニーズ」イコール「課題」の件ですが、

この第2表のいちばん左側には

「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)

という項目になっていますよね。

覚えておきましょう。

 

さて、ここから本題ですが、

課題を解決するために

サービスを計画するのですが、

ニーズの解決レベルというのを

心しておいたほうがよいでしょう。

 

どういうことかというと、

課題を解決するレベルは

だいたい4つに分けられます。

 

「①解決」・「②改善」・「③維持」・「④遅延」

の4つです。

 

①は、問題が消失してしまうこと。

サービスを必要としない、

つまり自立した状態のことです。

②は、問題がなくなってはないけど、

以前よりは良くなっている状態のことです。

③は、文字通り現状維持で、

④は現状より悪くなっているけど

サービスを使っているからこそ、

その程度で済んだ、というレベルです。

 

介護保険の利用者は、

高齢化により介護が必要になった人

ということです。

いつまでも若者のようにいることは

不老不死を実現することと同じですから

どんな方も①解決というわけにはいかないのです。

 

国がずるいのは、ただ

「自立支援」を念仏のように唱えて

どんな人でも①解決できるかのように

言っていることです。

 

ただし誤解がないように言っておきますけど、

サービスの質が悪いために

利用者の重度化を防ぐことができず、

生活の質を落としてしまうのは

大きな問題ですからね。

 

この方の、この課題は

①~④のレベルでどの辺を

目指せそうか、ということを

見立てるのもケアマネジャーの

大切な仕事ですね。