室伏広治の名コメント | メタメタの日

 ロンドン・オリンピック前夜、NHKで、インタビュアー木村俊介さんが、メダルを期待する選手を展望していた。その一人がハンマー投げの室伏広治さんで、彼のコメントがいつもユニークで、インタビュアーとしては、彼が何を言うかに注目していると言っていた。室伏のユニークなコメントとして挙げたのは、父親を超えましたね、と言われた時のもので、「父親を超える子どもを育てるという点でまだ父親を超えていない」と返したという。

 確かにユニークで、面白い!

 父親の重信は「アジアの鉄人」と言われた同じハンマー投げの選手で、父の日本記録を広治は超えている。父子関係は師弟関係でもあったわけで、広治のコメントは師弟関係にも置き換えられる。「自分はまだ師を超える弟子を育てるという点で師を超えていない」と。


 師弟関係、ということについに自分は無縁だったが、縁なき衆生であったがゆえに、道元 や親鸞や漱石 の師弟関係に関心があり、師弟関係について論ずる山折哲雄や内田樹 、四方田犬彦、牧野紀之らの文章に注目してきた。


 弟子にとって師の偉大さは、師を超えられない時より、師を超えたときの方が大きいのではなかろうか。師を超える弟子を育てた師の器量を知り、自分を超える弟子をまだ育てていない己の未熟さに気づかされる。