ここでは、映画のストーリーを細かく追いながら感想もちょこちょこ書いていこうと思います。
(トリビアや撮影裏話的なものもあれば。)
※盛大にネタバレありなので未見の方はお気をつけ下さいませ。
「Disobedience」の脚本(screenplay)もダウンロード出来たので、映画にはなかった未公開シーンなども別記事で書いております。
この記事では未公開シーンが入る場面に、★で印をつけておきます。
今回でようやく終わりです^^
…⑥から続く
-ロニートとエスティは、シナゴーグで行われる追悼式に歩いて向かっている。
建物の前には多くの参列者が集まっている。
伯母フルマの姿を見かけたロニートは彼女へ「父の追悼をしたいだけ。」と言い、フルマも「分かってるわ」と彼女を迎え入れる。
ラビの唯一の娘であるロニートだけど、過去に故郷を捨てた身であり、敬虔なユダヤ教徒でもなく、さらに帰郷後もまたエスティとの関係を噂されており、コミュニティの一部の人達からは嫌われた存在であると、彼女自身も分かっているのです…。
未公開シーンでは、ハートグ伯父や他のラビ達がドヴィッドに、ロニートは追悼式に参加して欲しくないという話をしていました。
エスティもまたロニートとの関係を知られたことで、周囲からは好奇の目で見られているのです。
2人はそんな人々が集まるシナゴーグへ、居心地の悪さを感じながら入っていきます。
その直前、ロニートはそっとエスティをエスコートするように手を背中の方へもっていくんですよね。
でもその手は一瞬で引っ込めてしまうのだけれど。周囲の目もあったからでしょうか。。
ちょっと切ない場面です…。
先に中に入ったエスティは、一心にドヴィッドの姿を探している様子。
奥の部屋で数人の人と話をしている彼を見つける。
ドヴィッドもエスティに気がつき、話をしたそうにしている彼女へ、何の用だ?今は無理だ、といったようなジェスチャーを見せる。
★29
エスティはロニートの方へ行き、2人は階段を上っていく。
2階は女性用の座席になっており2人は端の方の空いた席へつく。
(ユダヤ教では、公の場で男女の席は別々に分けられるのです。)
ここでも彼女たちは周りの女性たちから冷ややかな視線を浴びます。
2人が一緒に来ていることもまた皆の注目を集めているのでしょう。
落ち着かない様子の彼女たち。。
-聖歌隊による祈りの歌で式が始まる。
2人とも彼らの歌でラビの死を実感し、心を打たれている様子。
1階席に座っていたドヴィッドは息苦しそうで様子が少しおかしい。
ハートグ達が座る前方の席に移動するも、その後ふらつきながら廊下へと出ていく。
エスティもそんな彼の様子を見て心配している。
ロニートは「ニューヨークに来ない? 私と一緒に住めばいい。」とエスティへ告げる。
エスティはロニートの手をぎゅっと握る。
もう2人は周りの目も気にすることなく、自分たちの心に素直に行動しています。
ロニートがずっとエスティに伝えたかったこと…
“NYに一緒に来て、側にいて欲しい。”
エスティがドヴィッドとの別れを決意し、彼女自身の口から自由になりたいという思いを聞くことが出来た。
だからこそロニートは迷いなくエスティにこの想いを伝えられたんだと思います。
ハートグは檀上に立ち、ラビを追悼する言葉を語る。
そして後継者となるドヴィッドを皆に紹介する。
しかしドヴィッドは現れない。
ようやく彼は廊下から現れ、檀上へとやってくる。
事前に用意していたと思われる紙を見ながら彼は演説を始める。
しかしこんな話はしたくないといった様子で、途中でやめてしまう。
もっと自分の言葉で、本心を語りたいんだといった風に。
そして突然「今日はラビの一人娘ロニートが来ています。」と2階の方を指す。
全員の視線がロニートに集まる。
彼女も突然のことに驚いている様子。
時に言葉を詰まらせながら、彼はラビが最期に伝えてくれた言葉を話し出す。
人は自由である、選択の自由があるんだということを。
それから、2階に座るエスティをじっと見つめた後、「あなたは自由だ、自由なのです!」と。
彼が本心で確かに伝えた言葉。
エスティの目には涙が溢れている。
そして、自分はラビの後継者にはふさわしくないと名誉ある継承を断り、そのままシナゴーグを後にする。
★30
-ロニートとエスティもシナゴーグから出てくる。
エスティは外で立ち尽くしているドヴィッドの方へ近づき、彼を強く抱きしめる。
ロニートもそれを見て心を打たれている様子。
ロニートに気付いたドヴィッドは、彼女を迎え入れるように片方の腕を広げる。
ロニートは笑顔で2人の方へ近づき、3人は一緒に抱き合う。
みんなとても素敵な表情をしています。
抱き合った手をぎゅっと握り合うロニートとエスティにまた胸がきゅんとなる♪
このシーンは実はすごいことなんですよね。
ユダヤ教では、夫婦や家族でない男女が触れ合うことは禁じられているのです。
ロニートが帰郷してすぐドヴィッドにハグをしようとした時、彼はサッと身を引いていました。
敬虔なユダヤ教徒で人々に教えを説く立場の彼が、神の教えに背く行動を取るのは、身を持って「人は自由である」ということを示しているように思えます。
-朝、ドヴィッドの家、屋根裏ロニート
ロニートは 放心した様子でベッドに座っている。
着替えを済ませ、スーツケースに服を詰めている。
そして母親のキャンドル立てを大切そうに入れる。
(未公開シーンで、一度ロニートがNYに帰ろうとした時にエスティがこっそり彼女のカバンにキャンドル立てを入れ、金属製だったため空港のセキュリティチェックで引っかかっていました。
今度はちゃんと、預け入れる方の大きなスーツケースにしまっています。)
荷物を抱え階段を下りていくと、寝起きのドヴィッドが寝室から出てきます。
「こっそり帰ろうかと。」とロニート。
ドヴィッドは「シャロム(さよなら)。」と彼女に別れを告げる。
「さようなら。」とロニートは彼の頬に手を差し伸べる。
自然と受け入れるドヴィッド。
リビングでは、エスティがロニートに気づきソファの上で身を起こす。
彼女はパジャマ姿でもうウィッグも被っていません。
荷物を下ろしてくれたドヴィッドは2人きりにしようと、また寝室へと戻っていく。
2人は見つめ合い「さようなら。長寿を。」と別れの挨拶をする。
★31
てっきりエスティはロニートと一緒にNYへ行く決意を固めたのかと思いましたが、違ったんですね…。
シナゴーグでドヴィッドは「あなたは自由だ」と言ってくれた。
彼はエスティの心の叫びを聞き、ラビが最期に伝えてくれた“選択の自由”を彼女に与えてあげることこそが本当の愛なんだと気付いたんですよね。
そんなドヴィッドの優しさ、深い愛をエスティは受け止め、彼に孤独な思いをさせたくないとNYへ行くことを考え直したんだと思います。
そしてもう一つ、エスティ自身もお腹の中の子供に選択の自由を与えたんじゃないかなぁと。
自分の勝手な行動で、子供から父親を奪うことはしたくなかった。それはその子から一つの選択肢を奪うことでもあるから。。
-家を出たロニートは近くで待っていたタクシーに乗り込む。
行き先を告げタクシーはゆっくりと走り出す。
すると後ろから「ロニート、待って!」と叫ぶエスティの声が聞こえる。
振り向くと、パジャマ姿のエスティがタクシーの方へ走ってくるのが見える。
ロニートは慌てて「停めて!」と運転手に言う。
エスティはタクシーのドアを開け中へ入り、ロニートに長い熱いキスをする。
2人の目には涙が溢れている。
ロニートはエスティに言う。
「あなたは素晴らしい母親になるわ。勇気があって美しい。
愛してる。愛してる。必ず連絡して。」
そしてエスティも泣きながら「連絡するわ。」と答える。
「愛してる」という言葉はこれまでは一度も2人の間では交わされなかったんですよね。
もちろん言葉にしなくても2人の想いは十分通じ合っていたわけだけれど。
でもだからこそ、このシーンでの「愛してる」は重みを感じ、2人の深い愛がすごく伝わってきます。
この「連絡して」という言葉は嬉しかったなぁ。
エスティはロニートと一緒にNYへ行かなかったけれど、2人は決して以前のように離れ離れになるつもりはないんです!
エスティはこれからもずっとドヴィッドと子供とこの町で暮らしていくと決めたわけではなく、きっと今はまだそのタイミングではないと考えてるだけなんだと思います。
元気な子供を産んで、暮らしが少し落ち着いてきたら改めて、彼と別れてロニートの元へ行くのだろうなと私は想像しています。
このコミュニティから離れることはエスティにとってそう簡単なことではないでしょうし、気持ちの整理や準備など多くの時間がかかることだから、それまでもう少し待っていてほしいとロニートに伝えたのではないでしょうか。
もちろんその間もちゃんと連絡を取り合おうねと。
エスティは車を降りドアを閉める。
タクシーは再び走り出す。
ロニートはエスティの熱い想い、彼女の強さ、美しさに圧倒され涙が止まらない様子。
そして「寄りたい所があるの。」と運転手に言う。
ロニートは帰る前にもう一度、父のお墓を訪れます。
父ラビの眠る地をしばらく見つめた後、ロニートはカメラのシャッターを押す。
「さようならパパ。」
★32
ドヴィッドがエスティに伝えた「人は自由だ」というラビが最期に残した言葉。
これはロニートの心にも深く響いたはずです。
つまりロニートの過去の行動はコミュニティや父親への反抗ではなく、彼女はあの時“自由を選択”したのだと、ラビは長年の時を経て理解してくれたのだと思います。
ロニートは父に赦されていたのだと知ることが出来たわけです。
未公開シーンにあったように、ラビは最期の瞬間、確かにロニートのことを想い彼女を近くに感じながら亡くなったのだと思います。。
END
以上で終わりになります。
完全ネタバレでお送りしてきました^^;
もし映画をご覧になった方がいらっしゃれば、ぜひ感想など共有し合いたいなぁと思っております^^
日本でも公開してくれたら、もっとこの作品について語り合う場が増えると思うんだけど。。
そしてレイチェルズファンがもっともっと増えるのに!
これからもこの作品を見て気付いたことや思うことなどあれば、記事に書き加えていくかもしれません。
本当に、「Disobedience」は素晴らしい作品なので、皆さんぜひぜひ見てみて下さい