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分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

私たちの身体は血管が張り巡らされています。
成人の血管をすべてまっすぐ繋げると10万キロメートルにもなり、その長さは地球2周半と同じです。
そして、心臓から送りだされた血液が体内をめぐり、再び心臓に戻ってくるまでの時間は約30秒と言われており、そのスピードは最も太い血管では毎秒1メートルに及ぶとされています。

 

私たちの身体に欠かせない血液、そしてその流れである血流が大切な理由について説明します。

 

血液の働き

成人の身体には体重の8%程度(およそ4〜5リットル)の血液が流れており、そのうち40%が失われると、生命に危険が及ぶと言われています。
私たちは呼吸によって酸素を取り込んでいます。取り込んだ酸素は肺に入り、血液によって全身に運ばれています。身体の組織から排出された二酸化炭素は血液によって肺に戻ってきます。
また、口から食べた物は消化管で消化吸収され、栄養素が取り込まれます。腸から取り込まれた栄養素は血液によって全身に運ばれます。
組織で排出された老廃物は血液によって腎臓や肝臓へ運ばれ、処理されます。
女性ホルモンや成長ホルモンなど体内で分泌されるホルモンは血液によって運ばれます。
血管を弛緩収縮させて、体温調節を行っています。
体内に異物が入ったことを全身の細胞に知らせています。

 

血行を良くするとは

血管の面積比は、動脈1:毛細血管700:静脈2とされています。
全身の血管のほとんどを毛細血管が占めています。
このことより、動脈・静脈の流れがどれだけよくても毛細血管の流れが滞っていると、組織での血管の働きを十分に発揮できないということがお分かりかと思います。
毛細血管は骨格筋や中枢神経系に多くみられる『連続性毛細血管』、腎臓、腸管、脈絡叢、内分泌腺など組織と血液間での迅速な物質交換を必要とする臓器でみられる孔が多くあいている『有窓性毛細血管』、肝臓、脾臓、一部の内分泌器官、骨髄などで見られる『非連続性毛細血管』の3つに分けられますが、どの毛細血管も単層の内皮細胞によって構成されています。
この単層構造によって組織での物質の交換を行いやすくなっています。

画像:Wikipediaより

 

しかし、加齢や紫外線、活性酸素などによって毛細血管が傷ついてしまうと隙間や孔が広がり、過度に栄養分・老廃物等が漏れ出てしまうことで末端まで届かなくなります。その状態が続くと、血管がさらに細く狭くなり、やがて血流が途絶え、管はあるのに血液の流れない毛細血管となってしまいます。テレビや雑誌などでは『ゴースト血管』と呼ばれ、最近よく取り上げられています。
このような毛細血管にならないためには質のいい血液を常に流しておくということが大切です。
質のいい血液を流すためには、ウォーキングなどの軽い運動、質のいい睡眠、栄養対策などが大切です。
 

血の巡りをよくするための栄養対策

血管の強化のためには、良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、銅、亜鉛などの栄養素が必要です。 
血液中に酸化された脂質(過酸化脂質)が多いと、粘度が高くなり血流が滞る原因となります。ビタミンEは、過酸化脂質の生成を抑制し、血行促進に寄与します。ビタミンAは、血液凝固抑制成分(ヘパリン)の材料となり、魚油に多く含まれるEPAには、血小板の凝集抑制作用があります。
また、イチョウ緑葉エキスは、動脈、静脈、毛細血管を拡げる働きがあります。毛細血管の場合、拡張作用だけでなく折れ曲がったものがまっすぐに伸びるという報告もあるようです。


 

 

夏バテの主な原因として、自律神経の乱れ、体内の水分やミネラル不足、食欲低下による栄養不足、睡眠不足などが挙げられます。

●温度差による自律神経の乱れ


身体は外気温に関わらず、体温を一定に保とうとする働きがありますが、暑い屋外と冷房の効いた室内の往復は、体温調節を担う自律神経に負担がかかり、交感神経と副交感神経のバランスの乱れにつながります。


自律神経は血圧や心拍、内臓の働きといったさまざま活動を調整しているため、自律神経が乱れることで、夏バテの症状があらわれます。


●体内の水分やミネラル不足

多量の発汗により水分と一緒にナトリウムやマグネシウムなどのミネラルが排出され、不足しやすい状態になります。
また、成人の身体のおよそ60%を占める水分は、血液や細胞内に含まれています。
体内の水分が不足すると、血流が悪くなり、脳や筋肉・内臓へ送られる血液の量も減ることから、だるさや食欲不振などの症状があらわれます。

 

 

●食欲低下による栄養不足

暑さによって胃の消化機能が低下すると食欲がなくなり、ついつい冷たい物やさっぱりした簡単なものだけで済ませてしまいがちです。
食事の回数や品数が減ることで、タンパク質、ビタミン、ミネラルなど身体に必要な栄養素が不足します。
これらの栄養素は、疲労回復にも必要なため、不足することでさらに悪循環に陥ります。

 

 

●睡眠不足

 


 


私たちの身体は、睡眠中は深部体温(脳や内臓の温度)を下げて脳や身体を休ませ、朝の起床に向かって徐々に深部体温を上げる仕組みになっています。
熱帯夜で深部体温が下がらないと、途中で目が覚めてしまったり、眠りが浅くなったりすることがわかっています。
深部体温が下がると寝付きやすくなりますので、就寝1~2時間前にぬるめの湯船(38℃程度)につかって深部体温を上げておくと、就寝時間に深部体温が下がるタイミングとなるので、スムーズに寝ることができ、熟睡しやすくなると言われています。

また、質の良い睡眠のためには、枕や寝具の適度な硬さやフィット感のあるものを選ぶことも重要です。


参考:e-ヘルスネット

快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係 | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
 

夏バテ予防に「良質タンパク」「ビタミンB群(ビタミンB1)」「ビタミンC」「ミネラル」
 

●良質タンパク


骨格や筋肉、内臓、皮膚、毛髪、血管などあらゆる細胞・組織をつくる材料となります。
疲労回復、免疫力向上にも欠かせません。

 


イラスト:知識ゼロでも楽しく読める!たんぱく質のしくみ

 

脳で分泌される睡眠ホルモンの原料にもなり、眠りの質を高める重要な役割を果たしています。


入眠物質として知られているメラトニンは、必須アミノ酸の1種であるトリプトファンからセロトニンを経て合成されます。


トリプトファンは、体内では合成できないため、トリプトファンを多く含む乳製品(牛乳・チーズなど)や大豆製品、肉、魚などの食品の摂取によって、安定したメラトニン合成を促すことにつながります。


その他、合成には共同因子としてビタミンB群(ビタミンB6、ナイアシン)、ミネラル(マグネシウム)などが必要です。


食欲が低下すると、良質タンパクの摂取量も不足してしまいますので、意識して摂りましょう。良質タンパクは体重1㎏あたり1g必要です。

※タンパク質の「質」は、その構成成分であるアミノ酸の種類やバランス・含有量によって決まります。

食品に含まれるタンパク質が良質かどうかは、その食品中の必須アミノ酸の組成がヒトに必要なアミノ酸の種類や量に近いかどうかで判断します。

<多く含む食品>
卵、肉類、魚介類、乳製品、大豆製品など
 

●ビタミンB群(特にビタミンB1)


ビタミンB1は、水溶性のビタミンB群の一種で、疲労回復のビタミンとも呼ばれており、炭水化物 (糖質)の代謝を促す働きや神経や筋肉の機能を正常に保つ働きがあります。


夏は、食欲が低下することに加え、麺類や清涼飲料水など糖質の摂取が多くなることで、ビタミンB1の消耗が激しくなります。
 

ビタミンB1が不足すると、食欲不振や疲労感、進行すると手足のしびれ、むくみ、動悸などの症状が見られるようになります。

<多く含む食品>
豚肉(特にヒレ肉やもも肉)、卵、アボカドなど

また、ビタミンB群(B1、B2、B6、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、B12、葉酸)は、単独で働くのではなく、お互い助け合いながら働きます。
夏バテを予防するためにも、ビタミンB群を意識して摂りましょう。

●ビタミンC


ビタミンCは、疲労を起こす原因の1つとされている活性酸素を除去する働きがあります。


また、ビタミンCには、ストレスを軽減するホルモンを合成する働きがあります。


暑さや疲労を感じると、副腎からストレスを軽減するためのホルモンが多く分泌されますが、この時にビタミンCが大量に消費されてしまいますので、強化摂取がおすすめです。

<多く含む食品>
じゃがいも、パプリカ、ブロッコリー、キウイフルーツなど


ビタミンCは、食品からだけでは大量に摂取することが難しいので、栄養補完食品での摂取をおすすめします。


●ミネラル(カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、ナトリウムなど)

イラスト:日本経済新聞(2019年6月18日号)


ミネラルは身体の機能が正常に働くよう調節する役割を担っているため、夏バテの症状と密接にかかわっています。

特に、鉄は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの材料となり、全身の細胞に酸素を届ける働きを助けるため、不足すると貧血や、疲労感につながります。

また、エネルギーを作り出す際には、マグネシウムやカリウムが必要です。
体内の酵素の働きをサポートする亜鉛や自律神経を整えるカルシウムなども夏バテを予防するためには欠かせない栄養素です。

さらに、熱中症予防にはナトリウム(塩分)とカリウムをバランスよくとることも大切です。

これからが夏本番です。暑い季節を快適にのりきりましょう!

 

<参考図書>

 

 

 

 

 

●とにかく痛い「痛風発作」

 

足の親指の付け根などが、突然赤く腫れて痛み出し、2~3日は全く歩けなくなるほどの激痛を伴います。

 

痛風という名は、風が吹いただけでも痛みが走ることから付けられたとの説があります。

 

痛風の患者数は、国民生活基礎調査からの概算で、推定約110万人、「尿酸値」が高めだけれど症状が出ていない人は1,000万人を超えるといわれています。


以前は、中高年の男性が罹るイメージでしたが、近年では若年化や女性患者の増加傾向も見られるようです。

 

しかし、実際は尿酸値が高いからといって必ず痛風になる訳ではなく、尿酸値が高くても痛風にならない人も多くいます。

 

では、痛風予備軍の人は、どのような予防対策を立てればよいのでしょうか。

 

それにはまず、痛風が起きるメカニズムを知ることが大切です。
 

●痛風が起こる仕組み

尿酸は、プリン体(細胞中にある核酸の成分)が最終的に分解されてできる物質です。

痛風は、血中の尿酸値が高く、尿酸塩(尿酸ナトリウム)が結晶化して、関節などに沈着して起こります。

トゲトゲした針状の結晶は、周囲の組織を傷つけ、炎症を引き起こします。

また、尿酸は温度pHが低下すると溶解度が下がります

足先の関節などが結晶化し易いのはこのためです。
 

一方、小腸粘膜などの糖タンパク(糖とタンパク質の複合体)の多い組織では、尿酸は溶解度を増しています

糖タンパクは尿酸と結びつき、結晶化を防いでいると考えられています。

痛風の予防策としては、体内で十分に糖タンパクを作れるようにしておくことが大事です。

糖タンパクの合成には、良質タンパクビタミンAが材料として欠かせません。


また、糖タンパクは活性酸素に弱いので、ビタミンCポリフェノールなどの抗酸化物質にも不足がないようにすることが大切です。

 

●尿酸の体内での役割

人間の尿酸値は、他の動物に比べると、非常に高いことが知られています。

尿酸は、腎臓で約90%が再吸収されています。

再吸収の効率が良いことから、尿酸は単なる廃棄物ではなく、体にとって有用な働きがあるのではないかと考えられるようになった経緯があります。

その後、「活性酸素の除去」に役立っていることが分かり、私たちの血液が飽和量に近い尿酸を持つことの意味合いが注目されるようになりました。

 

尿酸を必要以上に減らしてしまうと、逆に健康を損ね兼ねないとも限らないのです。

 

●痛風は夏に起きやすい

痛風は、夏に気を付けたい疾患の一つです。
通常の気温の時に比べて、痛風発作が増えるという研究報告もあります。

 

血中の尿酸濃度は、発汗などによって体内の水分が奪われることが原因で上昇します。

尿酸は尿として排出されるため、水分を十分に摂取し、尿量を確保して、排出を促すことが大切です。

栄養素では、ビタミンC、葉酸、カリウムには尿酸の排出を促す働きがあるといわれています。


 

●生活習慣の見直しも大切

尿酸は、体内合成が7割であることから、食事の影響は3割と少ないですが、高カロリー食は、体内合成にも影響を与えるため、注意が必要です。
プリン体を多く含む食品ということではなく、全体的なカロリー摂取(ジュースや缶コーヒー、間食が多いなど)がある場合には、改善が必要です。

また、内臓脂肪の蓄積が尿酸産生を亢進させることや、尿酸排泄を低下させるリスクが報告されていることからも、過体重を解消することによって、数値の改善に直接つながるケースも見られます。


<参考書籍>