分子栄養学のススメ -4ページ目

分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

日常生活の中で普通に飲んでいる薬。
健康相談をしているとサプリメントのことをお薬とおっしゃる方もいらっしゃいます。
薬はどうやって効果を発揮しているのか、薬とサプリメントの違いは何か考えてみようと思います。
 

薬ってどうやって効いているの?

口から入った薬は胃に運ばれます。胃酸は強い酸性の液体なので、ここで分解されてしまう薬もあります。胃で効果を発揮したい薬はここで働きますが、胃酸に弱い薬などは腸溶錠といって、胃では溶けず腸で溶けるように設計された薬もあります。
胃から腸へと運ばれた薬は主に小腸で吸収され、小腸を取り巻く血管へ摂り込まれ門脈(肝臓につながる静脈)を通って肝臓に運ばれます。肝臓に入った薬は代謝酵素などで分解されたり、毒性を弱められたり、排出しやすい形に変えられたりします。
肝臓を通過した薬は血液によって全身をめぐり、全身の組織で作用を発揮します。
薬は作用したあと、腎臓を通過して尿として排泄されたり、肝臓から胆汁の中に排泄されて便になったり、汗などと一緒に体外へ出ていきます。
     
 イラスト:中外製薬HPより
 

タンパク質と薬

薬が小腸から吸収されて血管に入ると、血液内にすみやかに分散します。そして、アルブミンというタンパク質に結合して血中を移動します。
アルブミンは血しょうに含まれるタンパク質の60%を占め、あらゆる薬と結合します。これとは別にグロブリンという血しょうタンパク質の結合は特異的でコレステロール、リン脂質、ビタミン、ステロイドホルモンなど極めて限られた物質にのみ結合します。
血液中ではすべての薬がアルブミンと結合するのではなく、アルブミンと結合した結合型の薬と結合していない非結合型の薬が存在しています。
非結合型の薬は生体膜を通過し、組織へ分布したり、作用部位へ到達して薬効を発現します。
一方、結合型の薬は生体膜を通過することができないため、血液中を循環し、非結合型の薬が代謝、排泄されて少なくなってくるとアルブミンと離れ、非結合型の薬として働きます。
血しょうタンパク質は組織に存在するタンパク質に比べると100分の1程度ですが、異物や薬と結合し、ひとまず不活化し、異物による急激な作用から身体を守っています。また、血しょうタンパク質の助けがなければ脂溶性ビタミンやステロイドホルモンは体内に存在できず、水に溶けにくい薬(難溶性の薬)は作用部位へ到達することができません。
イラスト:一般社団法人日本血液製剤協会HPより
 

薬を飲むと肝臓が悪くなるって言われるのはなぜ?

肝臓は右の肋骨に守られるようにして存在するヒトの身体で最も大きい臓器です。
肝臓の主な働きは、私たちの身体に必要なタンパク質の合成・栄養の貯蔵、ブドウ糖・脂質代謝、有害な物質(異物)の解毒、食べ物の消化に必要な胆汁の合成・分泌です。
そのうち、薬の服用に関係するのは解毒、分解です。
身体に入った異物(薬や有害物質など)は、肝臓に多いシトクロムP450という酵素によって代謝され、活性を失わせたり、水に溶けやすい形に変換して、尿や便、汗といっしょに身体の外へ排出されます。

薬物代謝酵素には様々な種類がありますが肝臓に局在し、薬物代謝で最も重要な酸化反応を触媒する酵素がシトクロムP450です。
シトクロムP450は哺乳動物だけでなく、植物や微生物も持っていると言われています。通常、酵素は働きかける相手(基質)を限定していますが、シトクロムP450は選り好みせず、ほとんどの薬に作用します。
シトクロムP450が働くと活性酸素が発生します。この活性酸素が肝細胞を障害するため、薬をたくさん服用して負担が積み重なると、肝機能の低下や肝障害へと繋がります。
呼吸をしたり、食べ物を摂取したりする必要のある私たちは、異物を全く身体に入れないことは不可能です。生きている限り、肝臓に負担がかからない人はいません。
だからこそ、不調のあるなしにかかわらず、肝臓をいたわることはとても大切です。
イラスト:看護roo!HPより
 

ビタミンと薬

ビタミンは栄養素なので身体は排除するために働くことはありません。
しかし、薬は異物とみなされ、なるべく早く身体の外へ出そうとします。
サプリメントを摂取して肝臓が悪くなるという話を耳にすることがありますが、それはビタミンではなく、薬などの異物を摂取してしまっているからかもしれません。
サプリメントは食事として栄養素を取り入れるものなので、長期的に使用しても身体に負担のかからないものを選びたいですね。

 
 
 
 

 

梅雨の時期は、頭痛やめまいの症状が悪化する人が多くなります。


気圧や温度、湿度など気候の変動に伴い起こる頭痛は「気象病」や「天気痛」とも呼ばれています。


頭痛は、血液に水分が溜まって血管が拡張し、神経を圧迫することで起こるとも言われており、湿度が高く、汗が蒸発しにくい梅雨は、特に頭痛が起こりやすくなります。

頭痛にはいくつか種類があり、気圧の変動を受けやすいのは「片頭痛」と言われていますが、筋肉のこりやストレスが痛みを招く「緊張型頭痛」もあります。

それぞれの特徴は下記のとおりです。

■片頭痛とは?

片頭痛は、頭の片側(または両側)が脈打つようにズキズキと痛む頭痛です。
吐き気や嘔吐を伴うことが多く、頭痛発作中は感覚過敏となって、普段は気にならないような光、音、臭いを不快と感じる方が多いようです。
また、痛みが始まる前に、目の前がチカチカしたり、ギザギザの光やオーロラ、モザイクのような模様が見えたりする閃輝暗点(せんきあんてん)という前兆があらわれる人もいます。
痛みはかなり強く、4〜72時間ほど持続し、身体を動かしたり入浴したりすると悪化することもあると言われています。

片頭痛を誘発する要因は、ストレス、疲れ、緊張、寝不足、過眠、気圧の変化・温度・湿度、生理、更年期、高血圧、副鼻腔炎、空腹、アルコールの過剰摂取など多岐にわたります。


ただし、脳の過敏性が高い人は、気圧や気温といった環境のわずかな変化でも片頭痛に結びつきます。

なぜ片頭痛が起こるのか、まだ明確なメカニズムは明確に解明されていませんが、セロトニンや三叉(さんさ)神経が関係しているのではないかと考えられています。
 

<片頭痛のメカニズム>

 「NHKきょうの健康」より


気圧の変化、ストレス、過労、睡眠不足などの精神的・肉体的なストレスを受けると、セロトニンという神経伝達物質が大量に放出され、脳の血管が収縮して血流が悪くなります。
セロトニンが出尽くして代謝されると、今度はその反動で逆に血管が異常に膨らみます。
脳の血管のまわりには、三叉神経が張りめぐらされているため、血管が異常に膨らむことで三叉神経が圧迫され、その刺激で血管拡張物質であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が放出し、炎症を起こします。その炎症によって片頭痛を発症すると考えられています。


特に、低気圧は、セロトニンの分泌量を不安定にするため、頭痛を起こしやすくなります。

※セロトニン・・・情緒、ストレス、睡眠、覚醒や痛みのコントロールにも関与し、さらに自律神経や血管にも作用し、血圧や脈拍にも影響を与える。

※三叉神経・・・顔の感覚(痛覚、触覚、冷熱感)を察知し、脳に伝える役割を果たす。

※CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)・・・37個のアミノ酸が連なったもの。
頭の硬膜や三叉神経にあり、片頭痛発作時の血管拡張や炎症反応の直接の原因とされている。頭以外にも、心臓、胃腸でも作用しており、代謝、加齢、傷の治癒に関わっているとも言われている。

片頭痛が起きた時の対処法として、静かで暗い環境で休むこと、痛む部位を冷やすことが良いと言われています。


 

■緊張型頭痛とは?

後頭部から首すじにかけて、重苦しい感じや、頭をベルトで締めつけられているような圧迫感が起こる頭痛です。
 

時々起こるもの(反復性緊張型頭痛)とほぼ毎日起こるもの(慢性緊張型頭痛)があり、片頭痛のようにズキズキする痛みや寝込むほど強い痛みではなく、動いても痛みは強くならず、光・音過敏や吐き気もないとされています。


緊張型頭痛の発症メカニズムは明確には解明されていませんが、慢性的なストレスが強い人、首や肩などの筋肉の血行が悪化している人などが発症しやすいと考えられています。
また、睡眠不足や目の疲れ、顎関節症、うつ病なども緊張型頭痛の引き金になることがあるとされています。


主な原因は、頭から背中にかけての筋肉が緊張し、血管が収縮して血流が悪くなることとされています。

 

血流が悪いと筋肉の中に老廃物がたまりやすくなり、それが周囲の神経を刺激して痛みを起こします。


緊張型頭痛は、悪い姿勢や運動不足、デスクワークやゲームなどの長時間の同一姿勢、冷え症の人に多くみられます。

 

また、精神的ストレスも誘因となります。
 

緊張型頭痛は、入浴、マッサージ、ストレッチなど筋肉をほぐし、血流をよくすることによって痛みは軽減されると考えられています。

 

「肩甲骨まわし」もおすすめです。
 

監修:細野クリニック院長 細野 周作 先生

 

頭痛に悩んでいる方は、鎮痛剤を常用されている方も多いのではないでしょうか?


鎮痛剤は、あくまでも対症療法のため、薬の効果で一時的に痛みは緩和しますが、痛みの原因まで取り除くことはできません。


それに比べて栄養素は、お薬のような即効性や直接的な働きはございませんが、身体の状態をより良い方向へ整えて健康レベルを上げていくために必要なものとなります。

そこで、三石理論では、頭痛を予防・改善するために下記対策をおすすめしています。

まず、身体のエネルギー代謝を円滑にして、身体に備わった機能を整える必要があります。
そのためには、良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、ミネラル(亜鉛、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅など)などの基本の栄養素の摂取が重要になります。

特に良質タンパクは、組織や代謝酵素などの材料になり、栄養素を運ぶ働きもあるので、他の栄養素をしっかり摂取していても良質タンパクが不足していると、栄養素が身体で働きにくくなるということが考えられます。

頭痛は自律神経の乱れによって起こりやすくなりますので、ビタミンB群(特にB12)、レシチン、ミネラル(カルシウム、マグネシウム)など自律神経の働きをサポートする栄養素を強化することも必要です。

また、血管の収縮・拡張に直接関与しているのが、カルシウム・マグネシウムです。
マグネシウムはカルシウムの血管収縮作用を防ぎ、血管を拡げる作用もあります。

さらに、脳の血流改善のために、ビタミンEやイチョウ緑葉エキスなどの栄養素は大切です。

血液中の脂質が酸化されると血液の粘度が上昇し、脳の酸素欠乏を招き、痛みにつながりますので、脂溶性の抗酸化成分であるビタミンEの摂取は特に重要です。

※三石巌はビタミンEの働きについて、次のように述べています。
ビタミンEには、不飽和脂肪酸の過酸化物を還元して、元の不飽和脂肪酸に戻す作用もあるといわれる。

血中の過酸化脂質の濃度は、ビタミンEの存在によって減少するはずだ。
そこで、血液は流れ、頭痛が治るのは当然という論理になる。


慢性的な炎症やストレス、お薬の服用などにより、活性酸素の発生量が多くなります。
ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、植物ポリフェノール、イチョウ緑葉エキス、カロチノイドなどは活性酸素対策に必要な栄養素です。

頭痛の原因の一つであるストレスが生じると、体内では抗ストレスホルモンを合成し対抗します。

抗ストレスホルモンの合成には、良質タンパク、ビタミンC、ビタミンEが必要です。
これらの栄養素が不足すると、ストレスに対応できなくなり、身体は負担を受けやすくなります。

特にストレスが多い時には、強化してお摂りください。

慢性化している頭痛は、睡眠不足や姿勢などが影響している場合もありますので、日常生活の見直しもしてみましょう。

参考)
頭痛の診療ガイドライン2021(一般社団法人 日本頭痛学会)

 

 

 

●血管と血流

 

血液の通路である血管には、動脈、静脈及び毛細血管の3種類があります。

心臓の拍動によって押し出された血液は、「動脈」の中を流れて、体の末端まで送られます。

動脈は枝分かれして細くなり、全身に網の目のように配置される「毛細血管」へと続きます。

体のそれぞれの組織・器官は、付属する毛細血管網によって養われています。

 

血管と聞くと、動脈や静脈を思い浮かべることが多いかも知れませんが、全身に張り巡らされている血管の99%を占めるのは毛細血管です。

心臓を出たばかりの動脈を流れる血液のスピードは秒速約50㎝なのに対し、毛細血管は約0.1~1.0mmといわれています。

動脈の1000分の1のスピードでゆっくり流れながら、周辺の細胞に酸素や栄養物質を届けています。

 

また、毛細血管の内径は、赤血球の直径とほぼ同じか、それよりも小さいのが普通です。

そこで赤血球は変形し、血管壁に密着しながら流れます。

赤血球膜と血管壁が触れあう面積が大きいことは、酸素と二酸化炭素のガス交換に有利です。

 

「静脈」は、末梢からの血液を心臓へと返す通り路になっています。

 

●内皮細胞のはたらき

 

動脈と静脈、そして毛細血管は、その役割に適した構造をしていますが、いずれもその管の内側には、「内皮細胞」がタイルを貼ったように並んでいます。

この「血管内皮細胞」については、血液と接する物理的な壁としてしか認識されていない時代が続きましたが、「血管生物学」の発展によって、多彩な機能があることが分かってきています。

 

特に、毛細血管の内皮細胞の配列は、組織・器官によって、

「かなり密着したもの」

「隙間のあるもの」

「小さな穴を持つもの」

などがあり、それぞれの場所での物質の透過性を維持しています。

 

例えば、脳では内皮細胞には穴はなく、内皮細胞同士がぴったりとくっ付き合っています。

この場合、必要な物質(グルコースなど)は、輸送タンパク(グルコーストランスポーター)で運び込みます。

このような仕組みは、脳を守ることに役立っています。

 

また、腎臓の糸球体を構成している毛細血管には大きな穴があり、それが基底膜を通ってろ過され尿になります。

肝臓や脾臓の血管でも、内皮細胞にたくさんの穴が開いています。これらの臓器の機能には、血液の自由な移動が必要なためです。

 

内皮細胞は、このように組織と血液の間での物質の移行を調節します。

さらに、血液の凝固を抑制したり、血管を拡張させたりして、血栓を作らないようにも働きます。

また、リンパ球や好中球やマクロファージなどの免疫担当細胞との相互作用によって、生体防御の役割も担っています。

 

●炎症対策の必要性

 

内皮細胞は酸化ストレスや免疫反応により傷付くので、日常の栄養対策が必要です。

酸化ストレスとは、体内の抗酸化と酸化とのバランスが崩れた状態をいいます。

 

呼吸によって取り込んだ酸素は、外部からの様々な刺激(紫外線、放射線など)を受け、反応性の高い「活性酸素」に変化します。

活性酸素は、白血球などが取り込んだ細菌を殺菌するためなどに作られますが、過剰な産生は細胞を傷害し、様々な疾患をもたらす要因となります

 

活性酸素は、DNA鎖を切断し、遺伝情報を変えてしまうことにより、異常なタンパク質を作ります。

また、タンパク質に化学変化を起こし、活性を低下させたり、脂質に損傷を与えて細胞膜をもろくしたりして、細胞の機能を低下させます。

生体は、活性酸素を消去するための防御システムを備えており、活性酸素を分解する種々の「酵素」を持っています。

代表的な酵素として、SOD(スーパーオキシドジスムダーゼ)やグルタチオンペルオキシダーゼが知られています。

 

生体内の多くの酵素は、その働きを発揮するために、タンパク質以外の成分を必要とします。

SODは銅・亜鉛・マンガン、グルタチオンペルオキシダーゼはセレンが構成成分となり、酵素の機能を活発にさせます。

 

しかし、SODなどの合成能力が低下している場合や、活性酸素の発生量が増大している場合には、外から抗酸化成分を摂取して不足分を補うことが大切です。

ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、カロチノイド、フラボノイド、ポリフェノールなどは、活性酸素を安定化させる抗酸化成分です。

 

三石巌の著書によく出てくる「スカベンジャー」とは、英語で“掃除屋”を意味し、活性酸素の除去に働く様々な抗酸化成分のことを指しています。

スカベンジャーは、それぞれ体内で働く場所や働き方が違うので、できるだけいくつかの種類を組み合わせて摂ると、体内の抗酸化ネットワークを強固にすることができます。

 

本格的な夏を迎える前に、抗酸化対策をしっかり行い、血管や血流を健全に保ちましょう。

<参考>

 

 

「細胞のはたらきがわかる本」(岩波ジュニア新書)