分子栄養学のススメ -2ページ目

分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

●かゆいとかいてしまうのはなぜ?
 

かゆみは、体を守る防衛反応の一つです。

皮膚に異物がくっつくと、かゆみとして感じ、違和感や異常が生じている部分を知らせてくれます。

「かいたり」「ひっかいたり」するのは、その異物を取り除こうとする行為といわれます。

※1940年代にシカゴ大学のステファン・ロスマン博士によって、「かゆみはひっかきたくなるような不快な感覚」と定義されました。
 

●かゆみの発生

皮膚が異物によって刺激を受けると、肥満細胞(マスト細胞)などから、かゆみを起こす物質(ヒスタミンなど)が放出されます。

この物質が、かゆみを伝える神経の末端にある受容体(レセプター)に結合すると、電気信号に変換されます。

 

電気信号を受け取った脳は、かゆみを認識します。

かゆみの刺激を受け取ったのは皮膚ですが、実際にかゆみを感じているのは脳ということになるのです(下図)。

 

アトピー性皮膚炎や老人性乾皮症などでは、知覚神経線維が表皮内へ入り込み、マスト細胞とともにその密度を増やしていることが分かっています。

下図のように、神経が表皮まで伸びてくると、小さな刺激にも過敏に反応して、かゆみを感じてしまうことになります。

これは、かくことで皮膚のバリア機能が壊れてしまうことが原因の一つといわれています。

 

●かゆみを起こす様々な原因


 

上記以外にも、入浴などで皮膚温が上昇したときには、神経が刺激を感じ易くなっています。


分泌された汗が角質層に拡がってじっとりした感じになると、表皮への汗による刺激がはじまります。


イライラするなどの情動による発汗も、かゆみ刺激の元になることが知られています。 


就寝時には、大脳の活動レベルが下がっているため、かゆみ刺激を受け易くなります。


肌着を脱いだときには、毛根の毛包を取り巻く非常に敏感な神経が刺激されます。 

“かく”という行為がかゆみを強める場合もあります。

 

かゆみの対策としては、
日常生活において上記のような刺激を少なくすることと、

皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を補うスキンケアおよび、

栄養条件を整えることが大切です。
 

●バリア機能と栄養素

細胞間脂質を構成する「セラミド」や、潤いを保つ「NMF(天然保湿因子)」などの因子は、角化の過程で作られています。
そのため、皮膚の潤いが適度に保たれるためには、角化が正常に行われることが大切です。

良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ミネラル(亜鉛、鉄、カルシウム、マグネシウム等)などの成分は、代謝機能を正常化していくために、必要不可欠なものですが、さらに、皮膚の材料としても重要です。

●これからの季節は乾燥に注意

私たちの生活には大気に適度の湿り気があることが必要条件ですが、皮膚の生理機能には特に重要です。


角質層は大気から水分を吸収して、それを保持します。皮膚の柔らかさや滑らかさは、それによって生まれています。

吸収された水分子は、角質細胞の層の間を埋めている細胞間脂質や天然保湿因子との結合水として留まります。

夏から秋になると気候の変化によって、皮膚が乾燥してかゆみの症状が出やすくなりますが、かく前に少し冷やすことでかゆみが治まることも多くあります。


これは、脳は同時にいろいろな刺激を受け取ると、優先順位をつけて情報を処理するためで、かゆみは温度覚よりも下位に位置しているのです。


冷やしてかゆみが治まったら保湿クリームやビタミンEオイルなどを塗布し、乾燥を防ぎましょう。


栄養素では、ビタミンC、ビオチン(ビタミンB群)、ポリフェノール、フラボノイドなどの抗ヒスタミン作用のある成分の摂取をお勧めします。

参考:「かゆみをなくすための正しい知識」(毎日新聞出版)
 

 

コラーゲンと聞くとハリのある皮膚に必要なものと思われがちですが、実はコラーゲンは身体の中のタンパク質の1/3を占めています。

今回はコラーゲンの働きについてご紹介します。


コラーゲンとは

コラーゲンとは約1000個のアミノ酸が繋がったタンパク質の一種です。
このタンパク質の特徴の一つはトリプトファン・フェニルアラニンの2つのアミノ酸を含まないことです。また、グリシンというアミノ酸が飛びぬけて多いことも特徴の一つです。
コラーゲンはアミノ酸が繋がったポリペプチド鎖がらせん状に3本寄り集まった構造をしています。この構造がコラーゲン繊維の強度の基となっており、鋼鉄より強いと言われています。


コラーゲンは現在、Ⅰ型〜ⅩⅩⅨ型の29種類が発見されています。そのすべてがコラーゲン三本らせん構造を含んでおり、細胞外に存在しています。
そのなかでもⅠ型〜Ⅴ型が体内のコラーゲンの90%を占めています。

コラーゲンは結合組織の主成分のタンパク質です。
結合組織とは身体や臓器の支持、補強、結合、境界形成などの役目を持つ組織で、骨、軟骨、皮膚、腱などのように独立した組織として、また、心臓、筋肉、肝臓などの全身のあらゆる器官に存在して細胞を取り巻く環境を形作っています。
 

コラーゲンを飲んでも意味がない?
 

コラーゲンはアミノ酸がつながったタンパク質なので、口から摂取するとタンパク質分解酵素によってコラーゲンはアミノ酸やペプチドに分解され、吸収されます。
そのため、コラーゲンは摂取してもコラーゲンとして吸収されるわけではありません。コラーゲンとして使われなくても、体内でコラーゲンを作る材料としては使われます。
また、ペプチドの状態で吸収されたコラーゲン(コラーゲンペプチド)は線維芽細胞の増殖を促進すると報告されており、コラーゲンペプチドの経口摂取が全身の臓器の維持に働く可能性が示唆されています。
 

 

コラーゲンを身体の中で作るには?
 

コラーゲンは線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨芽細胞、象牙芽細胞、線維随伴細胞などによって合成されます。また、上皮細胞や平滑筋細胞にもコラーゲンを合成する能力があると言われています。
コラーゲンを作るためにはタンパク質、ビタミンC、鉄などの栄養素が必要になります。
特にビタミンCはコラーゲンの3重螺旋構造を作るうえで重要な働きをしています。

 

加齢によるコラーゲンの変化
 

コラーゲンは線維と線維が架橋構造によって繋がることにより強度を保っています。
この強度が、弾力やしなやかさの基になっているのですが、加齢とともに皮膚や血管などが弾力やしなやかさを失う原因は架橋構造にあります。
コラーゲンの強度を保つ架橋構造は加齢とともに増加していきます。

架橋構造が増加することによりコラーゲンの弾力性が失われ、皮膚のしわやたるみ、血管が硬くなったり、骨が脆くなったり、軟骨は弱くなったりと身体全体で様々な障害が起こるようになります。
コラーゲンの劣化を防ぐためには、コラーゲンが滞りなく合成できるようにタンパク質、ビタミンC、鉄などの材料を準備しておくこと、加齢とともに増加する活性酸素をしっかり除去するためにビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、カロテノイド、植物ポリフェノールなどの抗酸化物質を摂取することが大切です。

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参考

 

 


〇Shoulders MD et al. Annu Rev Biochem 2009; 78: 929-958.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2846778/

〇藤本大三郎、コラーゲンの生化学-最近のトピックス.化学と生物. 23(8)496-502(1985)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/23/8/23_8_496/_pdf/-char/ja

〇野口知里ほか、20代から50代日本人女性における食事由来コラーゲン推定摂取量の特徴.栄養学雑誌. 70(2)120-128(2012)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi/70/2/70_2_120/_pdf

〇生体内コラーゲンと代謝サイクル
https://ebn2.arkray.co.jp/academicinfo/collagen/anti-aging-02/

 

夏は、汗と一緒に鉄分が流れ出てしまうことに加え、食欲低下から貧血になりやすい季節とも言われています。


貧血とは、赤血球数の大部分を占める「ヘモグロビン」濃度が低下した状態のことです。


ヘモグロビンとはタンパク質の一種で、主に鉄を含む「ヘム」とタンパク質の「グロビン」が結合して作られています。


ヘモグロビンは、肺から取り込まれた酸素を全身の組織や臓器に運搬する役割を担っているため、貧血になると身体が酸素不足に陥り、倦怠感、動悸、息切れ、食欲不振などの症状が起こりやすくなります。


貧血にはいくつか種類があり、骨髄中の造血幹細胞が障害されて起こる「再生不良性貧血」、ビタミンB12や葉酸が不足して起こる「巨赤芽球性貧血」などがありますが、貧血の多くは、体内の鉄が不足することで起こる「鉄欠乏性貧血」と言われています。


<鉄欠乏性貧血の主な症状>

 

また、鉄は皮膚のコラーゲン線維の生成にも必要なミネラルのため、鉄が不足すると肌荒れなども起こしやすくなります。

 

■鉄欠乏性貧血の原因

鉄の喪失(月経過多、消化管出血)
鉄需要の増大(成長の著しい小児、妊娠中)
タンパク質・ビタミン(ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビタミンC)、ミネラル(鉄、亜鉛、銅)の摂取量不足(偏食、胃全摘後や萎縮性胃炎に伴う鉄吸収障害)などがあげられます。

 


■鉄の吸収と喪失 

~鉄は一定になるように制御されています~

 

イラスト「看護roo! (山田幸宏編著:看護のための病態ハンドブック。改訂版、p.582、医学芸術社、2007より改変)」

 

体内には約3〜4gの鉄が存在し、赤血球を構成しているヘモグロビンの中に特に多く存在します。


次に多いのが、肝臓、骨髄、脾臓などに貯蔵されているフェリチンと呼ばれる貯蔵鉄で、ヘモグロビンが不足するとこの貯蔵鉄から鉄が補給されます。


その他にも、筋肉に存在するミオグロビンや体内の代謝に関わる酵素などの中に存在しています。


食事などで1日10㎎の鉄を摂取した場合、約10%の1mgが小腸から体内に吸収されます。


一方で、体内に存在する鉄は約1mgくらいが便や尿、消化管上皮細胞の脱落や汗などで排出され、体内の鉄は一定になるように制御されています。


ただし、女性は月経によって鉄が失われるため、鉄不足に陥りやすくなります。


そこに、極端なダイエットや偏食などが加わると、鉄の摂取が追いつかず鉄不足=貧血に繋がります。


このほか胃・十二指腸潰瘍や消化器系のガン、痔、ポリープ、子宮筋腫などによって慢性的な出血があると鉄欠乏性貧血になりやすくなります。

 

■貧血を予防する栄養素 

良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ミネラル(鉄、銅、亜鉛)

・良質タンパク

上述のように、タンパク質は血液中の赤血球やヘモグロビンの材料となるため、タンパク質が不足すると、造血のレベルが低下します。

 

◎質の良いタンパク質の摂り方についてはこちらをご覧ください。

 

 

・ビタミンA

細胞分裂を正常に調節する働きを担っているため、正常な赤血球を合成するためには欠かせません。

・ビタミンB群

ビタミンB群は造血に幅広く関与していますが、その中でも特に欠かせないのがビタミンB2、B6、B12、葉酸です。


赤血球は骨髄で生成されますが、最初に赤芽球という赤血球のもとになる母細胞が作られ、それが細胞分裂することで作られていきます。
このときに必要となるのが、葉酸、ビタミンB12です。

葉酸やビタミンB12が不足すると赤芽球の細胞分裂がうまくいきません。

 

・ビタミンC

ビタミンCは、造血を円滑にするために必要な栄養素です。
また、吸収しにくい非ヘム鉄を吸収しやすい形に変換したり、葉酸を活性型(働きやすい形)に変換する酵素の働きをサポートしたりすることで鉄や葉酸の吸収にも協力的に働いています。

 

・ミネラル(鉄、銅、亜鉛) 

~ミネラルはバランスが大切~

体内では、ミネラル同士がバランスをとりながら存在しています。
鉄だけを大量に摂取すると、亜鉛や銅の吸収が妨げられ、亜鉛と銅は血液中でどちらかが多いともう一方の吸収を阻害してしまいます。
摂取にはバランスが要求されます。

 

・鉄 

鉄はヘム鉄、非ヘム鉄の2種類に分けられる

肉や魚などの動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、野菜、海藻類、豆類などの植物性食品や卵などに含まれる「非ヘム鉄」の2種類に分類されます。


この2つは体内への吸収率が異なり、消化管からの吸収率は、ヘム鉄は非ヘム鉄の5〜6倍と言われています。


「非ヘム鉄」は良質タンパクやビタミンCを多く含む食品と一緒に摂取することで吸収率がアップします。


また、胃酸によっても吸収が促進されるので、ゆっくりよくかんで食べることも大切です。


一方で、コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるタンニンや玄米に多く含まれるフィチン酸は吸収を阻害すると言われています。

 

・銅

造血に欠かせない栄養素で、鉄の利用を助ける働きがあります。
鉄を強化しても貧血が改善しない場合は、銅不足も合わせて考える必要があります。

 

・亜鉛

ビタミンB12や葉酸のようにDNAの合成に関わりますので、細胞増殖には欠かせません。

貧血予防のためには、良質タンパクはもちろんのこと、赤血球の合成にかかわるビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビタミンC、亜鉛、鉄、銅などの摂取が重要です。

以上のことから、身体の働きを考えると「貧血には鉄」というように単純ではないことがお分かりいただけると思います。

夏バテだと思っていたら貧血になっていたということが起こらないように、普段から貧血を予防する栄養素も積極的に摂取しましょう。