分子栄養学のススメ -14ページ目

分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

●なぜ、汗をかくのでしょう

 

私たちの体は、外界の温度変化に左右されず、体温の恒常性(ホメオスタシス)を維持しなければなりません。

 

この恒常性は、「体熱の産生」「体熱の放散」のバランスを一定に保つことで成立しています。

下図は、体温維持のしくみを表しています。

 

 

汗の量は、体温の変化を反映して絶えず変動しています。

平均すると、600~700ミリリットルとのデータがありますが、夏季は、安静に過ごした場合でも、成人で1~2リットルの汗をかくともいわれます。

 

皮膚の温度受容器が、体温が上昇したという情報を受けると、「体温調節中枢」は、汗腺に送る信号を増やして、汗の量を増やします。

このような身体の冷却に関わる汗を「温熱性発汗」といいます。

 

また、怒りや驚きなど精神的ストレスに反応して起こる汗を「精神性発汗」、激辛料理を食べた時にかく汗を「味覚性発汗」と呼んでいますが、これらは体温調節には関与しません。

●汗の成分

 

汗を分泌する腺 (エクリン汗腺)は、広く全身に分布しています。その数は、200万~400万個に及ぶといわれています。

 

汗の99%以上が水ですが、それにわずかな無機物(ナトリウムなどの電解質)や有機物(尿素、尿酸、ブドウ糖、アミノ酸など)が溶解しています。

 

汗は血液を原料に作られているので、血液に含まれている物質はほとんど含まれていますが、一部(ナトリウムイオンやカリウムイオンなど)を除いて、その濃度は低くなっています。

 

アポクリン汗腺は毛孔に開いており、思春期に活動が高まります。

アポクリン汗腺から出る汗は、どの部位でも極めて少量ですが、その分泌は精神的な要因に影響されるといわれます。

●加齢による汗の変化

 

<高齢期の汗>

加齢による汗の減少は、個々の汗腺の分泌能が低下することが原因と考えられています。

 

汗腺の加齢変化は分泌部で特に著しく、分泌細胞は変形して縮小したり、内部に変性が生じることが分かっています。

さらに、汗腺周囲の血管数が減少したり、分布する発汗神経も小さくなることが知られています。

 

また、汗の塩分濃度は、一般に加齢とともに高くなることから、高齢になるほど塩分喪失が起こり易くなることも、留意しておく必要があります。

特に、これからの季節は、気温が高くなり、汗の量が増大するため、水分や電解質の不足が起こり易くなります。

 

良質タンパクを土台に、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、ミネラルなどを十分に摂取し、全体的な栄養摂取のレベルを上げ、

・代謝の正常化

・水分の吸収や調整などを行う腸や腎臓の機能維持

・血液循環のサポート

・自律神経のバランス維持

などを心がけることが大切です。

<更年期の汗>

女性の更年期は、閉経を挟んだ前後10年間を指します。

平均的には、45~55歳が更年期ということになります。

 

この時期は、卵巣機能の低下により女性ホルモン(エストロゲン)が減少し、自律神経のバランスが崩れ、様々な症状を引き起こします。

これらのうち、発汗(寝汗)やのぼせなどは、体温調節の機能が関わった症状です。

 

閉経期になって、エストロゲンの血中濃度が低下すると、エストロゲンの分泌量を増やそうとして、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)の分泌量が増えます。

 

このGnRHには、体温の基準温度を下げる働きがあります。

脳内の体温調節中枢は、下がった基準温度に合わせて、現在の体温を下げようとするため、皮膚の血管拡張(のぼせ)や発汗が起こります。

そして、この症状はGnRHが分泌されるごとに、繰り返し起こります。

 

また、イライラや不安を感じると、交感神経が優位になってストレス状態となり、「精神性発汗」も加わるケースも出てきます。

 

女性ホルモンを分泌する組織である卵巣機能の維持と、ホルモン分泌の調整に関わる栄養素は、良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛、マグネシウムなどです。

 

また、自律神経のバランスを整えるためには、アミノ酸(トリプトファン、チロシンなど)、ビタミンB群、カルシウム、マグネシウム、レシチンなどの栄養素が重要です。

 

とても身近な生理現象である「汗」について、簡単にまとめましたが、本格的な夏に向けては、汗の機能を向上させることも大事です。

 

汗をかき易くなって、汗の量が増えると、汗の塩分濃度も低下して、サラサラの「いい汗」が出るようになるといわれます。

 

この体の変化が熱中症予防にもつながります。

いい汗をかくための対策については、こちらをご覧ください。

 

<参考書籍>

「みるみる身につくバイタルサイン」(照林社)

「好きになる生理学ミニノート」(講談社)

「汗はすごい」(ちくま新書)

 

寝具で有名な西川株式会社では2018年から全国の18〜79歳の男女を対象に睡眠に対する意識・満足度を調査し、ホームページで公表しています。
日本人1万人の睡眠事情を調査した「西川睡眠白書 2021」では全体の49.9%、約半数の人が不眠症の疑いが高いとされています。
今や不眠症大国日本と言えるまでになっています。

出典【西川 睡眠白書2021~日本人の睡眠調査~】

 

不眠の原因とは
不眠とは、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害などの睡眠問題が1ヶ月以上続き、日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する状態のことを言います。
不眠の原因はストレス・こころやからだの病気・クスリの副作用などさまざまで、原因に応じた対処が必要です。
スマートフォンやタブレットを見る時間が増えた現在では、寝る直前まで画面からの光を受けることにより脳が覚醒してしまい睡眠障害を引き起こす原因の一つとされています。
また、上記の調査では、「肉体的疲労」より「精神的疲労」が睡眠の満足度を低下させるという結果も出ています。

不眠が続くと今日も眠れなかったらどうしようというような不眠に対する恐怖が生じ、緊張や睡眠状態へのこだわりのために、なおさら不眠が悪化するという悪循環に陥ってしまいます。
また、暑さ寒さや部屋の明るさなどの環境的要因や、悩みごとやイライラなどの精神的要因、また痛みやかゆみなどの身体的要因、さらにコーヒーなどのカフェインやアルコールといったさまざまな要因も睡眠に影響を与えます。
通常、体温が下がると眠くなりますが、暑い時期にエアコンの効いた部屋に長くいると体温の調節ができにくくなり、なかなか体温が下がらないことも不眠につながります。

 

 

 

寝酒は逆効果?!
アルコールを飲んで眠くなったり、眠りやすいと感じたことがあるのではないでしょうか?
しかし、その様な効果ははじめの数時間程度でその後は眠りが浅くなっていきます。
これはアルコールが代謝されてできるアセトアルデヒドの覚醒作用によって浅い眠りになってしまうためです。
また、アルコールの利尿作用によりトイレにおきる回数が増えたり、水分不足によりのどが乾いたりすることも睡眠の質を悪くする原因となります。

 

引用【地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪精神医療センターHP】
健康な方がお酒を飲んで寝るのは問題ないと思いますが、不眠で悩まれている方はアルコールが不眠を助長してしまうことを知ることが大切だと思います。

 

 

 

 

不眠の栄養対策
睡眠のリズムを正常に保つためには、まず身体の機能を正常に近づけていく必要があります。
そのためには、良質タンパク、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、コエンザイムQ10、ミネラルなど、代謝レベルの向上に必要な栄養素を不足なく摂取することが大切です。
入眠物質の1つとして知られるメラトニンは、アミノ酸のトリプトファンからセロトニンを経て合成されます。トリプトファンは、体内では合成できないため、トリプトファンを多く含む乳製品(牛乳・チーズなど)や大豆製品、肉、魚などの食品の摂取によって、安定したメラトニン合成を促すことにつながります。その他、合成には共同因子としてビタミンB群、マグネシウム、鉄、セレン、コエンザイムQ10などが必要です。
 神経の働きを正常に保つためには、各種神経伝達物質が不足なく作られている条件を整えることが大切です。そのためには、必須アミノ酸(トリプトファン、チロシンなど)、ビタミンB群、ビタミンC、レシチン、ミネラル(カルシウム、マグネシウム)などの栄養素が大切です。

 

 

 

 

三石巌の書籍より
三石巌全集10『脳と栄養を考える』より不眠に関する部分を抜粋して記載します。少しでも参考にしていただけますと幸いです。

 

不眠について
R大学医学部の薬剤部長T夫人が、不眠になやまされていた。それで、その地の講演会の後で、私に指示をもとめた。そこで私は、ビタミンB12とコエンザイムQ10との大量投与をすすめた。彼女は恐らく、副作用を恐れるあまり、催眠薬に手を出さないでいたのであろう。私の思惑はみごとにあたった。T夫人の不眠の悩みは一挙に解決したのである。
睡眠誘発物質は、神経伝達物質の一つのセロトニンである。この神経ホルモンはニューロンのなかで、アミノ酸トリプトファンからつくられる。その合成代謝酵素の助酵素として、ビタミンB12、あるいはコエンザイムQが要求されたのであろう。そのどちらか一方が要求されたのではなく、両者が要求されたのかもしれないが、私にはその真相をあばく手段の持ち合わせはない。
じつは、セレンを投与して不眠をなおした例もある。不眠をかこつ人でなくてもセレンによって眠りが深くなった、と経験を語ってくれた人もいる。
私見によれば、酵素のふくむイオウがセレンに置換されたとき、酵素の活性が高まる。それがセロトニンを合成する代謝の酵素であったとすれば、この神経ホルモンが容易につくられることになる。もしこれが正しいとするなら、セレンによって不眠が解消することの説明がつくだろう。


不眠で病院を受診するとほとんどの場合、睡眠薬や抗不安薬を処方されると思います。
しかし、そういったお薬は深い睡眠を少なくし、浅い睡眠を長くするため、疲れが取れず、朝起きてもすっきりしないことが多いようです。
まずは、栄養状態を整え、生活リズムを見直してみることが良い眠りへの第一歩ではないでしょうか。

----------------------------------------------------
参考
快眠ジャパンHP
https://www.kaimin-japan.jp/mechanism/index/

西川株式会社HP
https://www.nishikawa1566.com/company/laboratory/

 

 

 

 

 

 

 

ひざ痛が起こるメカニズムは、ひざ関節の構造に深く関係しています。


■ひざ関節の構造

ひざ関節は、「大腿骨(だいたいこつ)」「脛骨(けいこつ)」「膝蓋骨(しつがいこつ)」で構成され、脛骨の外側には「腓骨(ひこつ)」が寄り添うように存在しています。
硬い骨同士がぶつからないように、大腿骨と脛骨は「軟骨」※1で覆われており、ひざ関節を動かしたときの摩擦を軽減するのに役立っています。
また、大腿骨と脛骨の間は「靱帯」で繋がっており、そのすき間には、板状の軟骨「半月板」が存在し、大腿骨と脛骨の間でクッションの役割を果たし、関節にかかる体重の負荷を分散させています。

さらに、ひざ関節は「関節包」に完全に包まれています。
関節包は、関節の動作を可能にするほど柔軟でありながら、関節全体を1つにまとめるほど丈夫です。
関節包の内側は、「滑膜」で覆われており、滑膜から分泌される「関節液(滑液)」※2が、関節の潤滑剤の働きをしています。


さらに、ひざ関節を曲げたり伸ばしたりするためには、筋肉も重要な働きを行います。
ひざ関節のまわりの筋肉(大腿四頭筋など)は、ひざの関節・腱・骨などを支えて、ひざの動きを安定させる大切な役割があります。

これらの働きによって、ひざ関節はスムーズに動くことができます。
 

※1 軟骨
60〜80%は水分が占め、残りの約20%は繊維質のコラーゲン、タンパク質に糖が結合した糖タンパクの一種であるプロテオグリカン(コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸など)ヒアルロン酸などで構成され、水分量が多いのが特徴です。
関節にかかる体重を吸収して、関節の動きを滑らかにする働きがあります。
ただし、血管、リンパ管、神経が通っていないため、一度傷つくと中々回復しません。


※2 関節液(滑液) 
ヒアルロン酸と糖タンパクを豊富に含んでいます。
関節の動きを滑らかにするとともに、血管のない軟骨細胞への酸素・栄養分の供給、老廃物の排出などの役割を果たしています。

※滑膜が血液から栄養を取り込む→関節液を作る→関節液(滑液)を放出して軟骨に栄養を与える→古くなった関節液を吸収して、関節液量のバランスを調整。

■どうして痛みが起こるの?

 

ひざの痛みは、怪我・損傷、変性、炎症等などが原因で起こります。
その中でも8〜9割を占めているのが「変形性膝関節症」です。
変形性膝関節症の発症や進行には、様々な要因が関係しています。
 

※体重増加は、ひざ痛の最も大きな要因です。
年齢とともに体重がどんどん増えている人は要注意です。
歩くときには体重の2〜3倍、 階段の上り下りをするときには6〜7倍もの負荷がかかっています。
体重が3㎏増えると、ひざへの負担は10㎏増えると言われています。

変形性膝関節症は、関節軟骨が変性し、すり減るために起こります。


 
すり減った軟骨の砕片は滑膜に取り込まれて「滑膜炎」を起こします。
炎症により、関節液(滑液)のヒアルロン酸が分解されることにより、粘り気や弾力性が低下してしまいます。
膝に水がたまることがありますが、これは炎症を起こした滑膜から関節液(滑液)が過剰に分泌されるために起こります。
炎症を起こした滑膜からは、さらに炎症を誘発する物質が放出され、軟骨の変性を進行させます。
軟骨に変性が進行する一方で、その周辺では骨や軟骨の増殖が起こり、とげ状の骨隆起(骨棘)が形成されていきます。 
この骨棘による炎症も滑膜炎を悪化させる原因になります。
こうして悪循環が起こり、変形性膝関節症が進行します。
 
そこで、ひざの痛みを予防・軽減するためには、
・関節の機能維持
・軟骨の生成促進
・関節炎の抑制
・血流改善
・関節まわりの筋肉強化
などにつながる「栄養素の摂取」と「適度な運動」が必要です。
 
・関節の機能維持
良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ミネラル(亜鉛、銅、鉄)など

・軟骨の生成促進
良質タンパク、ビタミンA、ビタミンC
上記のとおり、軟骨は、コラーゲンで骨組みをつくり、その隙間にプロテオグリカン集合体(コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸など)、ヒアルロン酸などが隙間を埋めるように存在しています。
コラーゲンの合成には、良質タンパク、ビタミンCが欠かせません。
また、プロテオグリカンの「プロテオ」はプロテインつまりタンパク質、「グリカン」は多糖類を意味します。
ビタミンAは、糖と糖をつなぎ合わせる働きを担っていることから、多糖体をつくる作業に必要不可欠な栄養素です。

・関節炎の抑制
ビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノール、セレン、イチョウ緑葉フラボノイド、コエンザイムQ10、カロチノイド など

軟骨には、血管がないので、血液によって栄養が運ばれることはありません。
関節軟骨は、関節液(滑液)から栄養を摂り入れ、関節を動かすことで関節液が浸透し栄養が補給されます。
滑膜の炎症が治まれば、関節液も引いてくる可能性があります。

・血流改善
ビタミンE、緑葉イチョウ葉フラボノイドなど

・関節まわりの筋肉強化
良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、セレン、クロムなど

筋肉には、ひざの関節・腱・骨などを支えて、ひざの動きを安定させる大切な役割があります。
加齢に伴い、関節周囲の筋肉が減少したり柔軟性が低下して硬くなったりすることで、ひざの痛みにつながります。

痛みが軽い症状のうちに、ひざの体操や適度な運動(ウォーキングなど)をしてできるだけひざを動かしましょう。
 
 
 
ひざが痛いと「動きたくない」とついつい安静にしがちです。
痛いからと動かずにいると、ひざを支える筋力の低下や体重増加をまねき、ひざの負担がさらに増すという悪循環に陥ります。
したがって、関節を動かすことが重要です。
歩くだけで痛みを感じる人は、「らくらく足上げ体操」がおすすめです。