分子栄養学のススメ -15ページ目

分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

ナイアシンは、ビタミンB群の仲間で、糖質や脂質、タンパク質をエネルギーに変える際に必要とされます。

 

不足すると、皮膚炎や嘔吐、下痢、肝機能などに障害が起き易くなったり、だるい、疲れ易い、食欲不振などの症状を招くこともあります。

 

また、アルコールを分解・代謝する際には、ナイアシンを大量に消費するため、愛酒家の方は特に注意が必要です。

 

ナイアシンやニコチン酸という呼び名があるのは?

 

ニコチン酸の発見は、19世紀後半まで遡ります。

タバコの成分として知られるニコチンの酸化によってできる酸であるため、「ニコチン酸」と命名されましたが、特に関心が持たれた訳ではなく、多くの化学物質の一つに過ぎない存在でした。

 

20世紀初頭のアメリカ南部では、ペラグラが爆発的に発生していました。

当時、ペラグラは、トウモロコシを常食としている地域で多発し、皮膚や粘膜や神経などに障害が現れる疾患として、注視されていました。

 

この問題を解決するために本格的な研究が始まると、犬の黒舌病(ペラグラに類似)に、ニコチン酸が有効であることが明らかとなったり、ペラグラ患者を治癒させた成分としてニコチン酸アミドが単離されました。

このようにして、ニコチン酸およびニコチン酸アミドは、抗ペラグラ因子として、認識されていったいきさつがあります。

 

その後、ニコチン酸はニコチンと混同され易いとの理由から、ナイアシンと呼ぶことがアメリカ食糧栄養委員会によって提唱され、1952年に正式承認されると、ナイアシンはニコチン酸と同義語として使用されるようになりました。

 

Nicotinic acid(ニコチン酸)に、n(薬品名の接尾語)をプラス 

  ⇒ Niacin(ナイアシン)

 

現在は、栄養学や生化学の分野で、ニコチン酸とニコチン酸アミドの総称として、ナイアシンと呼ぶことが多いのですが、意味する範囲が異なる場合もあります。

 

 

●ナイアシンは体内でも作られる?

 

私たちの体には、必須アミノ酸トリプトファンからナイアシンを作る経路があります。

1mgのナイアシンを作るのに、60mgのトリプトファンが必要なので、60倍のトリプトファンがいる計算です。

また、この代謝にはビタミンB2ビタミンB6が関わっており、この2つのビタミンが不足すると、ナイアシン作りの反応が妨げられてしまいます。

 

一方で、トリプトファンは必須アミノ酸であるため、タンパク質を構成するアミノ酸として重要な役割を持っています。

必須アミノ酸が1種類でも不足すると、その分を他のアミノ酸で補うことはできず、アミノ酸の利用に支障をきたしてしまいます。

 

食品中のトリプトファンが、ナイアシン供給に回されると、体内のアミノ酸利用の点で不利を生じることになりかねません。

このような弊害を避けるためにも、食品からきちんとナイアシンを摂取するように心がけることが大事です。

 

ナイアシンの多い食品は、カツオ、落下生、マグロ、乾シイタケ、サバ、イワシ、鶏肉、豚肉などです。

特に、魚や肉などには、トリプトファンも豊富に含まれています。

 

これらの食材(動物性タンパク質)を遠ざけていては、ナイアシンの不足も起こり易くなるということを、知っておく必要があります。

 

●ナイアシンの体内での働きや作用は?

 

体内では、補酵素型のNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)および、NADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)に転換され、生体の重要な代謝の多くに関係する酵素の協同因子として機能しています。

 

体内に最も多く存在する協同因子といわれ、関係する酵素の数は約500種類にのぼります。

エネルギー物質ATPを作る代謝や、脂肪酸・ステロイドの合成、薬物代謝の他、遺伝情報の発現や細胞の分化に関わっています。

 

また、ナイアシンは、脳や脊髄の神経の正常な機能にも欠かせません。

精神状態を調節する作用を有することから、「神経ビタミン」とも呼ばれます。

 

以前は、ビタミンB3といわれていたビタミンであり、B群の中では大量に必要とされる栄養素です(「日本人の食事摂取基準」推奨量では、ビタミンB1の約10倍)。

 

精神的に不安定な状態が続き、胃腸が弱く、下痢や便秘を繰り返す場合には、ナイアシン欠乏、そして、良質タンパクの不足を疑ってみる必要があるかも知れません。

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<参考資料>

・高タンパク健康法(阿部出版)

・Vitamin(Japan),75(2),63−71(2001)

・分子栄養学(建帛社)

・ストレスに負けない食べ物(研成社)

コレステロールは身体にとってとても大切な物質ですが、血液検査などで高い値が出ると、食事からのコレステロールの量を減らしたり、薬を服用したりして基準値まで下げるように指導されると思います。
しかし、お薬で下げても食事のコレステロールの量を減らしても根本的な解決にならないだけでなく、お薬の副作用など良くない状況を作りだしてしまうことにもつながります。
コレステロールを悪者とせず、上手に付き合うことが必要です。

コレステロールについてはこちらも併せてご覧ください。
コロナ禍で“コレステロール”が上昇!! | 分子栄養学のススメ (ameblo.jp)

コレステロールの考え方
コレステロールは動脈硬化の原因、血栓の原因など悪役のレッテルを貼られ、できるだけ少なくすることが良いこととされていますが、総量の7〜8割を体内で合成しなければならないほどとても重要なものです。
食事からの摂取量は総量の2~3割でコレステロール値を減らそうと食事からの摂取量を減らしてしまうとその分だけ肝臓が余計に働かなければならなくなり、他にも様々な働きのある肝臓に負担をかけてしまいます。

コレステロールは体重1㎏当たり約1兆個あると言われる細胞の「細胞膜」の材料です。
傷ついた血管や臓器を修復するのになくてはならない栄養素であり、性ホルモン・副腎皮質ホルモン、胆汁の材料としても使われています。
成人の体内には、約100〜120gのコレステロールが存在し、その一部が新しいものと入れ替わることによって、生体機能が維持されています。体内にあるコレステロールは、脳と筋肉と肝臓に各3割ずつ、残りの1割が他の臓器や血液中にあります。
脳には500億~1兆もの神経細胞があり、脳の情報を全身に伝達するためにはコレステロールが不可欠です。神経細胞の電線の役目をする神経繊維を、コレステロールは絶縁体のように被い、脳の情報を素早く正確に身体の隅々へ伝達しています。
また、副腎皮質、性腺、胎盤が合成するステロイドホルモンの材料になります。副腎皮質ホルモン、男性ホルモンのアンドロゲン、女性ホルモンのエストロゲン、プロゲステロンも重要なステロイドホルモンです。
さらに、脂肪の消化に不可欠な胆汁酸もコレステロールから作られます。胆汁酸は肝臓でコレステロールからつくられ、石鹸のように脂肪を水に溶けやすくし、同時に、膵臓からでる消化酵素リパーゼを活性化し、脂肪の消化吸収を助ける働きもしています。

コレステロールはとても重要な働きをしていますが、お薬によって合成量が減り、体内の総量が減ってしまうと細胞膜が弱くなってしまい、血管や臓器の修復やホルモンでの体内の機能調節、脳の神経伝達などコレステロールが関わるすべての部分で様々な問題が起こってしまうのではないかと考えられます。

コレステロールと卵
コレステロール値が高いと、一昔前までは卵は1日1個までと指導されることが多くありました。
なぜ、このような事が言われていたのかというと、ロシアの医学者がウサギを実験台としたコレステロールの実験を行ったことが発端とされています。
ウサギに卵など動物性の餌を大量に与え、血液検査をしてみるとコレステロールの値が異常に高くなっていたとのことでした。
この実験より、卵を食べるとコレステロール値が上がるという話になりました。
しかし、よく考えてみると、ウサギは草食性の動物であり、私たち雑食性のヒトとは代謝が違います。
普段食べているものにコレステロールが含まれていないのに、大量の卵を食べさせたらコレステロール値が上がるのは当たり前のことでした。
その後、国立栄養研究所の研究員たちが1日10個の卵を摂り、卵はコレステロールの大敵ということを証明するために1か月後、2か月後に血液検査をしたところ、コレステロール値は上がっていなかったという実験があります。
卵にはプロテインスコア100のタンパク質があり、卵の黄身にはレシチンがあり、身体にとって大切なコレステロールも含まれています。
コレステロールが高いからと言って卵を敬遠せず、むしろ積極的に摂取することをおすすめします。

 

コレステロールと薬
病院で血液検査を受けてコレステロール値が高いと、とりあえず出しておきましょうとお薬を処方されることが多いと思います。
コレステロール値を下げるお薬には様々な種類がありますが、よく使われるのはスタチン系(~スタチンという名前の薬)のお薬だと思います。
このお薬はHMG‐CoA還元酵素阻害薬と呼ばれるお薬で、体内でのコレステロール合成の律速段階の酵素を阻害する薬です。
この酵素を阻害することにより、体内でのコレステロールの合成を抑制し、血中のコレステロール値を下げることはできるかもしれませんが、それと同時にコレステロールの合成と同じ経路で合成されるコエンザイムQ10、ビタミンD3、ステロイド、性ホルモン、胆汁酸の合成量も減ってしまうと考えられます。
これらはどれも身体にとって重要な物質ですので、お薬の服用によって不足が起きることを頭の片隅に置き、必要に応じて栄養素を摂取する必要があると知っておくことが大切なのではないかと思います。

 

参考資料

 

 

 

■ビタミンDとは


ビタミンDは、油に溶けやすい「脂溶性ビタミン」の一つです。

ビタミンD2〜D7の6種類ありますが、人体に重要なのが植物由来の「ビタミンD2」と動物由来の「ビタミンD3」の2つです。

ビタミンDは「サンシャインビタミン」とも呼ばれ、食事や栄養補完食品から摂る以外に、日光を浴びることで身体の中で合成できます。

そのため、日光に当たる機会が少ないと不足しやすくなります。


■ビタミンDの働き

・健康な骨を作る
ビタミンDは、腎臓で活性化されて、腸管からのカルシウムやリンの吸収を促進します。
これにより、血液中のカルシウムの濃度を高めて、破骨細胞(※)の働きを抑制することで骨を丈夫にし、骨折を予防します。
※破骨細胞とは?
骨の中には、「破骨細胞」と「骨芽細胞」とがあり、破骨細胞が古くなった骨を溶かし  (骨吸収)、骨芽細胞がカルシウムなどを付着させて骨をつくり(骨形成)ながら元通りに修 復します。

ビタミンDが不足するといくらカルシウムを摂ってもカルシウム不足状態となり、子供では「くる病」、大人では「骨軟化症」になる可能性があります。
高齢の方は、ビタミンD不足が長く続くと骨粗鬆症のリスクが高まります。

・筋力の維持と増強
筋肉には、ビタミンDの受容体(レセプター)があり、筋肉のタンパク質合成を促進します。ビタミンDが不足すると、筋トレをしてもタンパク質が取り込まれず、筋力がつきにくいと言われています。

・免疫機能の調節
ビタミンDは、免疫細胞の「カテリジン」や「 β-ディフェンシン」というタンパク質(抗菌ペプチド)の産生能を高め、体内から細菌やウイルスなどの病原体を排除する力を強化します。
また、過剰な免疫反応を抑制し、免疫機能を促進する働きがあります。

これらの働きによって、花粉症などのアレルギー症状の軽減、風邪やインフルエンザ、気管支炎や肺炎などの感染症の発症・悪化予防にもつながります。

新型コロナウイルスの発症・重症化の予防や心疾患、糖尿病、高血圧、自己免疫疾患、ガン、うつなどのリスク低減にも関係していると言われています。

 

■ビタミンDの体内合成と活性化

 

 

※腎臓の機能不全がある場合は、活性型へ変換することができないため、医療機関では活性型ビタミンD(ワンアルファ、エディロールなど)が処方されています。

ビタミンDを体内で作るためには、食事に加えて15分〜30分程度の日光浴を行えば良いと考えられています。
ただし、年齢とともに皮膚におけるビタミンD産生能力が低下するため、食事からの摂取強化が必要になります。
 
■ビタミンDの摂取目安量

厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日の摂取目安量が18歳以上の男女ともに8.5㎍(マイクログラム)、耐用上限量が100㎍と設定されています。
多量摂取を続けると、高カルシウム血症、腎障害などの健康障害が起こる可能性があるため、耐容上限量が設定されています。

■ビタミンDを多く含む食品
ビタミンDは、きのこ類「ビタミンD2」や魚類や卵「ビタミンD3」に多く含まれています。
 
・さけ (70g):22.4㎍
・さんま (1尾 80g):10.4㎍
・サバ (100g):4.9㎍ 
・うなぎ蒲焼 (100g):19㎍
・干ししいたけ (1個 2g) :0.3 ㎍
・舞茸 (10g):0.5㎍
・エリンギ (1本 100g):1.2㎍
・しめじ(100g):1.1㎍
・鶏卵(1個・60g):2.3㎍
参考:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
 
ただし、ビタミンDを多く摂れば良いというわけではありません。
ビタミンDは腎臓や肝臓で活性型ビタミンDに変換されることで効果を発揮するため、肝臓・腎臓などの機能維持が重要です。

そのためには、ビタミンD以外に、良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ミネラル(カルシウム、マグネシ ウム、鉄、亜鉛、セレン、クロム、マンガン、 銅、ヨウ素、モリブデン)などの摂取も欠かせません。

ビタミンD不足に陥らないためには、栄養補完食品を上手に利用していただく方法もおすすめです。