身体にとって大切なコレステロール | 分子栄養学のススメ

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分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

コレステロールは身体にとってとても大切な物質ですが、血液検査などで高い値が出ると、食事からのコレステロールの量を減らしたり、薬を服用したりして基準値まで下げるように指導されると思います。
しかし、お薬で下げても食事のコレステロールの量を減らしても根本的な解決にならないだけでなく、お薬の副作用など良くない状況を作りだしてしまうことにもつながります。
コレステロールを悪者とせず、上手に付き合うことが必要です。

コレステロールについてはこちらも併せてご覧ください。
コロナ禍で“コレステロール”が上昇!! | 分子栄養学のススメ (ameblo.jp)

コレステロールの考え方
コレステロールは動脈硬化の原因、血栓の原因など悪役のレッテルを貼られ、できるだけ少なくすることが良いこととされていますが、総量の7〜8割を体内で合成しなければならないほどとても重要なものです。
食事からの摂取量は総量の2~3割でコレステロール値を減らそうと食事からの摂取量を減らしてしまうとその分だけ肝臓が余計に働かなければならなくなり、他にも様々な働きのある肝臓に負担をかけてしまいます。

コレステロールは体重1㎏当たり約1兆個あると言われる細胞の「細胞膜」の材料です。
傷ついた血管や臓器を修復するのになくてはならない栄養素であり、性ホルモン・副腎皮質ホルモン、胆汁の材料としても使われています。
成人の体内には、約100〜120gのコレステロールが存在し、その一部が新しいものと入れ替わることによって、生体機能が維持されています。体内にあるコレステロールは、脳と筋肉と肝臓に各3割ずつ、残りの1割が他の臓器や血液中にあります。
脳には500億~1兆もの神経細胞があり、脳の情報を全身に伝達するためにはコレステロールが不可欠です。神経細胞の電線の役目をする神経繊維を、コレステロールは絶縁体のように被い、脳の情報を素早く正確に身体の隅々へ伝達しています。
また、副腎皮質、性腺、胎盤が合成するステロイドホルモンの材料になります。副腎皮質ホルモン、男性ホルモンのアンドロゲン、女性ホルモンのエストロゲン、プロゲステロンも重要なステロイドホルモンです。
さらに、脂肪の消化に不可欠な胆汁酸もコレステロールから作られます。胆汁酸は肝臓でコレステロールからつくられ、石鹸のように脂肪を水に溶けやすくし、同時に、膵臓からでる消化酵素リパーゼを活性化し、脂肪の消化吸収を助ける働きもしています。

コレステロールはとても重要な働きをしていますが、お薬によって合成量が減り、体内の総量が減ってしまうと細胞膜が弱くなってしまい、血管や臓器の修復やホルモンでの体内の機能調節、脳の神経伝達などコレステロールが関わるすべての部分で様々な問題が起こってしまうのではないかと考えられます。

コレステロールと卵
コレステロール値が高いと、一昔前までは卵は1日1個までと指導されることが多くありました。
なぜ、このような事が言われていたのかというと、ロシアの医学者がウサギを実験台としたコレステロールの実験を行ったことが発端とされています。
ウサギに卵など動物性の餌を大量に与え、血液検査をしてみるとコレステロールの値が異常に高くなっていたとのことでした。
この実験より、卵を食べるとコレステロール値が上がるという話になりました。
しかし、よく考えてみると、ウサギは草食性の動物であり、私たち雑食性のヒトとは代謝が違います。
普段食べているものにコレステロールが含まれていないのに、大量の卵を食べさせたらコレステロール値が上がるのは当たり前のことでした。
その後、国立栄養研究所の研究員たちが1日10個の卵を摂り、卵はコレステロールの大敵ということを証明するために1か月後、2か月後に血液検査をしたところ、コレステロール値は上がっていなかったという実験があります。
卵にはプロテインスコア100のタンパク質があり、卵の黄身にはレシチンがあり、身体にとって大切なコレステロールも含まれています。
コレステロールが高いからと言って卵を敬遠せず、むしろ積極的に摂取することをおすすめします。

 

コレステロールと薬
病院で血液検査を受けてコレステロール値が高いと、とりあえず出しておきましょうとお薬を処方されることが多いと思います。
コレステロール値を下げるお薬には様々な種類がありますが、よく使われるのはスタチン系(~スタチンという名前の薬)のお薬だと思います。
このお薬はHMG‐CoA還元酵素阻害薬と呼ばれるお薬で、体内でのコレステロール合成の律速段階の酵素を阻害する薬です。
この酵素を阻害することにより、体内でのコレステロールの合成を抑制し、血中のコレステロール値を下げることはできるかもしれませんが、それと同時にコレステロールの合成と同じ経路で合成されるコエンザイムQ10、ビタミンD3、ステロイド、性ホルモン、胆汁酸の合成量も減ってしまうと考えられます。
これらはどれも身体にとって重要な物質ですので、お薬の服用によって不足が起きることを頭の片隅に置き、必要に応じて栄養素を摂取する必要があると知っておくことが大切なのではないかと思います。

 

参考資料