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分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

1.生体膜とレシチン 

 ~生体膜は、ただの仕切りではありません~

 

細胞は、生物の体を作っている一番小さい単位です。細胞膜で包まれた内部には、遺伝子分子DNAを囲いこむ核膜や、ミトコンドリアなどの細胞小器官を備えています。

 

細胞膜も細胞小器官も、その構造はリン脂質を基本にした膜でできていて、この膜を特に「生体膜」と呼んでいます。

生体膜は、細胞の中に必要な物質を取り込んだり、作った物質を出したり、酵素の働きを助けたりする特別な膜です。

生体膜がなかったら、生命は成り立ちません。

生体膜のリン脂質は、コリンを持つもの(ホスファチジルコリン)、イノシトールを持つもの(ホスファチジルイノシトール)、セリンを持つもの(ホスファチジルセリン)などが混合して存在しています。

これらが入れ替わったり、動いたりしながら、生体膜の機能を生み出しています。

 

 

リン脂質の内、一番多いのがホスファチジルコリンです。

レシチンは、狭義にはホスファチジルコリンに対して用いられる学術用語ですが、広義ではリン脂質の混合物の総称として使用されています。

 

生体膜のレシチンが活性酸素などによって酸化されてしまうと、次にタンパク質が狙われ、細胞が受け持つ仕事が出来なくなってしまいます。

そのため、レシチンを不足のないように補給し、体内には常に取り換え用のレシチンを用意しておく必要があるのです。

 

2.コロナ禍で起きている体調の変化 

 ~体重増、脳機能の低下などが増加?~

 

●脂質代謝とレシチン

日本生活習慣病予防協会の調査(2021年10月実施)によると、調査に協力した医師の半数以上が、新型コロナウイルス感染拡大以降、脂肪肝の疑いを指摘することが増えたと回答していることが分かりました。

背景には、コロナ禍による運動不足、食生活の乱れ、糖質過多や飲酒量の増加などによる体重増加や肥満があるとされています。

肝臓は、レシチンやコレステロールを合成して、これをタンパク質と一緒にして、リポタンパクとして血液中に送り出しています。

肝臓でレシチンが作られるためには、リノール酸やコリンが必要ですが、この合成が上手く行かない時、肝細胞の中に脂肪が貯まってしまいます(脂肪肝)。

 

また、血中のコレステロールがスムーズに胆汁へ出て行くには、ビタミンCビタミンEの助けが必要ですが、レシチンが共存することで、コレステロール代謝を正常に進行させることが出来ます。

 

●脳機能とレシチン

筑波大学大学院の研究グループが高齢者を対象に自治体と実施した調査(2020年5・11月、2021年4月)では、コロナ禍で認知機能が低下した人の割合が増えていると指摘しています。

 

脳の働きの主役は、ニューロンと呼ばれる神経細胞で、様々な神経伝達物質を使ってお互いの連絡を取り合っています。

神経伝達物質の中で最も広い範囲に登場し、かつ最も早く解明されたのがアセチルコリンです。

そして、認知症の脳では、このアセチルコリンの量が減少していることが分かっています。

アセチルコリンは、体内でアセチルCoAとコリンから合成されます。

アセチルCoAは、ブドウ糖とパントテン酸(ビタミンB群の一種)から容易に作られますが、コリンは含硫アミノ酸のメチオニンから合成する経路があるものの、ビタミンB12葉酸が足りないと十分に作れません。

その上、コリンを経口的に投与した実験では、消化管の中で分解されてしまい、血中濃度が増えないことが分かりました。

 

一方、レシチンの形で摂取した場合には、吸収の過程でコリンが分離し、血液・脳関門にあるコリン輸送タンパクが積極的にこれを取り込み、利用されることが分かっています。

 

神経伝達物質の合成能を維持するためには、レシチンやタンパク質、ビタミン、ミネラルも不足しないように摂取することが大切です。

 

3.卵と大豆はレシチンの供給源

 

●卵の栄養的価値

卵黄レシチンは7割以上がホスファチジルコリンです。

また、卵はコリンを体内合成する際に必要な、含硫アミノ酸も豊富です。

この2つの点で、卵はコリンの供給源として大変優秀な食材です。

卵というと、コレステロールを気にする人が多いのですが、卵黄の脂質に占めるコレステロールの割合は5%に過ぎず、対してレシチンは30%あります。

コレステロールとレシチンは、体内での動きや役割上、大変密接な関係にあることからも、卵の栄養的価値は高いといえます。

 

●大豆レシチンは種類とバランス

大豆レシチンは、ホスファチジルコリン(約20%)、ホスファチジルイノシトール(約15%)、ホスファチジルエタノールアミン(約20%)、ホスファチジルセリン(数%)と、多種類のリン脂質がバランスよく含まれているのが特徴です。

●レシチンは不飽和脂肪酸の給源としても有用

レシチンの構造に組み込まれているリノール酸やリノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸は、毎日食品から摂取する必要があるものです。

大豆はリノール酸やリノレン酸、卵はアラキドン酸の供給源であることも、この二つの食品の有用性を高めています。

 

ただし、不飽和脂肪酸が酸化すると過酸化脂質になるため、抗酸化物質の摂取も心がけることが大切です。

レシチンの働きを最大限に活用するためには、ビタミンEセレンベータカロチンなどが役立ちます。

 

タンパク質は英語でプロテインですが、プロテインとはギリシャ語で『第一義的なもの(=最も大切なもの)』を意味する『プロテイオス』をもじった言葉です。
オランダのゲラルド=ムルダーは様々な食品を分析しているうちに卵白、牛乳のカゼイン、小麦粉のグルテン、骨のゼラチンなど、外見上は全く違って見えるのに物質の化学的組成がほぼ一致していることを発見し、その物質に『プロテイン』と名づけました。

身体の中で働くタンパク質
タンパク質の分類では構造や溶解性など様々な分類がありますが、タンパク質の機能による分類ですと、全身の代謝を担う酵素タンパク質、細胞膜に存在する膜タンパク質、物質の運搬を担う輸送タンパク質、髪の毛や皮膚、臓器など身体を構成する構造タンパク質、筋肉の収縮に関わる運動タンパク質、細胞と細胞とをくっつける結合タンパク質、体内外のシグナルを受け取り伝達する受容体タンパク質、身体を守る抗体タンパク質など様々に分かれます。

これを見るだけでも全身でタンパク質が働いていることがわかるのではないでしょうか。
例えば酵素タンパク質について考えてみます。
口から入った食物はまず、口の中で唾液に含まれる酵素によって消化が始まります。この唾液に含まれる消化酵素であるアミラーゼはタンパク質です。そのため、タンパク質に不足があると、消化酵素が作れなくなってしまいます。
また、食物の消化吸収には様々な酵素が関係しておりタンパク質が不足していると食べても吸収できない状況が起こってしまいます。
新型コロナウイルス感染症でも話題になっている抗体もタンパク質でできています。また、抗体を合成する酵素もタンパク質の為、タンパク質に不足があるとウイルスから身体を守ることはできません。
ウイルス対策にもタンパク質が重要な栄養素と言えます。

ビタミンとタンパク質
私たちは酵素反応によって生命を維持しています。
DNAに刻まれている酵素の作り方から必要な部分を読み取り、酵素を産生しています。
酵素の種類は約3000と言われており、そのほとんどの酵素反応に協同因子が必要です。
協同因子とは酵素が働く際に必要になる物質のことで、協同因子が必要な酵素は協同因子がないと働くことができません。
その協同因子のほとんどがビタミンやミネラルです。
協同因子は酵素と結合することにより酵素活性を示し、働くことができるようになります。そのため、たくさんのビタミン、ミネラルがあったとしても、タンパク質がなければ働くことができないのです。



お薬とタンパク質
身体の中で働くタンパク質の中に輸送タンパク質があります。
コレステロールを運ぶLDLやHDL、酸素を運ぶヘモグロビン、ビタミンAを運ぶレチノール結合タンパクなどがそれにあたります。
そして、血液検査にもあるアルブミンも輸送タンパク質の一つです。
肝機能や腎機能、栄養状態の指標としても使われています。
アルブミンは血液中で遊離脂肪酸、金属イオン、尿酸など多くの物質の運搬を担っています。
その一つがお薬です。
お薬は血液内でアルブミンに結合して移動します。血液中のアルブミンの量が少ないとアルブミンと結合できないお薬が増えてしまいます。
お薬はアルブミンと結合していると作用せず、結合しないで離れていると作用します。
そのため、アルブミンが少ないとお薬が強く作用してしまい、副作用が発現しやすくなる恐れがあります。


また、お薬は体内の様々な受容体や酵素に作用することで効果が現れます。その受容体や酵素はタンパク質でできていますのでタンパク質に不足があるとお薬をたくさん飲んでも効果が表れないということも考えられます。

お薬を安全に使用するためにも、タンパク質をしっかり摂ることが大切です。

 

 

 

 

 

厚生労働省が行なっている調査によると、普段感じている自覚症状の中で「肩こり」は女性では第1位、男性でも肩こりが腰痛に次いで第2位となっています。
肩こりの原因は「長時間の同じ姿勢」「姿勢の悪さ」「眼精疲労」「運動不足」「ストレス」「冷え」などがあげられます。
また、現代人の約8割が発症していると言われる「スマホ首」も肩こりの原因です。

 

■スマホ首とは?

約5~7㎏の重さがある人間の頭を支えている首や肩には、日常的に大きな負担がかかっています。
頭を前に15℃傾けると頸椎にかかる負荷は約12㎏、60℃傾けると負荷は約27㎏にもなると言われています。
頸椎は本来、ゆるやかにカーブを描いていますが、頭を前に傾ける時間が長いと頸椎のカーブが失われ「ストレートネック」になってしまいます。
ストレートネックは、首の前側の筋肉が緊張している状態であり、この姿勢を長時間続けると、筋肉がこり固まり、肩こりを誘発します。
頸椎の関節には多くの神経が通っているため、肩こりだけでなく、頭痛やめまい、手や腕のしびれ、自律神経失調症などの症状があらわれます。さらに、歯の嚙み合わせの悪化、誤嚥にもつながると言われています。
 

■あなたもスマホ首かも?チェックしてみましょう。

かかと・お尻・肩甲骨・後頭部の4点を壁にピタッとつけて立ってみましょう。
後頭部が壁に付かない、または後頭部はつけられても、姿勢を維持するのがつらい方は、スマホ首の可能性があります。

■なぜ肩がこるの?


肩は複数の筋肉で構築されています。
その中で、肩こりに最も関係が深い筋肉は「肩甲挙筋」と「僧帽筋」です。
肩甲拳筋は腕を持ち上げる等の役割を担い、僧帽筋は頭を一定角度に保ったり、肩甲骨を動かす際に使われています。
筋肉は、弛緩したときに、酸素や栄養素を含んだ血液を取り込み、緊張したときに老廃物を送り出す、という作用を繰り返して血液の循環を助けています。
しかし、姿勢の悪さや長時間の同じ姿勢、眼精疲労、ストレス、運動不足、冷えなどによって筋肉が緊張しこわばると筋肉の内側にある血管が圧迫されて、血流が悪くなってしまいます。
すると、筋肉に十分な酸素が供給されなくなり、その部分に乳酸(疲労物質)が蓄積します。
乳酸は筋肉を包む筋膜内の痛覚神経を刺激し、発痛物質(プロスタグランジン・ブラジキニン、ヒスタミン、セロトニンなど)を発生させ痛みを引き起こします。
この発痛物質に反応して、また筋肉がこわばり緊張し、肩こりの悪循環へ陥ります。


肩こりは乳酸の蓄積により生じます。
乳酸を分解する栄養素を摂取することで、肩こりの改善に繋がります。

 

■肩こりを改善する栄養素

ビタミンB1には、糖質をエネルギーに変える働きや乳酸を分解する働きがあります。
細胞がエネルギーとして利用する糖質はブドウ糖です。
ブドウ糖が酸化(燃焼)されてエネルギーを生み出す過程のなかで、ビタミンB1が不足すると、糖質の代謝異常がおこり、筋肉などに不完全燃焼の産物である乳酸が蓄積します。
 
ビタミンEには、毛細血管を拡張して血行を改善する働きがあります。
血行が良くなると筋肉にたまった乳酸が運び出され、筋肉に酸素と栄養を届けられるため、肩こりの改善につながります。
また、活性酸素を除去する「抗酸化ビタミン」であるということも、肩こりの改善に大きく関係しています。
活性酸素は血管にダメージを与えて血行不良を起こし、肩こりを悪化させる作用があります。
ビタミンEは抗酸化作用によって、肩こりの症状を改善します。
 
肩こりを改善するためには、下記の栄養素も関わっています。

・筋肉の強化に良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ミネラル(カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅など)
 
・筋肉の弛緩と収縮にマグネシウム、カルシウム
 
・痛みの緩和にビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノール、イチョウ緑葉フラボノイド
 
・血流改善にビタミンE、イチョウ緑葉フラボノイド


急激な痛みを伴う肩こりに「石灰沈着性腱板炎」があります。
石灰沈着性腱板炎は、肩の筋肉(腱板)内に、カルシウムが沈着し石灰化することで、炎症が生じ激痛が起こります。
石灰化は、カルシウムの摂り過ぎが原因で起こるわけではありません。
血中でカルシウムが不足すると、骨や歯に貯蔵されているカルシウムが溶け出し、血中のカルシウム濃度が逆に高くなり(カルシウムパラドックス)、あふれたカルシウムが組織に沈着し、石灰化してしまいます。
これを防ぐ為には、カルシウムを十分に摂取するとともに、カルシウムの代謝に関わるマグネシウム、ビタミンD、ビタミンKなどの摂取が必要となります。

ビタミンやミネラルは、体内ではタンパク質と結合して組織に運ばれ、はじめて働くことができます。
良質タンパクが不足していると、どんなに他の栄養素を摂取しても、それが働けない状況が確立されてしまいますので、まずは良質タンパクをしっかり摂りましょう。

 

参考図書

 

 

肩こりの改善には栄養に加え「肩甲骨まわし」もおすすめです。
まずは、頭を正常な位置に戻すことが大切です。
そのためには、肩こりと関係が深い僧帽筋(肩甲骨を動かす筋肉)などの緊張を緩めて、
肩甲骨を大きく動かせるようになることが必要です。

 


 監修:細野クリニック院長 細野 周作 先生