寝具で有名な西川株式会社では2018年から全国の18〜79歳の男女を対象に睡眠に対する意識・満足度を調査し、ホームページで公表しています。
日本人1万人の睡眠事情を調査した「西川睡眠白書 2021」では全体の49.9%、約半数の人が不眠症の疑いが高いとされています。
今や不眠症大国日本と言えるまでになっています。
出典【西川 睡眠白書2021~日本人の睡眠調査~】
不眠の原因とは
不眠とは、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害などの睡眠問題が1ヶ月以上続き、日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する状態のことを言います。
不眠の原因はストレス・こころやからだの病気・クスリの副作用などさまざまで、原因に応じた対処が必要です。
スマートフォンやタブレットを見る時間が増えた現在では、寝る直前まで画面からの光を受けることにより脳が覚醒してしまい睡眠障害を引き起こす原因の一つとされています。
また、上記の調査では、「肉体的疲労」より「精神的疲労」が睡眠の満足度を低下させるという結果も出ています。
不眠が続くと今日も眠れなかったらどうしようというような不眠に対する恐怖が生じ、緊張や睡眠状態へのこだわりのために、なおさら不眠が悪化するという悪循環に陥ってしまいます。
また、暑さ寒さや部屋の明るさなどの環境的要因や、悩みごとやイライラなどの精神的要因、また痛みやかゆみなどの身体的要因、さらにコーヒーなどのカフェインやアルコールといったさまざまな要因も睡眠に影響を与えます。
通常、体温が下がると眠くなりますが、暑い時期にエアコンの効いた部屋に長くいると体温の調節ができにくくなり、なかなか体温が下がらないことも不眠につながります。
寝酒は逆効果?!
アルコールを飲んで眠くなったり、眠りやすいと感じたことがあるのではないでしょうか?
しかし、その様な効果ははじめの数時間程度でその後は眠りが浅くなっていきます。
これはアルコールが代謝されてできるアセトアルデヒドの覚醒作用によって浅い眠りになってしまうためです。
また、アルコールの利尿作用によりトイレにおきる回数が増えたり、水分不足によりのどが乾いたりすることも睡眠の質を悪くする原因となります。
引用【地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪精神医療センターHP】
健康な方がお酒を飲んで寝るのは問題ないと思いますが、不眠で悩まれている方はアルコールが不眠を助長してしまうことを知ることが大切だと思います。
不眠の栄養対策
睡眠のリズムを正常に保つためには、まず身体の機能を正常に近づけていく必要があります。
そのためには、良質タンパク、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、コエンザイムQ10、ミネラルなど、代謝レベルの向上に必要な栄養素を不足なく摂取することが大切です。
入眠物質の1つとして知られるメラトニンは、アミノ酸のトリプトファンからセロトニンを経て合成されます。トリプトファンは、体内では合成できないため、トリプトファンを多く含む乳製品(牛乳・チーズなど)や大豆製品、肉、魚などの食品の摂取によって、安定したメラトニン合成を促すことにつながります。その他、合成には共同因子としてビタミンB群、マグネシウム、鉄、セレン、コエンザイムQ10などが必要です。
神経の働きを正常に保つためには、各種神経伝達物質が不足なく作られている条件を整えることが大切です。そのためには、必須アミノ酸(トリプトファン、チロシンなど)、ビタミンB群、ビタミンC、レシチン、ミネラル(カルシウム、マグネシウム)などの栄養素が大切です。
三石巌の書籍より
三石巌全集10『脳と栄養を考える』より不眠に関する部分を抜粋して記載します。少しでも参考にしていただけますと幸いです。
不眠について
R大学医学部の薬剤部長T夫人が、不眠になやまされていた。それで、その地の講演会の後で、私に指示をもとめた。そこで私は、ビタミンB12とコエンザイムQ10との大量投与をすすめた。彼女は恐らく、副作用を恐れるあまり、催眠薬に手を出さないでいたのであろう。私の思惑はみごとにあたった。T夫人の不眠の悩みは一挙に解決したのである。
睡眠誘発物質は、神経伝達物質の一つのセロトニンである。この神経ホルモンはニューロンのなかで、アミノ酸トリプトファンからつくられる。その合成代謝酵素の助酵素として、ビタミンB12、あるいはコエンザイムQが要求されたのであろう。そのどちらか一方が要求されたのではなく、両者が要求されたのかもしれないが、私にはその真相をあばく手段の持ち合わせはない。
じつは、セレンを投与して不眠をなおした例もある。不眠をかこつ人でなくてもセレンによって眠りが深くなった、と経験を語ってくれた人もいる。
私見によれば、酵素のふくむイオウがセレンに置換されたとき、酵素の活性が高まる。それがセロトニンを合成する代謝の酵素であったとすれば、この神経ホルモンが容易につくられることになる。もしこれが正しいとするなら、セレンによって不眠が解消することの説明がつくだろう。
不眠で病院を受診するとほとんどの場合、睡眠薬や抗不安薬を処方されると思います。
しかし、そういったお薬は深い睡眠を少なくし、浅い睡眠を長くするため、疲れが取れず、朝起きてもすっきりしないことが多いようです。
まずは、栄養状態を整え、生活リズムを見直してみることが良い眠りへの第一歩ではないでしょうか。
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参考
快眠ジャパンHP
https://www.kaimin-japan.jp/mechanism/index/
西川株式会社HP
https://www.nishikawa1566.com/company/laboratory/