- 塩狩峠 (新潮文庫)/三浦 綾子
- ¥660
- Amazon.co.jp
キリスト教の色が強いと批判されるが、その人は、宗教であろうがこの作品の主人公ほど真剣に生きることについて考えたことがあるのだろうか。キリスト教そのものを信仰せずとも、共感を得た言葉や姿勢だけを取り入れれば良い。主人公である信夫の強さを宗教のせいにして逃げているだけだ。信夫は人よりも学や才能があったわけではない。ただ誰よりも真摯であろうとした人間だったのだ。
悩み苦しみながらも、自分の道を見つけ、それを信じて突き進んでいくという主人公像に私は弱い。純粋に格好良いと思えるのである。なんと人間的で、潔い態度であろうか。もっと利口に、柔軟に生きたらどうかという声もあるだろう。その生き方とて誰も否定できない。ただこの作品の主人公はそうではなく、そのような主人公を支持する人間もまたいるというだけの話だ。
結末が自己陶酔的だと批判する人もいるかもしれない。だが、そう感じたならそれも正しいと思う。真摯であろうとするのは、自分自身にだ。共感できなかった人が、真摯であろうとする主人公であったなら、結末は変わっただろう。だがそれもまた、真摯な生き方なのだ。



