※この現実はフィクションです。 -5ページ目

※この現実はフィクションです。

                                                    物語の核心に触れる記述を含むことがありますので、閲覧は自己責任でお願いします。

超能力・霊能力解明マニュアル (ちくまプリマーブックス)/大槻 義彦
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 超能力・霊能力を科学的に検証した本。

 世の超能力・霊能力を小馬鹿にし、楽しむように作られている本であるようにしか思えない。超能力・霊能力は科学的な証明ができないから非科学的なのだ。もし本当に科学的な解法が存在するのだとしても、その理論は高尚すぎて専門家でないと理解できないだろう。

 たとえば、テレポーテーションを否定するのに、能力者の現在地から目的地までの距離を示し、この距離をこの時間で移動するには、これだけの速度が必要になるから、生身の人間には不可能だ、という結論を、具体的な数字で示す。計算などしなくても、常識的な手段での遂行が不可能であることは、誰でも一見すれば分かる。それで解明したなどと、能力者・読者を馬鹿にするにも程がある。私にはこの本が著者の壮大な皮肉なのか、もしくは見当外れな無知なのか決めかねている。

 私は超能力・霊能力は、少なくともいまはまだ、非科学的であるだけだと思っている。超能力・霊能力の世界にも法則はあるのでは、ということだ。哲学が科学の分野へと移行する余地は、まだ十分に残されているはずだ。


航路〈上〉 (ヴィレッジブックス)/コニー ウィリス
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航路〈下〉 (ヴィレッジブックス)/コニー ウィリス
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 臨死体験を科学的に解明することを目的としたサイエンスフィクション。これは著者の作品全般に言えることだが、話の展開が遅い。しかし登場人物たちがユニークで、その間で繰り広げられる人間ドラマが秀逸であるから、決して退屈しない。サイエンスフィクションが苦手な人に勧めるのに最適な一冊。

 とにかく、登場人物の個性が強く、エンターテイメント色が強い。しかし、サイエンスフィクションの要素が蔑ろにされることはない。

 この作品を読んでいると、吹き替えの海外映画を観ているような感覚になる。

 タイタニック号の中を探索したり、場面の転換が多いなど、映像的な描写が多いことから映画のイメージに連想されやすいのだろう。女性の語尾が「~だわ」など、文語調で描かれているのもひとつの要因だ。台詞は記号的で、それ自体にリアリティは感じられないのだが、この手法は使い古され受け入れられているので、違和感は感じない。また、タイタニック号という題材が、多くの人が知っている、映画「タイタニック」と合致しており、具体的な画をイメージしやすいのかもしれない。

 脳内に次々と映像が溢れてくる。まさしく、私のひとつの理想とする作品像、その見本のようなものである。

先輩とぼく (電撃文庫)/沖田 雅
¥578
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 全五巻と番外編一巻。ひたすら愉快で爽快なラブコメ作品。序盤から登場人物が多いが、書き分ける描写力もある。

 また、男性キャラクタが多いことも好印象。しょうもなさ、バカらしさを狙ったギャグが多い。だが安易に下ネタに走らず、十分に笑わせる力がある。主人公が理不尽に周辺人物によって被害にあうのもお約束。

 この作品の最も尊敬すべきところは、滑ることを恐れず全力でギャグをやっている姿勢。それも前述したように、下ネタはあまりなく、正面からラブコメというジャンルにぶつかっている。そして私はこのしょうもなく穏やかさやがあふれ出ているギャクが大好きだ。悪役らしい悪役も登場せず、騒がしく楽しい日常がどこまでも描写されていく。また、この作品には視点の転換があるが、それでキャラクタが混同されることもない。

 挿絵の柔らかいタッチも良い。巧さでいえば、この絵師よりも巧い絵師はいくらでもいるだろうが、作品の雰囲気にきちんと合致していて、目に煩くない。

 私は普段の生活で疲れたとき、一休憩したいとき、しばしこの作品を読み返す。世俗から離れ、ただただ楽しい世界に身を投じることができる。何も考えずに読めるライトノベルのひとつの理想型だ。

食堂かたつむり (ポプラ文庫)/小川 糸
¥588
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 恐ろしいまでに薄っぺらい。

 整合性は皆無。食堂の経営は成り立ちっこないし、屋根裏で毎日同じ時間、同じ数だけ鳴き続けるふくろうの正体に気づかないなどありえない。また、理解できない独りよがりの理論で美談にまとめようとしており、読者おいてきぼり。そんな実力で「命」などと大層なテーマに手を出したものだから、とても読めたものではない。ペットの豚を、病気で先のない母のために殺す。誰が何をどう喜ぶのか。殺すシーンは丁寧に描写されているが、食すシーンは僅か。まるで殺すことがメインのようだ。

 文章も拙く、突拍子もない表現の比喩を連発。なぜか主人公は失語症という設定で、そこに無駄に細かい情景描写が重なり、内容のない地の文がだらだらと続く。ただし、料理のシーンだけでは、描写が細かいことが幸いし、メニューが目に浮かぶようで楽しめた。

 美談っぽく人を殺せば感動を得られるだろうという、浅はかな著者の考えが透けて見える。本屋のプッシュでのみ売れた悪書。

眠れる森―シナリオ集〈2〉 (幻冬舎文庫)/野沢 尚
¥720
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 全十二話のテレビドラマ作品のシナリオ集。ミステリ作品。

 役者の台詞が多く、動きが少ない。作品全体の場面数も少ない。ドラマを観ると、役者とカメラが尻ぬぐいをしていた。前作、「青い鳥」のように、深く人間の心情を掘り下げたストーリーならば、許容できる。しかし今回は中途半端なミステリのせいで、ドラマも掘り下げきれていない。結果、テーマ性が弱い。

 ミステリとしても二流。催眠術で記憶操作、というファンタジー要素が絡んでくることもそうであるし、論理的に話を展開させてもいない。ほとんどがヒロインの記憶が蘇ったことで話が進む、といった具合。やはり著者には、人間ドラマを扱ったシナリオを描いて欲しい。

 著者はこの作品について「自分が背負った過去・罪は、死ぬまで背負っていかなければならない。現代では死が甘美なものとして蔓延しつつある。苦しいのは、いつだって生き残った側だ」と言っている。にも関わらず著者は自身の背負ったものの大きさに耐えきれず、死を選んだ。その時点でこのドラマの説得力は皆無だ。

 世の中を啓発する(=作品を発信する)ということは、世の中に責任をもつということである。尊敬している著者であるからこそ、苦しかったし、最期の教えは身に染みた。