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※この現実はフィクションです。

                                                    物語の核心に触れる記述を含むことがありますので、閲覧は自己責任でお願いします。

永遠の0 (講談社文庫)/百田 尚樹
¥920
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 若い世代に戦争を伝えようとした本。エンターテイメント的な要素があり、現代設定にすることで、堅苦しさを排除している。人物の心情が甘く、展開にご都合主義のようなものが見られるが、それはこの作品の本質ではなく、許容できる。だが、この作品を読了すれば、まず何より「格好良い」という感情が沸き上がってくる。それが極めて危険だ。

 特攻隊とは、戦争とは、格好良く、潔いものなのか。戦争を知らない世代は、戦争を肯定的に捉えてしまうのではないか。戦時中の人物にスポットを当て、その個人のドラマがいくつか描かれているのだが、視野が狭く偏っている。紹介される人物がみな、「漢」なのだ。そうではなく、絶望をもたらされた人物こそ描くべきではないのか。

 ドラマ「東京大空襲」を見習って欲しい。キャスティング面や極端な展開で若い人に寄りながらも、戦争の悲惨さをこれでもかというくらいに描いている。

 「戦争」というテーマが、現代ではエンターテイメントを描く上での、ただのひとつのジャンルでしかなくなっている。その危険性が顕著に露呈した、象徴的な一冊。

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)/米澤 穂信
¥609
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夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)/米澤 穂信
¥600
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秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)/米澤 穂信
¥609
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秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)/米澤 穂信
¥609
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 「春期限定いちごタルト事件」「夏期限定トロピカルパフェ事件」「秋期限定くりきんとん事件(上)(下)」と続く、ライトノベルタッチな日常ミステリ作品。この作品の魅力は、一癖も二癖もある登場人物たちだ。記号的に面白おかしく描かれており、非常に魅力的。特徴的な台詞回しで繰り広げられる、機知に富んだ登場人物同士の会話。そこに著者の高い文章力、描写力が相まって、独特の雰囲気が形成されている。

 推理が大好きな主人公の小鳩常悟朗と、復讐が大好きなヒロインの小左内ゆき。しかし二人は過去のトラウマから、推理と復讐を止め、小市民(何事にも消極的な一般人)であろうとする。この葛藤に大きなウエイトがおかれており、ドラマ性が高い。比喩・言い回しの多いしゃれた文体から、暗い雰囲気になることもない。また、「今度だけ」「今回は仕方ない」と、推理・復讐をやめきれないのもお決まりのパターンで、安心して読むことができる。

 ミステリとして完成度が低いという以外にはおおよそ欠点が見つからない。独特の世界観を形成し、物語の必然性を獲得しているが、隙間産業ではなく、むしろ青春物でライトノベル好きならば誰でも親しめる、一人勝ちの作品ではないだろうか。

 それと、表紙の片山若子さん、大好きです。

アッシュベイビー (集英社文庫)/金原 ひとみ
¥440
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 生きていることに価値を見いだせない若い女性の葛藤を描いた作品。  個人的には序盤から受け入れがたい内容だと分かったが、我慢してなんとか読破した。だが、気持ちの悪い読後感以外は残らなかった。
 セックス、バイオレンス、死、恋愛、変態。攻撃的なものをただ並べているだけではないか。ラストまで主人公は成長しないし、登場人物たちの言動も要所要所で脈略不明で、ただ呆気にとられるばかり。主人公像を捉えられない一番の原因は、やはり主人公が何を求めているのか、何に苛立っているのかが分からない、という点だろう。無目標で、生きることに積極的になれないことからくる虚無感か。描写力がなさすぎてそれが伝わらない。口を開けばセックスだの誰がむかつくだの、幼稚で安易で、読者はただひくだけ。その時点で嫌煙して理解をやめてしまう。
 他には、象徴的な癖を主人公にもたせるなど、行き場の失ったエネルギーの分かりやすい消化行為等が必要ではないのか。虚言癖や自傷癖など。主人公が途中、太ももをナイフで刺すというシーンがあったが、弱い。主人公はいまのいまでこのような状態に陥ったわけではない。
 この作品はただ気分を害されただけの失敗作でしかなかった。本当は描くつもりはなかった、などと著者は言っているが、既に世に出した作品に対し、言いわけでもするべきではない。

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)/桜庭 一樹
¥500
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 ライトノベルで虐待を扱うのは難しいのではないか、という懸念が見事に現実になった一冊。

 ヒロインの藻屑はストックホルム症候群にかかり、父親に虐待されているという事実を誰にも話すことができず、殺されてしまう。藻屑に序盤で一言「好きって絶望だよね」と呟かせ、彼女がストックホルム症候群であることを読者に匂わせてはいるが、実際に父親を庇うシーンもなく、ラストまで症候群にかかっていることが明確に分かる場面は存在しない。周りの登場人物が勝手に勘違いをし、思いこんでいるようにしか見えない。彼女の一言がなければ、単に父親の仕返しが恐くて言い出せないでいるようにしかとれない。また、平気で帰宅してみせたりもするが、父親の味方であろうとしていても、虐待を受けるのは辛いはずだ。

 なぜ藻屑の父親は虐待をするのか、主人公の兄はなぜ引きこもるようになったのか。不透明な背景が合わさって、人物の行動原理も一切見えてこない。

 キャラクタはライトノベルでそもそも現実味が薄いのに、最も重要な藻屑が不思議キャラ設定で、感情移入などとてもではないが無理。ラストに救いがないことからも、虐待の悲惨さを描きたかったのかもしれないが、キャラクタがこれでは読者としては一歩引いた目で見ることしかできず、現実に問題が回帰してこない。

 作者の独りよがり。背伸びして虐待などというテーマを扱おうとして、書ききった気になっている作品。現実に虐待を経験した人にとっては、一層不快。現実の虐待は、砂糖菓子のように甘くはない。

旅人―湯川秀樹自伝 (角川文庫)/湯川 秀樹
¥500
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 日本で初めてノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹の自伝。そこには多くの共感があり、失敗があった。

 中間子理論の提唱も、天才的な閃きがあったわけではない。一番大きかったのは、時代が進むにつれてより精密な実験結果が現れてきたからだ。湯川秀樹が気づかなくとも、いずれはフェルミあたりが気づいていただろう。

 発見までの軌跡を見ると、なるほど確かに中間子の発見はさほど難しいことではないように思える。閃きでも何でもなく、順接的に考えれば誰にでも分かりそうなことだ。もちろん、一般向けに書かれた本であるから、詳細は省略されているだろうし、さらには謙遜もあるだろう。

 学者だが、文章も巧い。一人の人間のドラマだと考えても、本書は十分に楽しむことができる。偉人、湯川秀樹も、私たちと変わらぬ悩みを抱えている。本書を読み返す度、自分も彼のように大成してやろうという気持ちになれる。