- 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)/桜庭 一樹
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ライトノベルで虐待を扱うのは難しいのではないか、という懸念が見事に現実になった一冊。
ヒロインの藻屑はストックホルム症候群にかかり、父親に虐待されているという事実を誰にも話すことができず、殺されてしまう。藻屑に序盤で一言「好きって絶望だよね」と呟かせ、彼女がストックホルム症候群であることを読者に匂わせてはいるが、実際に父親を庇うシーンもなく、ラストまで症候群にかかっていることが明確に分かる場面は存在しない。周りの登場人物が勝手に勘違いをし、思いこんでいるようにしか見えない。彼女の一言がなければ、単に父親の仕返しが恐くて言い出せないでいるようにしかとれない。また、平気で帰宅してみせたりもするが、父親の味方であろうとしていても、虐待を受けるのは辛いはずだ。
なぜ藻屑の父親は虐待をするのか、主人公の兄はなぜ引きこもるようになったのか。不透明な背景が合わさって、人物の行動原理も一切見えてこない。
キャラクタはライトノベルでそもそも現実味が薄いのに、最も重要な藻屑が不思議キャラ設定で、感情移入などとてもではないが無理。ラストに救いがないことからも、虐待の悲惨さを描きたかったのかもしれないが、キャラクタがこれでは読者としては一歩引いた目で見ることしかできず、現実に問題が回帰してこない。
作者の独りよがり。背伸びして虐待などというテーマを扱おうとして、書ききった気になっている作品。現実に虐待を経験した人にとっては、一層不快。現実の虐待は、砂糖菓子のように甘くはない。