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※この現実はフィクションです。

                                                    物語の核心に触れる記述を含むことがありますので、閲覧は自己責任でお願いします。

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)/谷川 流
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涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(64ページオールカラー特製小冊子付き) (角川スニーカー文庫)/谷川 流
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※※※※※ネタばれ注意※※※※※


続編ということで、前作の分裂も含めた評価。毎度のことながらネタばれ注意。

分裂含めそれ以前までは、ライトノベルに扮しきったライトノベルだった。それが今回、ちょと剥がれる。のいぢ絵のかわいらしい表紙の下から、谷川先生の本心が見え隠れする。キョンの独白が極めて多く、それが内容を薄くしている感が大いにする。キョンの語る内容も、少しふっきれて、一般向けをやや放棄気味。抽象的で思想的な独白が多い。佐々木、という少し小難しい話題を好むキャラクタがメインに据えられていることもあって、その傾向が顕著。

全三冊と非常に量が多いが、それぞれのキャラの出番が少なく、キャラ同士の絡みも薄い。今回、長門の見せ場はほとんど皆無。鶴屋さんも、エピローグで義務のように登場するのがなんとも蛇足。
また、朝比奈さん、古泉の背景が若干あらわになるが、やり切れてなさ、中途半端さが目立つ。特に古泉。古泉の属する機関は、実は古泉が立ち上げ、自ら最高位についているらしいことが分かり、そして彼のSOS団に対する想いも見え隠れする。普段ポーカーフェイスである古泉が、敵対する組織に対し、SOS団を守ろうと本気の部分を見せるのだが、いまいち煮え切らない。

「古泉の双眸には、俺がみたこともない攻撃的な光が纏われている。(後p176引用)」

態度、表情は本気なのかもしれない。しかし、口調は普段とあまり変わらない。小説は文字情報のみであるから、画的な表現で彼の怒りを表現しても、うまく読者には伝わらない。また、なぜ口調はこうも冷静なのか。明かされる古泉の水面下でSOS団を思う気持ちと行動。それがあり、SOS団のために普段のキャラを崩し、体裁もなく、敵を攻撃的に追い詰めるという構図が、最もシンプルで効果的ではないのか。もちろん、古泉なら、エピローグでは元のポーカーフェイスに戻っているはずだ。読者は古泉の知られざる一面を垣間見たとして、忘れられない重要なワンシーンとして記憶するのではないか。

新キャラ、佐々木の存在意義も薄い。もちろん、ストーリー的には必須であるが、そのストーリーのために登場させた感が強い。だがこれは、ハルヒシリーズが、設定や展開同士に必然性や意外性を関連性づけるのが得意であるから、余計にそんな感じがするのかもしれない。

四年もひっぱっておいて(谷川先生にその気は全くなかったであろうが)、「わたぁし」の正体が、ただの「ワタハシ(渡橋)」という名字の聞き間違いだった、というのも残念。また、最終的にアスミの正体がハルヒの分身である、というのは読める。ラストにアスミは退場するが、アスミも含め今作は特にキャラの描写が薄いので、感動も寂しさもない。散々キョンが新入部員のアスミに対し、「違和感がある」とか、「ハルヒも戸惑っているようだ」のような伏線があ張ってあったので、消えることも分かっていた。むしろ、これは不要な伏線であったように思う。

ハルヒシリーズのひとつの大きな魅力は、この伏線の張り方とその回収であると思う。時系列シャッフル形式や、時空移動ものというモチーフとうまく絡まって、非 常に効果的。意外な事実、納得のいく解釈が後になって得られたりする。しかし、今作にはそれがほとんどなかった。古泉の背景ぐらいであろうか。
明らかにさ れる設定、というのは多かったが、事前に伏線が張られていたわけではなく、予測や期待もできないのだから、いかにもとってつけたようで逆効果か、まったくもって必要のない蛇足であった。谷口と国木田は本筋とは関連のないいわば不戦地帯であったのに、谷口と周防の関係、国木田の鶴屋さんへの想いなど、明らかに不要。 恣意的すぎて興ざめでもある。
藤原と朝比奈さんの関係は逆効果。敵役の裏に隠された感動秘話、というのは常套な手段であるが、ゲストキャラの藤原にそもそも感情移入ができていない。伏線もなくいかにもとってつけ。明らかになるタイミングも悪い。αとβが合流して読者が(いい意味で)混乱しているときに、流れを分断された。しかも、動機を説明するという名目での説明台詞。言葉はやけに難しい語を乱用し、(キャラのセリフであるから、もちろん演出の一環なのだが)読者は完全に置いてけぼり。

朝倉の再登場もなんとも中途半端に感じた。だが、最後までキョンが朝倉の顔を見ようとしない、という演出は詩的でよかった。ならばそれをするとなると大々的に朝倉を描くわけにもいかず、結果的にはこれはこれでよかったのかもしれない。

文章の巧さは一向に衰えてはいなかった。以前までは、キョンのキャラづけだからこそ、回りくどい言い方が許され、長くてゴロが悪いしかし面白い比喩がまかり通るのだと思っていた。それに加え、谷川先生の膨大な知識。もちろん、それらもあるだろうが、言葉1と言葉2をつなげた結果、1と2の後ろにある本質同士をつなげる、という能力がすごいのだろうと感じた。

総評として、なにもかもが中途半端。なのに蛇足は多い。エピローグも長い。キョンが語りすぎて内容を圧迫している。文章の巧さとキャラクタは相変わらず魅力的(描写が薄いのは残念)だが、それはハルヒシリーズのそのもの魅力であって、今作の魅力ではない。迷走巻。このままいくと不味いかもしれない。あとがきから察するに、谷川先生はこの四間、周囲のプレッシャーに精神を病んでいたのかもしれない。私はてっきり編集と揉めていたものと。(それもあるだろうけど)なんとか持ち直して欲しい。
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 ひたすらサイエンスフィクションで、ひたすら青春。豊富な知識が存分に語られ、理解するのはなかなか難しく、それが作品のテンポを悪くしている点は否めない。SF的な解説が今作の魅力であり、雰囲気を作っているのは間違いないのだが、少々多い。しかし、間違いなく良作。SFというジャンルを用いて、青春をただひたすらにさわやかに、甘く、なによりドラマチックに語っている。青春物でなく、青春SFだからこそ、この作品は存分に生きている。読了後、温かい気持ちになれる。自分の目指していたものはここだったのだと、思い出させてくれた。(個人的な話ですが、最近作品の方向性とか、自分は今後どうすべきか、とか、色々混乱していたので)
マクロスF(フロンティア) 1 [DVD]/中村悠一,遠藤 綾,中島 愛
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 キャラクタの心情も展開も次々と転回する。緊張の連続で、観ていて飽きない。しかしそれが飽食気味なうえに、恣意的。これだけ壮絶な戦争で、死亡する主要キャラクタが一名だけというのもいかにも現実味がない。(世界観にはそもそも現実味を求める作品ではないが、展開や心情の面はまた別)超展開を超展開でカバーし続け、それを勢いで押し切った感が否めない。無駄にフラグを立てて思わせぶっておいて、結局何事もなかったかのように話が進む、というのも目立ち、肩すかしをくらうことも多い。フラグの乱立と回収、という分かりやすさもなければ、人間的なドラマティックさもなかった。回収しきれていないフラグも多い。(アルトの父とか一瞬出てきてすぐに納得して終わったし、ルカは無断でL.A.Iの機材を持ち出し政府に攻め立てられどうなったのか、ナナセとルカの決着もついていない、ブレラの正体は、など)
 また、歌の力が万能すぎる。これだからファンタジーは、などと思ってしまう。
 三角関係、というシチュエーションだが、特に衝突もなく、主人公が一体何がしたいのか、二人をどう思っているのかが、行動から一切分からず、ただイライラする。ヒロイン二人の間での衝突もない。
 テーマが最後に語られるのは良かったが、それならば全編を通してその答えに行きつくまでの葛藤をもっと顕著に描いてほしかった。(バジュラが個性を持たず、争い決別する人間の心理が理解できない。でもだからこそ、人間は他者を求めることができる)一応、描かれてはいるのだけど、他者との衝突はこの作品に限らず、どの作品でもその場面においても描かれるものだから、目立っていない。
 そして二転三転あったが、ランカは大罪。それをあのような晴れやかさで終わらせるのにも疑問が残る。
 設定はとてもうまくいっているのに、それをどうにもうまく生かし切れていない作品。観ていて次第に残念になっていった。三角関係や、歌を前面に押し出したストーリー、戦闘の映像美(機体の個性が薄いのは残念)、多くの謎や問題(結局消化不良だが)、そしてなにより魅力的な二人のヒロインはよかった。ランカとシェリル、どちらにも転びそうな状況で、緊張感があった。当の主人公が何を考えているのか、行動原理が分からない点は残念だったが、ランカとシェリルを主体に見て、どちらが幸せになれるか、という期待と緊張はあった。

 総評として、非常にもったいない作品。設定と、飽きさせない転回はよかったのに、どうにもやり切れてなさが目立った。劇場版に期待したい。
バカの壁 (新潮新書)/養老 孟司
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 世の中に多く出回っている理論書の中で、本当に優れているものは、帰納的に書かれているものだと私は考えている。(その評価は待たなければならないが)演繹的にならばいくらでも書きようがあるからだ。

 この「バカの壁」こそ、質の低い演繹的論法の典型であると感じた。

  (要約)《「分かる」ということについて。誰もが二〇〇一年九月十一日の同時多発テロの事実を知っている。だが、実際の感覚、恐怖は、居合わせた人以外、 分かりようがない。情報を知っている、ということは、現実を知っている、ということとは違う。だからこそ、人間は確かな情報が欲しくなる。情報を完全に把 握している存在、それが神であると考える。

 唯一絶対なものがいてこそ、正解が存在する。しかし、日本においては、八百万の神、神がたくさんいる。そこに絶対的真実は存在していないのだから、日本人は絶対的真実は何か、ということを追求する癖がない。》

 この言葉遊びのような本が、平気でベストセラーになっている。この場面において、著者は「神」を、唯一絶対的真実の象徴の言葉として登場させたはずであり、そのまま宗教学でいうところのではなかったはずだ。それがいつの間にかそのものにすり替わっている。

 現在日本は、八百万というより無宗教状態だ。著者の理屈でいけば、現代日本人にとって「神」(=真実。絶対的真実であろうが、八百万に象徴される解釈的真実であろうが)は存在しないのだから、真実そのものに価値を見いださない、という結論になるはずである。

 しかし著者は、都合良く絶対的真実の追求を行う日本人像だけを排除したいがために、過去日本人は八百万の神を崇拝していた、という事実をもちだしたのだ。これは演繹的論法の最も危険な側面である。

 また本書は、問題を明確化するためとはいえ、情報が必要以上に難しくされている。非常に時間と労力を無駄にした気分になる。

 とにかく、極論、飛躍、悪質な演繹法(というよりこじつけ)が酷すぎる。著者の思想によるものならば一歩引いた目で読むこともできるが、本書は中身も非常に薄く、救いようがない。

青い鳥―シナリオ集〈1〉 (幻冬舎文庫)/野沢 尚
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 「人間は同じ過ちを二度犯す」というテーマのもと描かれたテレビドラマ作品。全11話。本書はそのシナリオ集。著者の作品の登場人物はよく不幸になるが、絶望の中でも必ず小さな救いをもっている。この展開自体はスタンダードな構図なのかもしれないが、著者の与える不幸はとにかく理不尽であり、登場人物たちをこれでもかと痛みつける。読まされる側(観せられる側)も大きなエネルギーを必要とする。

 今作は、人物の言葉ひとつひとつの選び方も非常に洗練されている。受け答えが少しずれているように思えることがあるのだが、それが胸に残る。上辺だけのやりとりではなく、登場人物同士がきちんと互いの本質に向けて言葉を発しているからだろう。

 ラストには疑問も残った。義理とはいえ、死んでしまった妻と自分の娘と結ばれる、という結末はいかがなものか。しかし、主人公の立場で冷静に考えてみると、やはり人間とは弱いものであるから、頼れる唯一の相手が異性であれば、結ばれることを望むのは自然なことなのかもしれない。人間のどうしようもなさ、単純さまでもが表現されている。

 正直、読んでいて辛かった。しかし、引きつけられ、離れられなかった。人の感情を動かすことが感動なら、この本には大きな感動がある。私の一番の愛読書だ。