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※※※※※ネタばれ注意※※※※※
続編ということで、前作の分裂も含めた評価。毎度のことながらネタばれ注意。
分裂含めそれ以前までは、ライトノベルに扮しきったライトノベルだった。それが今回、ちょと剥がれる。のいぢ絵のかわいらしい表紙の下から、谷川先生の本心が見え隠れする。キョンの独白が極めて多く、それが内容を薄くしている感が大いにする。キョンの語る内容も、少しふっきれて、一般向けをやや放棄気味。抽象的で思想的な独白が多い。佐々木、という少し小難しい話題を好むキャラクタがメインに据えられていることもあって、その傾向が顕著。
全三冊と非常に量が多いが、それぞれのキャラの出番が少なく、キャラ同士の絡みも薄い。今回、長門の見せ場はほとんど皆無。鶴屋さんも、エピローグで義務のように登場するのがなんとも蛇足。
また、朝比奈さん、古泉の背景が若干あらわになるが、やり切れてなさ、中途半端さが目立つ。特に古泉。古泉の属する機関は、実は古泉が立ち上げ、自ら最高位についているらしいことが分かり、そして彼のSOS団に対する想いも見え隠れする。普段ポーカーフェイスである古泉が、敵対する組織に対し、SOS団を守ろうと本気の部分を見せるのだが、いまいち煮え切らない。
「古泉の双眸には、俺がみたこともない攻撃的な光が纏われている。(後p176引用)」
態度、表情は本気なのかもしれない。しかし、口調は普段とあまり変わらない。小説は文字情報のみであるから、画的な表現で彼の怒りを表現しても、うまく読者には伝わらない。また、なぜ口調はこうも冷静なのか。明かされる古泉の水面下でSOS団を思う気持ちと行動。それがあり、SOS団のために普段のキャラを崩し、体裁もなく、敵を攻撃的に追い詰めるという構図が、最もシンプルで効果的ではないのか。もちろん、古泉なら、エピローグでは元のポーカーフェイスに戻っているはずだ。読者は古泉の知られざる一面を垣間見たとして、忘れられない重要なワンシーンとして記憶するのではないか。
新キャラ、佐々木の存在意義も薄い。もちろん、ストーリー的には必須であるが、そのストーリーのために登場させた感が強い。だがこれは、ハルヒシリーズが、設定や展開同士に必然性や意外性を関連性づけるのが得意であるから、余計にそんな感じがするのかもしれない。
四年もひっぱっておいて(谷川先生にその気は全くなかったであろうが)、「わたぁし」の正体が、ただの「ワタハシ(渡橋)」という名字の聞き間違いだった、というのも残念。また、最終的にアスミの正体がハルヒの分身である、というのは読める。ラストにアスミは退場するが、アスミも含め今作は特にキャラの描写が薄いので、感動も寂しさもない。散々キョンが新入部員のアスミに対し、「違和感がある」とか、「ハルヒも戸惑っているようだ」のような伏線があ張ってあったので、消えることも分かっていた。むしろ、これは不要な伏線であったように思う。
ハルヒシリーズのひとつの大きな魅力は、この伏線の張り方とその回収であると思う。時系列シャッフル形式や、時空移動ものというモチーフとうまく絡まって、非 常に効果的。意外な事実、納得のいく解釈が後になって得られたりする。しかし、今作にはそれがほとんどなかった。古泉の背景ぐらいであろうか。
明らかにさ れる設定、というのは多かったが、事前に伏線が張られていたわけではなく、予測や期待もできないのだから、いかにもとってつけたようで逆効果か、まったくもって必要のない蛇足であった。谷口と国木田は本筋とは関連のないいわば不戦地帯であったのに、谷口と周防の関係、国木田の鶴屋さんへの想いなど、明らかに不要。 恣意的すぎて興ざめでもある。
藤原と朝比奈さんの関係は逆効果。敵役の裏に隠された感動秘話、というのは常套な手段であるが、ゲストキャラの藤原にそもそも感情移入ができていない。伏線もなくいかにもとってつけ。明らかになるタイミングも悪い。αとβが合流して読者が(いい意味で)混乱しているときに、流れを分断された。しかも、動機を説明するという名目での説明台詞。言葉はやけに難しい語を乱用し、(キャラのセリフであるから、もちろん演出の一環なのだが)読者は完全に置いてけぼり。
朝倉の再登場もなんとも中途半端に感じた。だが、最後までキョンが朝倉の顔を見ようとしない、という演出は詩的でよかった。ならばそれをするとなると大々的に朝倉を描くわけにもいかず、結果的にはこれはこれでよかったのかもしれない。
文章の巧さは一向に衰えてはいなかった。以前までは、キョンのキャラづけだからこそ、回りくどい言い方が許され、長くてゴロが悪いしかし面白い比喩がまかり通るのだと思っていた。それに加え、谷川先生の膨大な知識。もちろん、それらもあるだろうが、言葉1と言葉2をつなげた結果、1と2の後ろにある本質同士をつなげる、という能力がすごいのだろうと感じた。
総評として、なにもかもが中途半端。なのに蛇足は多い。エピローグも長い。キョンが語りすぎて内容を圧迫している。文章の巧さとキャラクタは相変わらず魅力的(描写が薄いのは残念)だが、それはハルヒシリーズのそのもの魅力であって、今作の魅力ではない。迷走巻。このままいくと不味いかもしれない。あとがきから察するに、谷川先生はこの四間、周囲のプレッシャーに精神を病んでいたのかもしれない。私はてっきり編集と揉めていたものと。(それもあるだろうけど)なんとか持ち直して欲しい。




