これも月島機械(株)の話です。

5月にすでに報道済みですが、月島・丸紅・サッポロビールの3社がタイでバイオエタノール製造を支援する事業をやろうとしているそうです。

原料に「さとうきびの搾りかす」を使うのだそうです。「搾り汁」ではなく「搾りかす」を使うということは、セルロースを分解してエタノールを製造しようとしているということです。

報道を見る限りは、基本的に地元でエタノールを消費し、一部を日本へ輸出する、という構想のようです。

タイもエネルギー供給に不安を抱えているという説があります。例えばここでなされているような議論があります。

http://www.theoildrum.com/story/2006/6/14/16336/6646#more

天然ガス開発を進めて一時は供給が豊富だったが、その後思うように生産が伸びない一方で消費は伸び続けている、というわけです。

とうとう、エネルギー収支について日本の大手メディアが報じました。私の知る限り始めてです。7月2日の日本経済新聞31ページです。

「エネルギー収支」と同じ概念を表す語はいくつかあります。

・EPR
・EROI
・EROEI
・net energy

全部同じ意味です。

定義を明確にしておきましょう。

定義: エネルギーを得るにはエネルギーを投入しなければならない。その投入するエネルギーに対して得られるエネルギーの比率、それをエネルギー収支と呼ぶ。

私自身は「EROEI」という語になじんでいますが、ここでは「エネルギー収支」という表現で統一しようと思います。

今年前半の報道の様子から、私は以下のように推定しています。

(1)経済産業省は「ハバートのピークは正しい理論で、安い石油は近い将来枯渇する」と認識している。

(2)世間をパニックに陥れないよう注意しつつ、予想される事態に秘かに備えるべくエネルギーを確保する策を、経済産業省は検討し始めている。

今朝の日経記事を読んで、この考えがますます強まりました。

唐突に書きましたので、びっくりされるかもしれませんが、正しいかどうかはともかく、私がどういう推定をしているか追々書いていきます。

世界最大の自動車メーカーGM(ジェネラル・モーターズ)は経営不振が続いています。

原因は色々あるのでしょうが、90年代に施行された燃費規制への対応をおろそかにしたことがここへ来て響いている、という説があります。

ガソリンが高騰しているわけですから、無理もありません。

それで、GMをはじめとするアメリカメーカーは、最近はエタノール対応FFV(flex fuel vehicle)に注力する、という方向性のように今のところ見えます。

トヨタやメルセデスのようにハイブリッド車開発に注力する道はどうも採らないようです。諦めてしまっているのでしょうか。あるいは、違う動力源の自動車を狙っているのかもしれません。

しかし、そうだとしても、実用化は先の話。とりあえずハイブリッド車が売れているトヨタや燃費の良いガソリン車でがんばっているホンダとの差は、なかなか縮まりそうにない、と思えます。

ところで一昨日、さすがアメリカ、大株主からある解決方法が提案されました。

「ルノーと日産の提携関係に参加して、3グループ間で合理化を進めて経営改善すべきだ」というのです。

提案した株主はトラシンダ(Tracinda Corporation)という会社です。この会社はカーク・カーコリアン氏(Kirk Kerkorian)というアメリカではとても有名な投資家が率いている会社です。確か88歳だと思います。

ここで私がはっと思い当たったのは、「日産はハイブリッド車でもFFVでも出遅れているな」ということです。

GMはFFVではまあなんとか。ハイブリッド車では出遅れてますね。

ルノーはどうなんでしょう。どなたかご存知の方がいらしたら、教えてください。

3社連合が成立するかどうかまだ確定していませんが、もし成立するとして、ガソリン高騰時代への対応という点から言うと、私の目には「敗者連合」のように映ります。

どうして、トヨタに支援を頼まなかったのか...?

岡山での動向について書いたときに軽く触れましたが、ここ3カ月で急激にバイオエタノール関連報道が増えています。今年の3月までと4月からとを比較したら明らかです。

私の思うに、口火を切ったニュースは4月9日のこれです。

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060409AT1D0800U08042006.html

これ以後、新聞紙上/ウェブサイト上で、どどっと関連ニュースが溢れています。(TVはあまり見ていませんので、よく分かりません --)

で、7週間ほど経過した5月末に経済産業省がこういう資料を公開しました。

http://www.meti.go.jp/press/20060531004/20060531004.html

うがちすぎかもしれませんが、私にはこれが一連の動きに見えています。仕組まれた動きと言い換えても構いません。もちろん、「お役所が仕組んでいる動き」という意味です。

今朝、「誰かが背後にいる」と書きましたが、こういう意味です。

もっとも、お役所が仕組んでいるとしても、それが自動的に悪いことだと私が思っているわけではありません。目的が妥当なら結構なことなのかもしれません。

印象的だったのは、4月にこの本が店頭に登場したことですね。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4532352053/249-5654629-7956362?v=glance&n=465392

これもタイミングが良過ぎます。

「ひょっとして、丸紅の柴田さんが影のプロデューサーなんだろうか?」と疑ってしまうほどです。それともお役所から頼まれて本を書かれたのでしょうか?
6月29日付 Yahoo! News: "Japan to swap gas cars for ethanol ones"
http://news.yahoo.com/s/ap/20060629/ap_on_bi_ge/japan_ethanol_cars_2

環境省の官僚(セキヤ・タケシ氏)が6月29日(木)に述べたそうです。

(1) E10導入を2010年に開始し、2030年までに全ての自動車がE10で走れるようにする。

(2) 本施策の目的は、地球温暖化対策である。

ニュースの出所はAPです。

5月31日に公開された経済産業省の「新・国家エネルギー戦略」と内容がかなり符合していると思います。省を横断しての国策として推進されているようです。

誰かが背後にいると私は思います。
大阪で国内最初の商用バイオエタノール製造工場が来年1月から稼動開始しようとしています。

大阪府が「大阪府エコタウン」というプロジェクトを遂行中です。リサイクルを推進しようとしています。事業地が3箇所に分散しているのですが、そのうちの一箇所、堺市にバイオエタノール・ジャパン・関西(株)という名前の会社が設立されています。

建築物、特に木造建築物が取り壊されると、建材として使用された木材が大量に廃棄物として出てきます。今のところ産業廃棄物として処分場に持ち込まれています。この会社の事業はその廃木材からエタノールを合成することです。

木材は植物繊維(セルロース)のかたまりです。

セルロースを分解して糖をつくり、その糖をさらに分解させてエタノールを合成できます。

セルロースを分解して糖をつくるために、この会社では硫酸を用います。その糖を分解するために微生物を2種類使います。アメリカのBCインターナショナル社と日本の月島機械(株)の技術を利用しているものです。

廃木材を原料とするなら、国内に大量に資源が存在します。元々は外国から輸入された木材がかなり混じっていると思いますが、そのことに目をつぶると、国産エネルギー源と言えます。

テーマ:てんさい


全般的に言うと日本は資源の乏しい国ですが、それでも砂糖作物を生産している地域が2箇所あります。

一つはすでに挙げた、沖縄県を中心とする南西諸島です。さとうきびを生産しています。

もう一箇所は北海道です。甜菜(てんさい)を生産しています。十勝平野でバイオエタノール製造・利用による地域振興策が練られています。

十勝圏振興機構(とかち財団)という財団法人があり、2年前から研究してきているようです。

環境省が2年前の平成16年にE3(エタノールを3%混合させたガソリン)の利用を都道府県に推進させるべく動き始めています。それと時期が一致していますね。

私は、これは京都議定書対策なのだろう、と推測しています。環境省はエネルギー需給について考えるのが担当の官庁ではありませんからね。それに、いくら国内生産を推進したところで、国内生産するバイオエタノールだけで国内のガソリン代替需要の大部分を満たすのは不可能でしょう。そうしますと、「エネルギー安保」を主目的とするのはなかなか難しいと思います。

出発点においては二酸化炭素排出量削減が動機だろうと思います。

毎朝日経を読むとき、私は商品欄から読みます。(一面は最後に読みます)

昨日6月27日(火)の日経朝刊では27ページから読み始めました。

その27ページに「マーケット潮流・底流 資源価格の高騰」という記事がありました。

去年8月にアメリカでエネルギー法が立法化され、2012年までにガソリン消費量の5%のエタノール使用が義務付けられることになったことが書いてあります。

この法律の影響は大きく、去年の秋冬からエタノールに注目が一気に集まりました。その影響でとうもろこし需要が伸びています。

これまでとうもろこしには主に二種類の利用目的がありました。一つ目は家畜の飼料で、もう一つは異性化糖と呼ばれる砂糖の代替品を製造する原料としてです。

これに自動車の燃料という第三の目的が加わりました。

しかし、土地が限られていて、増産余地はあまりありません。このままだと在庫僅少になりかねないと記事には書いてあります。

いよいよ、「人間の口に入れるか、自動車の給油口に入れるか」が選択を迫られるときが近づいているのかも知れません。

ここ3カ月ほど、ほんとバイオエタノールに関する報道が増えました。

6月25日(日)の日経31ページでは、岡山県に三井造船が建設中の設備が報道されています。

酵素を使ってセルロースを分解して糖をつくり、その糖を発酵させてエタノールを得るようです。私が調べた範囲で言うと、このセルロース分解酵素に関する技術は、フィンランドのVTTという会社から導入しているようです。

原料は檜の木質チップですか... 確かに集めるのが大変かもしれません。エネルギー消費を少なく抑えつつ集めるのは難しそうですね。