6月22日(木)の日本経済新聞朝刊6ページに、こういう記事が載っています。

(Quote)
新ディーゼル燃料の生産試験

 【リオデジャネイロ=共同】ブラジルの国営石油会社ペトロブラスは、石油に植物油を混ぜて精製する新たなディーゼルエンジン用の燃料を開発、南部アラウカリアの製油所で二十日、生産試験を実施した。

 本格生産が始まれば、現在一年間に輸入している軽油の一五%に当たる二億五千万リットルを節約できる見込み。試験に立ち会ったルラ大統領は「再生可能なエネルギー分野でブラジルは世界の先頭に立った」と自賛した。新開発の燃料は「Hバイオ」。大豆やトウゴマ、デンデヤシの油と石油を混ぜて精製する。十二月に最初の生産施設が稼動し、二〇〇九年までにさらに四施設が加わる計画だ。
(Unquote)

大豆、胡麻、椰子ですか。それにしてもデンデヤシってどんな椰子でしょうか?

「先に植物油を石油に混ぜ、その次に精製する」ことによって製造される物質のようですので、正直に解釈すると、バイオディーゼルとは異なる燃料のように思えます。

6月24日の日経朝刊7ページで、欧米メジャー石油会社がバイオマス燃料の導入に積極的になっている様が報道されています。

この記事中に「イノゲン」というカナダの会社が出てきますが、この会社名は誤りだと思います。"IOGEN CORPORATION" という会社です。発音は「アイオジェン」のはずです。

http://www.iogen.ca/

この会社はシェルが部分的に出資している会社で、セルロース(植物繊維)を酵素で分解して糖を製造し、その糖を更に分解してエタノールを製造する技術を持っています。

で、記事に書かれている通り、通常は捨てられているとうもろこしの茎からエタノールを製造しています。

セルロースからのエタノール製造は注目されています。日本での動きもおいおい書いていくつもりですが、ここではカーネギー・メロン大学発の情報をご紹介します。

http://www.carnegiemellontoday.com/article.asp?Aid=368

"Switchgrass" と呼ばれる、北米ではありふれた植物(雑草の類のようでもあり、牧草としても利用されている模様)を原料にしようという意見がアメリカにはあります。これもその一つです。

日本の自動車メーカーはエタノールを燃料として使える自動車の製造に長い間乗り気でありませんでした。

しかし、トヨタとホンダは方針転換しています。

トヨタの動向 ⇒ 来年から発売
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20060614AT1D1308T13062006.html

ホンダの動向 ⇒ 今年から発売
http://response.jp/issue/2005/0720/article72714_1.html

ブラジルではすでに100%エタノールでも走れる「フレックスフュエル車(FFV)」が走っており、新車販売数の過半はすでにFFVになっているそうです。日本メーカーもブラジルの国情に合わせないとブラジルでの販売が伸びないと言われていました。

アメリカでもE85の導入が進められています。

昨日6月22日(木)の日経産業新聞の24ページ(一番後ろのページ)には、バイオエタノール関連の記事がベタッと載っており、沖縄での動向について大きく紙面が割かれていました。

概略です。

(1) 6月21日沖縄県那覇市で、二階経済産業大臣、小平資源エネルギー庁長官、その他専門家、および稲峰沖縄県知事が集まり、「沖縄・新エネルギー・シンポジウム」を開催。

(2) 経済産業省には、沖縄を含めた全国十箇所に「新エネルギーパーク」を整備する計画がある。

(3) 環境省の委託事業として、昨年十月から「公用車による(エタノール燃料による)走行性能確認試験」を実施中。

(4) 過去十年間で沖縄県のさとうきび生産量は3分の1減少。税制優遇措置を導入して需要を喚起し、さとうきび農家を動機付ける必要性が指摘された。

昨年からエタノールに関する国策が一部始まっていたんですね。

ブラジルは現時点では世界最先端のバイオエタノール先進国だと私は思います。

この国ではさとうきびから製造しています。

第1次石油ショック後の1975年から製造を開始していると読みました。今年からブラジルは原油を量的には自給できるようになりましたが、長い間輸入に依存していて、第1次石油ショック当時は日本と同様、大きな問題になったようです。

当時の軍事政権はさとうきびに目をつけました。

さとうきびを農園で収穫すると、搾り機に突っ込んで搾り汁を取り出します。それを煮詰め不純物を取り除いて白砂糖を得ます。

ついでに言うと、搾り汁そのものを飲むこともできます。私は幼少期に東南アジアのある国に住んでいて、屋台で搾り汁を飲んだことがあります。おいしかったです。目の前で搾り機にさとうきびが吸い込まれていきましたが、その光景を今でも覚えています。

で、ブラジルの軍事政権は、さとうきびの搾り汁を砂糖の製造とエタノールの製造とに振り分けるようにさせました。

こうして、ブラジルのエタノール産業が勃興したのです。

植物性の原料から製造するエタノールをガソリンに代わる自動車燃料として使おうという動きが活発化してきました。

この動きは日本では今年の4月から急に表面化し、たった2カ月後の今 - 平成18年6月 - 時点ですでに国策化されつつあると思われます。

ある報道によると、今後5年間でエタノール混合ガソリンの日本中の乗用車に占める使用率を40%まで引き上げようと環境省が考えているそうです。

5年で4割ってすごいですよ。今はほとんどゼロですから。社会に大きな変化が来るのかもしれないということです。何が政府をそこまでさせるんでしょうか。何が起こっているのでしょう。

私はこの件を特に調べ考えていくことにしました。

このブログでは、バイオマス燃料(バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオブタノール他)に関する話題は何でも扱おうと考えています。よろしかったら、ここにたどり着いてくださった皆さんも、コメント・トラックバック等ご遠慮されずにどうぞ。