本論文は、環境汚染物質の蓄積と精子の異常に関する報告です。
Hum Reprod 2024; 39: 1628(イタリア)doi: 10.1093/humrep/deae109
要約:イタリア、カンパニア州の「火の国」に住む男性とそれ以外の地域に住む精液所見が正常な男性それぞれ80名(25〜40歳)を対象に良好精子の精子機能について検査しました。対照群と比べ「火の国」に住む男性では、精子頭部と尾部の構造上の欠陥、ピーナッツ凝集素増加、IZUMO1ヌルシグナル細胞増加、ステロイドホルモン異常、早期先体反応、運動精子低下、酸化ストレスマーカー増加、重金属・ダイオキシン・鉛の蓄積、低品質環状RNAの増加を示しました。
解説:重金属、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ビスフェノールA(BPA)、多環芳香族炭化水素、内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)などの環境汚染物質への曝露による生殖機能への悪影響が報告されています。イタリアのカンパニア州にある「火の国」地域では、環境汚染物質(重金属、有毒化学物質など)の過剰排出があり、男性の生殖機能に悪影響を及ぼしていることが報告されています。また、環状RNAは男性の生殖機能制御に重要な役割を果たしていることが判明していますが、環境汚染物質による環状RNAの変化についてはこれまで検討されていませんでした。本論文は、このような背景のもとに行われた検討であり、「火の国」地域での環境汚染物質により(精液所見が正常でも)精子に様々な異常をきたしていることを示しています。
下記の記事を参照してください。
2021.8.13「母体の環境汚染物質暴露でお子さんの精液所見低下」
2021.3.4「☆ダイオキシン暴露による子孫への影響」
2020.9.21「ビスフェノールAによる男系子孫への影響」
2019.1.12「環境ホルモンによる思春期への影響は?」
2014.12.20「殺虫剤が子孫の精子を悪くする?」
2014.2.19「母体のPFOA暴露による子どもに与える影響」
2014.1.8「☆マラチオンの影響は?」
2013.2.20「心臓の先天異常は父親の化学物質暴露と関連」