本論文は、ドナー卵子を用いた胚移植で、子宮腺筋症は妊娠率への悪影響はなく、流産率が増加することを示しています。
Fertil Steril 2024; 121: 480(イタリア)doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.11.034
Fertil Steril 2024; 121: 442(ベルギー)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.12.027
要約:2019〜2023年にドナー卵子による初回胚移植を行った方で、子宮腺筋症のある114名と腺筋症のない114名を対象に妊娠成績について前方視的検討を行いました。子宮腺筋症は、経腟超音波により、びまん性あるいは限局性、筋層内側/外側あるいはJunctional Zone(JZ)、子宮の伸展の程度(軽度、中程度、重度)に分類しました。ホルモン補充周期あるいは自然周期で単一胚盤胞移植を行いました。結果は下記の通り(有意差のみられた項目を赤字表示)。
子宮腺筋症 あり なし P値
着床率 57.0% 53.5% NS
臨床妊娠率 46.5% 49.1% NS
流産率 35.4% 18.1% 0.02
出産率 36.8% 43.9% NS
NS=有意差なし
多変量解析により、子宮腺筋症が流産リスクを有意に増加させることが明らかになりました。サブグループ解析では、流産リスクはJZの腺筋症で3.28倍(95%信頼区間1.38〜7.78)に有意に増加、子宮筋層外側のみで0.30倍(0.13~0.72)に有意に低下していました。また、流産リスクは、JZのびまん性腺筋症で2.29倍(1.22~4.30)、重度の腺筋症で2.20倍(1.19~4.04)に有意に増加しました。
解説:子宮腺筋症は画像診断に基づく分類があるものの、子宮内膜症や子宮筋腫が併発していることが多いため、病期を段階化し有病率を推定することが困難です。また、子宮腺筋症は不妊検査中に頻繁に見いだされるにもかかわらず、不妊症の原因であるかどうかは依然として不明です。3件のメタアナリシスでは、子宮腺筋症の胚移植では妊娠率低下と流産率増加が示されています。本論文は、このような背景の元に、子宮腺筋症による子宮因子への関与を明らかにするためドナー卵子を用いた研究を実施したものであり、妊娠率(着床率)への悪影響はないこと、流産率が増加することを示しています。
コメントでは、最も確実な診断方法であるMRIが実施されていないこと、ランダム化試験でないことを指摘しています。
下記の記事を参照してください。
2023.3.7「子宮腺筋症と子宮内膜受容能:システマティックレビュー」
2022.8.5「MRI診断による子宮腺筋症で出産率低下」
2018.11.12「子宮腺筋症のエコーによる診断」
2018.4.23「子宮腺筋症の治療について:手術療法」
2017.9.20「子宮腺筋症による体外受精の予後調査」
2014.11.10「子宮腺筋症核出術のメリットのある方は?」
2014.5.31「子宮腺筋症の影響は?」