MRI診断による子宮腺筋症で出産率低下 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、MRI診断による子宮腺筋症で出産率が低下することを示しています。

 

Hum Reprod 2022; 37: 1470(フランス)doi: 10.1093/humrep/deac083

要約:2015〜2018年子宮内膜症を有し採卵を行う18〜42歳(平均年齢32.5歳)の女性202名を対象に、採卵前にMRIにより子宮腺筋症の有無を確認し、妊娠成績を評価しました(観察研究)。なおMRI診断は、婦人科疾患に経験豊富な放射線科専門医2名により行いました。MRI診断による検討項目は、子宮筋層厚、Junctional zone(子宮内膜直下筋層、JZ)厚、JZ/筋層比、びまん性腺筋症、限局性腺筋症、表在性腺筋症、限局性子宮外側腺筋症(FAOM)、前壁FAOM、後壁FAOM、T2強調画像で白色スポット像、子宮筋腫合併の有無です。観察期間は、採卵周期4回まで、出産まで、あるいは採卵周期4回未満での治療終了までとしました。深部内膜症が90.1%、子宮腺筋症が71.8%に認められ、累積出産率は57.4%でした。多変量解析により、出産率低下に有意に寄与する因子は、高齢(36歳以上でオッズ比0.36)、低AMH(AMH 1.0以下でオッズ比0.17)、子宮腺筋症(オッズ比0.48)、T2強調画像で白色スポット像(オッズ比0.43)の4つが判明しました。

 

解説:子宮腺筋症の存在により妊娠率や出産率の低下が示唆されています。子宮腺筋症には様々な種類が存在しますが、どのようなタイプのものが妊娠成績低下に結びつくかについての検討はなされていませんでした。本論文は、MRIによる子宮腺筋症の診断およびT2強調画像で白色スポット像を有する場合に出産率が有意に低下することを示しています。本論文の著者は、実施施設が内膜症専門病院での検討であることによる選択バイアス(selection bias)の可能性に言及しています。また、子宮腺筋症の分類に世界的なコンセンサスが存在しないため、実際の臨床への応用ができる段階ではないとしています。

 

下記の記事を参照してください。

2018.4.23「子宮腺筋症の治療について:手術療法

2017.9.20「子宮腺筋症による体外受精の予後調査

2014.11.10「子宮腺筋症核出術のメリットのある方は?

2014.5.31「子宮腺筋症の影響は?