子宮腺筋症の影響は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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子宮腺筋症は、子宮内膜症の病変が子宮筋層に生じたものです。これまでに多くの論文が発表されましたが、子宮腺筋症の影響について様々な報告がなされるものの一定の結論が出ていませんでした、本論文は、メタアナリシスにより調査したところ、子宮腺筋症のある方は、体外受精での妊娠率が28%低下することを示しています。

Hum Reprod 2014; 29: 964(イタリア)
要約:1998~2013年に発表された論文の中から、子宮腺筋症と体外受精妊娠に関する論文をNewcastle-Ottawaスケールにより評価したところ、9論文、1865名(前方視的研究665名、後方視的研究1200名)が該当しました。妊娠率は子宮腺筋症の有無により40.5%と49.8%であり、子宮腺筋症によって0.72倍に低下しました。また、流産率は子宮腺筋症の有無により31.9%と14.1%であり、子宮腺筋症によって2.12倍に増加しました。

解説:子宮腺筋症は子宮筋層がどんどん厚くなり、生理痛がひどく、妊娠しにくい疾患です。子宮筋腫はひとつひとつが独立して存在するので、ひとつずつくり抜いて摘出する手術が行われますが、子宮腺筋症は筋肉が厚くなったものですから、くり抜いて摘出することができません。したがって、手術法はないと考えられていました。しかし、子宮腺筋症の術式がいくつか考案され、最近は手術が可能になりました。子宮腺筋症の組織から様々な物質が産生されることにより、妊娠を妨げるのではないかと考えられていましたが、どの程度妊娠率が低下するか、あるいは流産率が増加するかについて一致した見解は得られていませんでした。本論文は、子宮腺筋症のある方は、体外受精での妊娠率が28%低下し、流産率が2倍強増加することを初めて示したものです。

体外受精をする限り、子宮内膜症の有無で妊娠率は変わらないとされていましたが、本論文により若干妊娠率が低下することが判明しました。したがって、子宮内膜症の方はこれまでよりも積極的に、体外受精にチャレンジした方がよいと考えます。