子宮腺筋症による体外受精の予後調査 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、子宮腺筋症による体外受精の予後への影響をメタアナリシスにより検討したものです。

 

Fertil Steril 2017; 108: 483(カナダ)doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.06.025.

要約:2016年11月までに発表された、子宮腺筋症による体外受精の予後を検討した11論文(子宮腺筋症519名、対照群1535名)を対象にメタアナリシス解析を行いました。なお、子宮腺筋症の診断は、MRI及び経膣超音波検査で行いました。体外受精の予後については、無治療、手術、GnRHa製剤の3群で比較しました。子宮腺筋症の方は、そうでない方と比べ、体外受精の着床率、臨床妊娠率、出産率が有意に低くなっており、流産率は有意に高くなっていました。子宮腺筋症の手術およびGnRHa製剤による治療は、自然妊娠率の有意な増加を認めました。

 

解説:子宮腺筋症は、子宮筋層内に子宮内膜細胞が存在する疾患で、子宮筋層が厚くなります。子宮腺筋症の方では、早産や破水が多いことが知られていますが、妊孕性については賛否両論があります。一方、体外受精については、子宮腺筋症の方は妊娠率が低下する可能性が示唆されています。本論文は、子宮腺筋症による体外受精の予後への影響をメタアナリシスにより検討したものであり、体外受精の妊娠成績が有意に低下することを示しています。また、手術およびGnRHa製剤による治療は、自然妊娠率の有意な増加がありますので、行う価値は十分あるものと考えます。

 

下記の記事を参照してください。

2014.11.10「子宮腺筋症核出術のメリットのある方は?

2014.5.31「子宮腺筋症の影響は?