本論文は、女性の妊孕性温存術(卵子凍結、胚凍結、卵巣凍結)に関するメタアナリシスです。
Fertil Steril 2022; 117: 1266(英国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.03.004
要約:2020年11月までに発表された、癌患者さんにおける女性の妊孕性温存術(卵子凍結、胚凍結、卵巣凍結)に関する38論文のメタアナリシスを行いました。結果は下記の通り(有意差の見られた項目を赤字表示)。
卵子凍結 胚凍結 卵巣凍結
実施患者数 170名 75名 550名
実施周期数 178周期 102周期 550周期
臨床妊娠率 34.9% 49.0% 43.8%
出産率 25.8% 35.3% 32.3%
流産率 9.2% 16.9% > 7.5%
解説:女性の妊孕性温存術は、胚凍結→卵子凍結→卵巣凍結の順に進められました。、2019年に(最後に)卵巣凍結も試験的なものではないと太鼓判が押され現在に至っています。せっかく妊孕性温存術を行なっても、実際に卵子を利用するのは癌が完治してからですので、利用する方は少なくなります。本論文は、女性の妊孕性温存術(卵子凍結、胚凍結、卵巣凍結)に関するメタアナリシスを行ったものであり、臨床妊娠率と出産率は各群間に有意差を認めませんが、流産率は卵巣凍結で有意に低率であることを示しています。
小児癌については、下記の記事を参照してください。
2021.12.12「癌サバイバーとその姉妹の出産率は?」
2021.8.7「AYA世代の癌と不妊リスク」
2019.3.5「☆小児癌生存者の妊孕性」
2015.6.17「小児癌治療による卵巣のダメージ」
2013.6.22「小児癌の治療と妊孕性」
2013.3.21「抗がん剤の影響(卵巣毒性)」
2015.3.5「卵巣凍結•移植の成績」
2015.3.12「小児期の癌治療による子宮のダメージ」
成人癌については、下記の記事を参照してください。
2020.6.19「乳癌の方の卵巣刺激法」
2020.1.5「☆癌治療の妊孕性温存:ASRMの公式見解」
2018.11.25「癌の種類によって卵巣刺激の反応が異なる!?」
2018.8.17「抗癌化学療法や放射線療法の際の妊孕性温存:ASRMの見解」
2018.5.7「癌患者さんの妊孕性温存には卵子凍結か卵巣凍結か」
2017.10.14「採卵により乳癌の術前抗癌化学療法の遅延は起きるか?」
2016.10.5「癌の種類によって卵巣反応が異なる?」