夏の採卵が良い!? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、夏の採卵が良いことを示しています(移植の時期は問いません)。

 

Fertil Steril 2022; 117: 539(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.11.014

要約:2012〜2017年に採卵及び胚移植を実施した1937名3004周期を対象に、採卵時期と移植時期を季節毎に分類し、臨床妊娠率と出産率を後方視的に検討しました(春3,4,5月、夏6,7,8月、秋9,10,11月、冬12,1,2月)。採卵時期が冬季と比べ夏季で、臨床妊娠率が1.45倍、出産率が1.42倍有意に高くなっていました。同様に、平均気温を3群に分けた場合に、採卵時期が最も低い気温(−17.2〜6.7℃)と比べ最も高い気温(17.2〜33.3℃)で、臨床妊娠率が1.41倍、出産率が1.34倍有意に高くなっていました。しかし、移植時期の季節と気温には有意差を認めませんでした。

 

解説:妊孕性の季節性変動に関するこれまでの研究結果は様々であり、一致した見解は得られていませんでした。これまでは「生まれた月」「妊娠した月」で検討していましたが、採卵周期と移植周期が異なる現在主流のART治療(体外受精、顕微授精)では、どちらを重視したら良いのかについての論文はありませんでした。本論文は、採卵周期と移植周期に分けて季節性変動を検討した初めての報告であり、夏の採卵が良いことを示しています(移植の時期は問いません)。このような妊孕性の季節性変動が生じる要因は不明ですが、採卵時期に影響するのであれば、卵子の状態に関与し、着床には関与しないことになります。これだけでは結論が出せませんので、今後の検討が必要です。

 

妊娠の季節性変動については、下記の記事を参照してください。

2020.5.14「☆秋から冬が最も妊娠しやすい!?

2019.10.18「出生数の季節変動

2018.1.11「Q&A1699 季節変動は?

2015.9.19「宗教のルールによる出生数の増減

2013.7.22「☆季節により妊娠率•流産率は違うか?

2012.12.1「☆何月が妊娠しやすい?